ナルコレプシー発症の原因と考えられている「オレキシン」とは?

2018/1/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ナルコレプシーとは、レム睡眠が多発することで睡眠の質が著しく低下し、昼間に強い眠気に襲われるなどの症状が現れる病気です。発症すると、仕事や運転時など社会生活に大きく支障をきたす可能性があります。この記事ではナルコレプシーの原因とされているオレキシンについて解説しています。

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ナルコレプシーはどんな病気?

ナルコレプシーは、主に思春期前後の10代で発症します。また、30~40代やまれに50代で発症します。日本人に多く、およそ600人に1人の割合で発症するといわれています。
ナルコレプシーとは、レム睡眠を頻発したりレム睡眠に移行しやすい状態のこといいます。レム睡眠は、簡単に言えば夢を見るときの睡眠です。具体的には、日中に睡魔に襲われる、自覚なく一瞬で眠りに落ちる、就寝時に金縛りにあうなどの症状が現れます。
また、感情表現の著しいときに急に両膝の力が抜けたり、呂律がうまく回らない、まぶたが開けにくいなど、「情動脱力発作」という症状も現れます。この発作時間は、数秒から数分間で自然と回復していきます。発作の回数には、個人差があり眠気の強いときに現れやすいといわれています。

ナルコレプシーの原因と考えられている「オレキシン」とは?

オレキシンは、神経伝達物質の一種であり、睡眠の切り替えに大きな役割を果たしていることが分かってきました。睡眠薬にも用いられています。
オレキシンは、神経細胞を活発化させる働きがあり、覚醒方向に作用します。正常な状態では日中に増加して夜間は減少することで覚醒状態と睡眠状態の切り替えているのです。言わば、電気のスイッチのような役割を担っています。

オレキシンは、視床下部の神経細胞で作られています。オレキシンの伝達が障害され、覚醒と睡眠のバランスが崩れることがナルコレプシーの原因と考えられています。つまり、目の覚めていると時に眠りやすく、眠っている時に目の覚めやすい状態です。

オレキシンへの対処法はないの?

ナルコレプシーの対処として有効と考えられているのが、「オレキシン受容体拮抗薬」です。これは、オレキシンの受容体を阻害させて、睡眠に入りやすくする薬です。特に不眠症(入眠障害や中途覚醒)の改善に役立つとされ、ナルコレプシーの症状改善への効果を期待されています。
ただし副作用として、全身の疲労感、頭痛やめまい、眠気が現れる可能性があります。また、イトラコナゾールやクラリスロマイシン等の薬との併用は避けてください。現在服薬中の方は、オレキシン受容体拮抗薬を服用する際には、医師や薬剤師に相談しましょう。

おわりに:オレキシン受容体拮抗薬の有効活用を

日中の学校や仕事のときに支障が出る可能性があるのがナルコレプシーです。日常生活に影響をきたすため、早めの対応が必要になります。夜の睡眠改善が症状の緩和にもつながっていくため、薬をうまく活用しましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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