記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/26 記事改定日: 2018/6/13
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
悪性腫瘍とはいわゆる「がん」のことです。悪性腫瘍やがんのことを耳にする機会は多いと思いますが、どのような特徴があるのでしょうか。この記事では、悪性腫瘍の特徴や種類、治療法を紹介します。
悪性腫瘍とは、一般的には「がん」と呼ばれているものです。日本人の場合、2人に1人は生涯の中で何らかの悪性腫瘍を発症すると言われています。
悪性腫瘍の特徴として、以下の3つがあります。
良性腫瘍も自律的に増殖しますが、浸潤や転移、悪液質はみられません。また、悪性腫瘍に比べると増殖するスピードがゆっくりですし、一度摘出すれば再発の恐れもありません。
悪性腫瘍は、腫瘍が体のどの部位にできたかによって大きく3つに分類されます。
造血器とは、血液を作る臓器(骨髄やリンパ節)のことです。この造血器から発生する白血病や悪性リンパ腫などがあります。
上皮細胞とは、体の表面、もしくは胃や肺などの臓器を守る細胞層のことです。厳密にはこの上皮細胞由来の悪性腫瘍の事をがんと呼びます。上皮細胞にできるがんとして、肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、子宮がんなどがあります。内臓に発症する多くのがんが、この上皮部分に発生するものに含まれます。
なお、上皮細胞にできる悪性腫瘍のうち、がん細胞が上皮内にとどまっているものを、上皮内新生物(上皮内がん)と呼んでいます。上皮にどとまる悪性腫瘍なので基本的に転移はなく、一般的には手術でその部分を取り除けば治療は終わります。
上皮細胞以外の非上皮細胞に発生する悪性腫瘍があります。一般に「肉腫」と呼ばれるもので、主なものに骨肉腫、血管肉腫などがあります。
悪性腫瘍の元となるがん細胞は、私たちの体の中で頻繁に産生されています。しかし、正常な免疫力のある人では、免疫細胞ががん細胞を撃退し、体外から排出されるので問題となることはありません。
一方、何らかの原因でがん細胞が体内で増殖し、大きな細胞の塊となるといわゆる「がんを発症した」状態となります。症状はどの部位にがんが生じたかによって大きく異なります。
昼夜関係なく乾いた咳が出るようになり、進行すると血痰や呼吸苦を生じることもあります。また、周辺の神経に侵食すると物の飲み込みが悪くなったり、声がかすれるなどの症状が現れます。
がん自体には痛みがほとんどなく、「しこり」として体表から触れます。しこりは可動性がなく、硬いのが特徴で進行すると徐々に大きくなっていきます。乳頭付近にできるがんでは、乳頭から血が混じった分泌物が出ることがあります。
初期の頃は自覚症状がないことも多く、徐々に進行していくと黄疸や全身倦怠感、腹水などの症状が現れます。著しく肝機能が低下すると、出血しやすくなり、意識障害を生じることも少なくありません。
がんからジワジワとした出血を生じることが多く、胃痛や胸焼け、吐き気などの症状と共に貧血がみられます。また、黒く粘性が高いタール便が見られるのが特徴で、進行すると体重の急激な減少が生じることもあります。
物を食べたり飲んだりしたときに、のどからみぞおちにかけての部位に痛みや灼熱感が生じます。胸焼けや胃もたれと感じることもあり、進行すると食べ物や飲み物の通過性が悪くなって嘔吐を生じます。その結果、食欲低下や体重減少が引き起こされるようになります。
膵臓がんは進行するまで症状が現れないことが多く、発見時には他臓器への転移などが生じていることが少なくありません。胆管に近い部位にがんが生じると、胆管が詰まって胆管炎を生じ、発熱や黄疸を生じます。進行すると、膵臓の機能が低下して血糖をコントロールするインスリンの分泌が低下し、二次的な糖尿病を発症します。
典型的には便に血が混じる血便が生じます。がんによる痛みはほとんどなく、がんによって大腸が狭くなると便が細くなったり、便秘を生じることがあります。
初期症状はほとんどなく、進行すると不正出血やおりものの増加などが現れ、下腹部痛や腰痛を生じるようになります。がんが増大し、子宮が膀胱を圧迫すると頻尿や排尿障害を生じることもあります。
初期症状はほとんどありません。がんの増大によって前立腺が大きくなると、頻尿などの症状が現れ、更に進行すると血尿や尿閉が生じます。
悪性腫瘍の治療法について、現在さまざまな方法が研究されていますが、基本的には病院で以下のような治療を行います。
手術によって直接病巣を切除します。転移がなければ、外科手術で完全に切除することが期待できます。
化学療法では、抗がん剤と呼ばれる専用の薬を体内に注入して、体内のがん細胞を撃退します。全身に作用するので、転移したがん細胞にも効果があります。
がん細胞の「放射線に対する抵抗力が弱い」という特徴を利用した治療法です。患部に放射線を当てて、がん細胞のみを攻撃します。身体への負担が少なく、自宅から通いながら治療できるのが大きなメリットです。
悪性腫瘍は勝手に増殖するだけでなく、周囲にしみわたるように広がったり、血液やリンパ液の流れに乗って体のさまざまな部位に転移したりします。さらに、正常な細胞にいきわたるはずだった栄養まで奪ってしまうため、体がどんどん衰弱する悪液質が起こります。悪性腫瘍ができた場合、手術や化学療法、もしくは放射線治療で治していきます。
治癒率は治療を始めたタイミングに左右されることが多いので、疑わしいときは早めに検査を受けましょう。