記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/29 記事改定日: 2020/6/18
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
水頭症とは頭蓋内の脳脊髄液の循環・吸収に異常がみられる病気です。進行して脳への圧迫が強くなると、頭痛や嘔吐、尿失禁や物忘れなど様々な症状が現れます。この記事では、水頭症の治療法である「シャント手術」と「第3脳室底開窓術」について治療法の特徴を解説しています。
水頭症とは、頭蓋内に脳脊髄液が溜まりすぎる病気であり、脳が圧迫を受けたり頭蓋内の圧が高くなったりします。
脳脊髄液とは、頭の骨の中で脳が浮かんでいる無色透明の液体で、1日あたり約500ml造られています。脳は柔らかいため、脳脊髄液が衝撃から脳を守っています。
脳脊髄液は循環していますが、流れが遮断されたり吸収が悪くなったりすると、頭の中に過剰に溜まってしまい脳の働きが悪くなります。
水頭症の治療には、主にシャント手術などの手術が検討されます。
シャント手術は、シャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の部分へ脳脊髄液を流す治療法です。
シャント手術は、脳室内に溜まってしまう脳脊髄液を排出するために行う手術です。脳室に細い管を通し、その管をお腹の中、心臓に近い血管、背中ななどにつなげて脳脊髄液の排出を促します。
脳室に管を通す際には頭蓋骨の一部に穴を開ける必要がありますが、頭皮などを大きく切開する必要はなく、通常は1時間程度で終えることができます。また、脳室からつながる管を皮下に通す際には広い範囲に痛みが生じるため、麻酔は全身麻酔が必要となります。
V-Pシャントでは、頭蓋骨に小さな穴をあけて頭蓋骨と脳の間の膜を開き、脳室カテーテルを側脳室(左右に一つずつある側脳室のうち通常右側)に挿入します。
皮下にシャントシステムを通すため頸部と側腹部に小切開を加え、脳室の圧を調節するバルブを所定の位置に挿入した後、トンネル状の手術器具を使って耳の後ろ、首、胸の皮下に腹腔カテーテルを通します。
皮下に通したカテーテルと脳室カテーテルを接続し、脳室からの脳脊髄液の流出が良好なことを確認したうえで、腹膜を小切開して腹腔内に腹腔カテーテル端を挿入します。これで脳脊髄液は脳室からチューブを通って腹腔内へ流れ込み、腹腔内では腹膜から液が吸収され体の中の循環にもどります。
なおカテーテルそのものは体に悪影響を及ぼさず、半永久的に使うことができるとされています。ただし、正常に機能しているかどうか定期的なチェックが必要です。
シャント手術では、管が詰まることにより急に具合が悪くなったり、流量調節がうまくいかず脳と骨の間に血液がたまってしまったりするおそれがあります。
シャント手術のほか、第3脳室底開窓術という治療方法が選択されることがあります。
神経内視鏡を用いて第3脳室の床に小孔を開け、風船つきのカテーテルで拡大する手術です。シャントの管などの異物を摘出して頭の中に残さず、より生理的な髄液の循環状態にすることができます。ただし、神経内視鏡という新しい器具を用いるため、熟練した医師による執刀が望ましいといわれています。
第三脳室低開窓術は神経内視鏡を用いて行う手術であるため、身体への負担は少ない治療法です。しかし、全ての症例で適応となるわけではなく、第三脳室の後ろから第四脳室に腫瘍などができて脳脊髄液の流れが詰まることによる水頭症に有用が適応となります。
一般的には、小児の水頭症などには効果が低いとされており、さらに脊髄髄膜瘤を合併しているケースでは第三脳室底の組織が硬いことが多いためこの治療方法は適応にならないとされています。また、手術によって開けた脳室底の穴が塞がってしまった場合には再手術が必要となることも少なくありません。
水頭症の病態は少しずつ解明されつつあり、従来のシャント手術に加え、第3脳室開窓術など先進技術も絶えず開発されています。歩行障害や尿失禁といった症状がある場合は、なるべく早く検査を受けて正しい治療を行うことが大切です。