睡眠障害の治療薬の種類とは!?薬が効かないときはどうすればいい?

2018/2/2 記事改定日: 2019/1/28
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

睡眠障害とは「睡眠に関する何らかの不具合」が起こっている状態のことです。眠れないということだけでなく、睡眠時に異常行動を起こしてしまう人や日中眠気に襲われ我慢ができないという症状も含まれます。この記事では睡眠障害で使われる薬について解説しています。

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睡眠障害について

睡眠に関して、何らかの問題を抱えた状態のことを睡眠障害といいます。

この言葉を聞くと、自然に眠れなくなってしまう「不眠症」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際にはもっと多くの症状があります。
たとえば、「睡眠のリズムが乱れて戻らない」「睡眠中に異常な行動がでてしまう」「昼間なのに眠くて仕方がない」なども、睡眠障害の一種です。

睡眠障害は寝ている間だけの問題ではなく、普段の生活にさまざまな支障をきたします。集中力や注意力の低下、だるさなどはもちろんのこと、長期間に及べば生活習慣病やうつ病にも結び付きます。

日本における睡眠障害治療の現状

睡眠障害の主な原因としては、精神的なもの、身体的なもの、または環境によるものなどが挙げられ、これらのいくつかの原因が、組み合わさっているケースも見られます。

治療の際は、症状や状況を整理して原因を探りながら、適切と考えられる薬を服用するのが一般的です。たとえば不眠の場合、睡眠薬を服用しながら経過を観察します。ほかにも、抗うつ薬や抗精神薬、抗不安薬などを用いることもあります。

ただしこれらの薬には、人によって副作用があるのはもちろんのこと、長期の服用・過剰な投与によって、薬がないと眠れない「依存状態」を招く可能性もあるため注意が必要です。

治療薬として広く用いられているベンゾジアゼピン系睡眠薬では、依存性だけでなく、朝まで作用が残って、頭や体がうまく働かなくなったりする可能性があることも問題になっています。

睡眠障害の治療で処方される睡眠薬の種類

睡眠薬には作用が持続する時間や作用のメカニズムによって様々な種類にわけられます。現在、一般的に用いられるのは大きく分けて2種類のものがあります。

強制的に眠気を起こす薬

脳の働きを鎮めて強制的な眠気を引き起こすものにマイスリー®などの非ベンゾジアゼピン系、ハルシオン®やレンドルミン®などのベンゾジアゼピン系があります。
これらは脳内の神経伝達物質の一種であるGABAの作用を抑制しますが、GABAは興奮を司る物質のため、働きが抑制されると催眠作用がもたらされるのです。

これら二種の違いは、結合する受容体にありますが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は筋肉を緊張させたり不安を感じる作用も低下させるため、日中のふらつきなどの副作用が生じることもあります。

また、これら二種類以外にもバルビツール酸とよばれるタイプのものもありますが、副作用が強いため今では使用されることはほとんどありません。

自然な眠気を起こす薬

脳内の睡眠に関与する物質を調整して自然な眠気を引き起こすタイプの睡眠薬があり、それぞれメラトニン受容体作動薬のロゼレム®、オレキシン受容体拮抗薬のベルソムラ®が販売されています。ベンゾジアゼピン系や非ベンゾジアゼピン系に比べて、自然な睡眠を誘発するため副作用が少ないのが特徴です。

市販薬の効果と使用上の注意点

上記の睡眠薬は医師からの処方が必要ですが、今では薬局やドラッグストアでこれらの睡眠薬とは作用のメカニズムが異なる睡眠薬が市販されています。これらの市販の睡眠薬は厳密には睡眠導入剤と呼ばれます。

市販の睡眠導入剤は、処方薬のように睡眠に関わる脳内物質に作用するものではなく、主な成分はヒスタミンです。ヒスタミンはアレルギーや風邪の薬に多く使用される成分ですが、副作用として強い眠気があります。市販の睡眠導入剤はこの副作用を利用して、睡眠時に眠気を誘発するものです。

このため、市販薬は翌朝の倦怠感や日中の眠気などの副作用が生じやすく、睡眠の質を根本から改善していないため、朝早く起きてしまうタイプの睡眠障害や途中で目が覚めてしまうタイプの睡眠障害には効果がないこともあります。

一時的な不眠に対して服用するのはよいですが、長く続く不眠の場合には、自己判断で市販薬の服用を継続せずに病院を受診して、自分の睡眠障害のタイプに合った睡眠薬を処方してもらうようにしましょう。

睡眠障害治療において漢方薬が注目される理由とは?

上記で示したように、治療の主流となっている睡眠薬などには即効性などが期待できる反面、副作用や依存が起こってしまうリスクがあります。また「薬で眠る」ということへ心理的なハードルを感じる人もいるでしょう。このようなことが気になる人は、漢方薬の使用や併用も、有用な選択肢のひとつといえます。

たとえば、漢方の考え方において、イライラや怒りを引き起こすのは「肝(肝実)」だとされています。これをしずめるのが、「抑肝散(ヨクカンサン)」という漢方薬です。この漢方薬を使用することで、睡眠の質の改善効果が期待できます。また、漢方薬は効果は緩やかですが副作用が出にくいといわれていることもメリットのひとつといえるでしょう。

薬が効かないときは・・・

医師から処方された睡眠薬が効かない場合でも、自己判断で薬を中止したり増量するのは危険です。睡眠薬の種類によっては、突然中止することで高熱や筋肉痛などの症状を引き起こすものや、増量によって依存性が高まることもあります。必ず医師に相談してから薬の変更や中止などを検討するようにしましょう。

また、睡眠直前の食事やストレス、就寝起床時間の乱れなどの好ましくない生活習慣が睡眠薬の効果を減弱させることもあります。睡眠薬を服用している場合は、薬の効果を過信せずに生活習慣を調えることも大切です。思い当たる生活習慣がある人は、改善していきましょう。

おわりに:自分に適した睡眠時間を把握し、漢方薬の使用も考慮しながら改善を目指そう

不眠・睡眠リズムの乱れや日中の眠気など、睡眠に関わるさまざまな問題を抱えることを、「睡眠障害」といいます。
主な治療法は、睡眠薬などの服用ですが、副作用も懸念されます。気になる方は、漢方薬の使用も検討してみてください。
また、薬が効かないからといって自己判断で薬を中止すると思わぬ悪影響が出ることがあります。医師と相談しながら生活習慣を見直し、自分にあう薬を見つけていきましょう。

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