脳卒中の後遺症を防ぐための対処法と、リハビリに必要なこととは!?

2018/2/2 記事改定日: 2018/6/12
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脳卒中とは、脳の血管が破れたり、脳の血管が詰まってしまう病気です。発作が起こった場合に処置が遅れてしまうと命に危険が及び、助かったとしても深刻な後遺症が残ってしまう可能性があります。この記事では、脳卒中で倒れたときの対処法と後遺症のリハビリについて解説しています。

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脳卒中の後遺症には、どんなものがある?

脳卒中は脳のどの部位に病変が生じたかによって症状は大きく異なります。また、発症時に生じた症状は、早期からリハビリを開始することで改善することも可能ですが、後遺症として残ることも多く、完全に治すことはほぼ不可能と考えてよいでしょう。

後遺症として多いのは、手足の麻痺や感覚障害などです。これは、脳の運動や感覚を司る部位に病変が生じて、その部位にダメージが加わるために起こります。
また、脳神経が通る部位に病変を生じると、言葉が出なくなったり、物の飲み込みが悪くなったり、正常な呼吸ができなくなるなどの後遺症が残ることもあります。さらに、後頭部に広い病変が生じると視覚が失われることもあり、このほかにも認知症様症状や精神症状など脳卒中の後遺症は様々なものが生じる可能性があります。

後遺症が残る確率

後遺症が残る確率は、病変の部位や広がり、他の身体症状などによって大きく異なりますので一概に「何%である」ということは言えません。
しかし、より早期に適切な対応を行った場合の方が、発症後に放置したケースよりもはるかに後遺症が残る確率が低いのは確かです。また、早期に治療を開始すると同時にリハビリも進行することが重要であり、脳卒中が疑われる症状が現れた場合には早急に病院を受診するか救急車を要請するようにしましょう。

脳卒中の後遺症を回避するために、できるだけ早く救急車を呼ぼう!

脳卒中はどれだけ早く受診・治療が出来るかによって、回復に差が出ます。そのため素人が「大丈夫だろう」と安易に判断をせず、119(消防)へ通報し、救急車の手配をお願いしましょう。通報をする時には気が動転しているかもしれませんが、消防のオペレーターから確認された内容に対して、要点を的確に手短に回答することに努めてください。

状況によっては救急車がすぐに到着出来ないケースがあります。そうした場合には、自家用車やタクシーなどを使って患者を寝かした状態で病院へ搬送してください。もし本人に意識があったとしても、自力で運転して受診させることは絶対にやめさせましょう。

脳卒中の正しい対処法 ― 倒れた人を移動してもいいの?

数年前まで脳卒中で倒れた人への対処方法は「倒れた人の体を動かさずにそのままにしておく」でしたが、この方法は今ではすすめられていません。では脳卒中で倒れた人と遭遇した場合、そばにいる人はまず何をしたら良いのでしょうか。

それは、「救急車を手配し、隊員が患者の処置を行いやすい安全な場所へ移動させ、呼吸が行いやすいように体を横向きにすること」です。現在ではこの方法が推奨されています。

これら全ての行動を発見者が1人で行うのは大変です。速やかに近くにいる人に応援を求めましょう。

脳卒中で倒れた人を発見したら

脳卒中は、初期治療がカギを握る病気です。通常、発病してから3~6時間以内に初期治療を受けることが推奨されています。
速やかに受診することで回復が早くなることはもちろんですが、これは病状の悪化や後遺症などを引き起こさないようにするうえでも重要です。

意識がある場合

脳卒中で倒れた人に意識がある場合には、まずその場で横になるように促しましょう。もし移動が必要な場合には、自分で歩かせることは避け、周囲の人が毛布などで簡易タンカを作り移動させてください。これは患者の脳に負荷で障害などを引き起こすリスクを防ぐためです。

意識がない場合

もし患者に意識が無い場合には、患者を救急隊員が処置をしやすい場所へ移動させましょう。同時に呼吸がしやすいように横向きに倒してください。

このときに患者を無理に起こそうとして、さすったり、揺らしたりしてはいけません。頭を揺らしたり、前に倒したりすることは、脳への影響が特に大きいので注意が櫃異様です。また枕の使用もやめてください。

後遺症のリハビリ内容 ― 家族に必要なサポートとは

後遺症のリハビリでは、失われた機能の改善に向けた訓練を行います。
麻痺があって、手足が自由に動かせない場合には、歩行訓練や手指運動訓練などが行われ、言葉が出ない場合には言語訓練が行われます。また、飲み込みが悪い場合には言語訓練と共に誤嚥を予防するための筋肉を鍛える訓練などが行われます。

後遺症のリハビリは、患者さん一人一人の症状や重症度に合わせて行われますが、非常に根気のいる訓練です。このため、患者さんはリハビリを諦めてしまうことも多く、特に後遺症として高次機能障害がある場合には行き場のない焦りや怒りから家族に暴言や暴力を加えることも少なくありません。
家族は患者さんの状態をよく観察し、適度に励ましつつ追いつめられることがないように精神面でのサポートを行うようにしてください。

おわりに:後遺症が残る確率を下げるためにも、脳卒中に遭遇したときの対処法を忘れずに!

厚生労働省によると、脳卒中などの脳血管疾患の患者は全国で約118万人いるといわれています。いつ日常生活で脳卒中の人に出くわすか分かりません。
もし脳卒中の人に遭遇した場合には、「救急隊員が処置しやすい場所で、横向きに寝かす」ことを思い出してください。日頃からこのような状況やポイントを想定するだけでも、とっさの場合の行動が変わってくるでしょう。

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