記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/30 記事改定日: 2019/12/3
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肥満を改善するためにダイエットに励んでいても、思うように結果が出ない人もいるのではないでしょうか。そのような場合には、漢方薬を使ってのダイエットを試してみても良いかもしれません。
この記事で漢方薬を使ったダイエットについて見ていきましょう。
あくまでも漢方医学での考え方になりますが、肥満の原因は以下の4タイプに分かれます。
ストレスが原因と考えられる肥満を、漢方医学では肝気鬱結(かんきうっけつ)と呼びます。
肝(東洋医学の用語であり、西洋医学で使う肝臓とは異なります)は、自律神経やホルモンバランスを整える作用があるとされており、ストレスによってその働きが悪くなると肥満につながりやすくなると考えられています。
毒素を溜め込んだことによる肥満のことを痰湿(たんしつ)といいます。
痰湿は不摂生な食生活で消化吸収能力が低下し、余計な水分が体に溜まりやすくなることが原因と考えられています。
漢方医学においては、肥満の原因のなかでとくに多いといわれています。
漢方医学では、血の巡りが悪くなることを血瘀(けつお)といいます。この血瘀も肥満の原因のひとつです。
血瘀による肥満は、食生活の乱れや血液量の低下によって血の巡りが悪くなり、脂肪が蓄積しやすい体質になることで起こると考えられています。
脾胃虚弱(ひいききょじゃく)、腎虚(じんきょ)も肥満になりやすくなる原因です。
この2つは胃腸が弱くなることや加齢、冷え性による新陳代謝の低下が原因引き起こされます。
上の項目で説明した4タイプの肥満には、以下のようにそれぞれに対応する漢方薬があります。
肝気鬱結には、胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症の改善に効果的とされる「大柴胡湯(ダイサイコトウ)」や、高血圧に伴う症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、便秘の改善に効果があるとされる「柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)」冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、不眠症の改善効果が期待される「加味逍遥散(カミショウヨウサン)」などが主に処方されます。
痰湿には、胃腸炎や下痢を改善する働きがある「柴苓湯(サイレイトウ)」や、のどの渇きと尿量の減少がある人の、嘔吐・じんましん・二日酔いのむかつき・むくみ解消に用いられることの多い「茵蔯五苓散(インチンゴレイサン)」が処方されます。
体力が低下している場合には、胃の不快感、胃炎、二日酔いの改善に効果があると言われる二陳湯(ニチントウ)や水様性の下痢、嘔吐、口の渇き、尿量減少の改善に使用される胃苓湯(イレイトウ)が用いられることもあります。
血行を良くする働きがある「桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)」や「桂枝茯苓丸加ヨクイニン(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)」が代表的な漢方薬です。体力が落ちていれば、「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」が処方されることもあります。
体に水分がたまってむくみやすい体質の人の肥満解消に用いられることの多い「防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)」や、しびれ、下肢や腰の痛み、むくみ、排尿障害の改善に使われる「牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)」が処方されます。
漢方医学に基づく漢方を使ったダイエットは、漢方薬を飲むことで上記で説明したような「太りやすい体質」の改善を目指すことが目的です。
劇的な減量ができるわけではなく、普段の食生活や運動習慣も同時に変えていく必要があります。
ただ、太りやすい原因を改善して痩せやすい体をつくることができれば、リバウンドしにくくなるため、何度もダイエットにチャレンジする必要はなくなることは魅力といえます。
なお、漢方薬を自己判断で服用することは避けてください。漢方薬はあくまで薬であり、体に合っていない漢方薬を服用すると、かえって体調を崩してしまう可能性があります。
ダイエット目的の使用であっても、必ず薬剤師や医師への相談を元に処方された漢方薬を服用してください。
ダイエットには様々な方法があり、上で述べたような漢方などの薬を使用するのもよいですが、基本的には食生活を改善する必要があります。
食生活の第一の注意点としては、適正カロリーを守ることです。一般的なデスクワークをしている人の場合、女性では2000kcal、男性では2400kcalほどが1日の適正カロリーとされています。
摂取カロリーが適正カロリーを上回ると当然肥満になりやすくなるので、成分表などを参考にカロリーを意識するようにしましょう。
また、食事の内容は和食と野菜中心であることが望ましいとされています。揚げ物など油分の多い物は控え、肉類を少なめに野菜を多く摂るよう心がけると摂取カロリーを抑えることができます。
さらに、食事はできるだけ3食バランスよく摂るようにし、極端に偏った食事は控えましょう。
今回は漢方薬を使ったダイエット法を紹介しましたが、漢方医学に基づいたダイエットが良く、西洋医学に基づいたダイエットが悪いというわけではありません。
両者を上手く組み合わせて、より効果的に減量や体質改善を行いましょう。