耳下腺腫瘍の手術の方法とは?手術が難しいのはなぜ?

2018/2/9 記事改定日: 2019/3/15
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

耳下腺腫瘍は、耳の前から下にかけて分布する組織に腫瘍ができる病気です。耳下腺に腫瘍ができた場合、良性か悪性かを判断するために手術で腫瘍を切除します。この手術はどんなふうに行われるのでしょうか。

どんなときに耳下腺腫瘍が疑われる?

耳下腺とは、耳の前から下にかけて分布する腺組織のことで、唾液を分泌する機能を担っています。この耳下腺の組織が腫瘍化したものが耳下腺腫瘍で、良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)に分類されます。

良性と悪性の発症比率は5〜10:1で、良性の割合が相対的に高いと言えますが、多様な組織型があるため、最終的には病理検査の結果を見ないと良性か悪性かを判断するのが難しい病気です。

とくに注意すべきサインは、痛みや周囲の組織への癒着に伴う腫瘤探知、顔面神経麻痺などの「悪性3兆候」とも呼ばれる症状で、これらは悪性の耳下腺腫瘍の可能性を強く示唆する重要なものと捉えることができます。

耳下腺腫瘍にはどうしても手術が必要なの?

耳下腺腫瘍は非常に多彩な組織型(良性で10種類、悪性で23種類)を有することが知られています。組織型に応じて、再発しにくい良性腫瘍もあれば、再発を繰り返す悪性度の低い腫瘍、あるいは急激な増大や転移をきたす悪性度の高い腫瘍もあります。

比較的体の表面に近いので、腫瘍があることはわかりやすいのですが、どの組織型なのかは吸引細胞診により病理検査の結果を待つ必要があります。

そのため、周囲の組織やリンパ節の切除までも必要なタイプの耳下腺腫瘍であるか否かを確認するためにも手術が必要です。
また仮に悪性の場合、放射線治療や化学療法への感受性も乏しいタイプが多いことも、手術が不可欠とされる理由です。

手術ができない場合もある?

耳下腺は顔面神経など重要な神経の近くにあるため、腫瘍がそれらの神経を大きく巻き込んで生育している場合などは手術ができないこともあります。とくに良性腫瘍の場合は、顔面神経の温存を優先して手術が行われないことも多いです。

また、悪性腫瘍の場合には、放射線治療の一種である粒子線療法が有用なことが分かっており、顔面神経の温存のために手術ではなく粒子線療法が行われることがあります。

耳下腺腫瘍の手術の流れは?

耳下腺腫瘍の手術は全身麻酔下において行われ、手術時間は1時間半程度、入院期間は1週間程度必要になります。

耳たぶの下から後下方に向かって約5cm程度の切開を加え、耳下腺を露出します。このとき、耳たぶの動きを担う神経を切らないように慎重に切開します。その後、顔面神経を傷つけないようにしながら腫瘍の摘出を行います。

顔面神経の保護のため、神経モニタリング装置を使い、顔面神経の所在を確認しながら周囲の組織から腫瘍を剥離していきます。同時に、腫瘍の一部を迅速病理検査に出し、悪性か否かの確認を行います。

耳下腺腫瘍は周囲から5ミリ程度離して摘出されますが、悪性の病理診断結果が出た場合には周囲のリンパ節も合わせて摘出することもあります。

耳下腺腫瘍の手術が難しいとされる理由は?

耳下腺腫瘍の摘出手術は、高度な手技を必要とする難易度の高い手術とされ、手術の難易度は、腫瘍と顔面神経の位置関係に左右されます。

腫瘍と顔面神経の間に十分距離があれば、腫瘍だけを剥離して摘出することができるため、顔面神経へのダメージを防ぐことができます。
しかし、腫瘍と顔面神経が近い場合、顔面神経を保護するために腫瘍の摘出は非常に困難になり、取り残しのリスクも飛躍的に高まります。
顔面神経を巻き込んでいるようであれば、神経組織から腫瘍を剥離しながら摘出することになるので、神経を保護していたとしても術後数カ月は麻痺が残る可能性があります。

また、悪性の場合には、転移のリスクを低減するため、顔面神経も含めて耳下腺を摘出する必要があります。このように、顔面神経麻痺のリスクが高いことから、耳下腺腫瘍の摘出手術は難しいとされています。

おわりに:耳下腺腫瘍の手術は難易度が高いことも。不安なことががあれば主治医に相談を

耳下腺腫瘍の摘出手術は、腫瘍と顔面神経との間にどのくらいの間隔があるかどうかで難易度が変わります。間隔が長ければ顔面神経へのダメージが少なくなりますが、短い場合は麻痺が残ったり、神経を守るために腫瘍を取り切れない可能性があります。手術を受けるにあたり不安なことがあれば、主治医に打ち明けて、疑問や不安をできるだけ解消することが大切です。

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