胸腺腫とは? 胸腺がんとの関連性はあるの?

2018/2/6 記事改定日: 2019/7/31
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

胸腺腫とは、胸骨の裏側にある胸腺に腫瘍ができる病気です。一般に、腫瘍と聞くと癌なのだろうかと考えてしまいがちですが、胸腺腫は胸腺癌と関連しているのでしょうか。この記事で解説していきます。

胸腺腫とは?

胸腺は胸骨の裏側、心臓の上全部に広がる前縦隔という空間にある器官で、Tリンパ球と呼ばれる白血球を作り出す役割を担っています。大きさはこぶし大ほどで、幼児期から乳児期の期間にかけて活発に活動し、身体の免疫機能を維持する上で重要な役割を果たしています。しかし、成長するにつれて活性を喪失して徐々に縮小し、成人になると脂肪組織に代わって役割を終える臓器です。

胸腺腫は成人になって退化した胸腺の細胞が腫瘍化する病気ですが、細胞増殖の速度はゆっくりしており、胸腺を覆っている被膜を越えて広がっていくことはまれです。ただし胸腺腫が大きくなると、血管や心臓、肺などの周囲の血管臓器や胸腔に広がっていくことも珍しくありません。

胸腺癌とは関係があるの?

胸腺に腫瘍を形成する病気として、胸腺腫のほかにも胸腺癌もあります。かつて胸腺癌は胸腺腫の一部として認識されていた時代もありましたが、今日では別の種類の病気として明確に区別されています。

一般的に、胸腺癌の方が腫瘍細胞の増殖速度が速く、胸腺の被膜をこえて腫瘍が広がり、周囲のリンパ節や身体の別の部位に転移病巣を作るといった性質を持っています。一方、胸腺腫は周囲への病巣の拡大や転移を生じるといった経過を辿ることはまれです。その点で、胸腺癌とは性質が異なる特徴を持ってはいますが、胸腺の周囲には肺動脈や心臓、肺などの重要臓器が隣接しているので、臨床的には治療が必要な悪性腫瘍として扱われています。

胸腺腫によって現われる症状について

胸腺腫の症状には、腫瘍自体の成長が原因となる症状と、免疫異常などの合併症による症状の、大きく分けて2種類の症状が見られます。ただ成人の胸腺組織は退化して萎縮しているので、初期の段階では特徴的な症状が現れることはまれです。しかし胸腺腫が進行し、胸腺が成長すると、周囲の臓器を圧迫して胸痛やせきやたんが出やすくなるといった症状が出てくるようになります。

ところで、胸腺腫には免疫機能異常による重症筋無力症を合併することがしばしばみられます。合併すると、食事の時に咀嚼したり飲み込んだりするのが難しくなる、まぶたが下がる、字が書けないといった症状があらわれます。胸腺腫患者のうち、30〜50%程度は重症筋無力症を合併しているとされており、筋力低下症状は、この病気を疑う重要な指標になっているといえます。

胸腺腫の4つの代表的な治療法

胸腺腫の治療で最も多く行われているのは手術です。腫瘍が発生している胸腺とともに、周囲に広がっている腫瘍細胞も完全に摘出することを目的に行われます。通常は胸骨を切開して腫瘍を摘出しますが、腫瘍が小さい場合には、通常の開胸手術や胸腔鏡手術が行われることもあります。腫瘍が取りきれなかったときは、放射線療法も実施されることがあります。高エネルギーのX線を病変部に照射して、腫瘍細胞を死滅させるのが目的です。

一方、手術が難しい場合は、薬物療法として抗がん剤による化学療法が選択されることもあります。胸腺腫はステロイドホルモンに感受性があり、腫瘍細胞の増殖を抑制する作用を期待できます。この性質を利用して、ステロイドホルモンを投与するホルモン療法が有効な場合もあります。

おわりに:胸腺腫と胸腺癌は別の病気です

胸腺に腫瘍を形成する病気という点で、胸腺腫と胸腺癌は共通していますが、進行の速さや転移の有無の点で両者は異なる病気です。ただ、胸腺のまわりには心臓や肺といった重要な臓器があるため、胸腺腫は臨床的には治療が必要な悪性腫瘍として扱われています。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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