肛門周囲膿瘍の症状・原因・治療法について

2018/2/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肛門周囲膿瘍とは、肛門周辺に膿がたまってしまう病気です。この病気を発症すると、痛みや腫れ、発熱といった症状があらわれます。この記事では、肛門周囲膿瘍の原因と治療法について解説します。

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肛門周囲膿瘍はどんな病気?

肛門周囲膿瘍とは、肛門のまわりが赤く腫れて膿をもつ病気です。肛門の中から細菌が入り込み、肛門の周りに炎症が強く起きて膿んだ状態になります。飲酒、温水便座の使用、下痢や軟便、抵抗力が弱っている状態の際に発症しやすい病気です。
直腸と肛門の境にある歯状線には、深さが1mm程度の小さなくぼみ(肛門陰窩:こうもんいんか)があります。この小さなくぼみに下痢便が入り込むと、便の中の大腸菌が肛門腺という腺組織に感染して発症します。肛門周囲膿瘍になると、突然おしりにおできのような痛みを伴う腫れ物ができます。膿がたまった部分が腫れたり、表面が赤くなったりすることもあります。肛門の周り、あるいはその奥が腫れて痛みを伴うため、場合によっては発熱や排便障害などが起こります。39度(ひどい時は40度以上)に発熱することもあるため、注意が必要です。膿を出して炎症が治まっても、腫れ物の部分はしこりとして残ります。

肛門周囲膿瘍の主な症状と発症原因

体の抵抗力が弱っていると、肛門の歯状線にある肛門小窩(こうもんしょうか)についた傷に、便に混じっている細菌が入って炎症が起こります。その炎症が広がって、膿をもった状態となると肛門周囲膿瘍となります。肛門の奥から細菌が入って肛門の周囲が化膿してしまうことが、肛門周囲膿瘍の主な発症原因です。
肛門周囲膿瘍になると、肛門が急に激しく痛んで腫れてきます。主な症状は発熱、腫脹、疼痛、排膿です。肛門周囲膿瘍になると、38~39度の発熱や激しい痛み、腫れが出てきます。肛門部に数日間の痛みや違和感が生じ、炎症がひどくなると痛みが増したり、肛門周辺が赤く腫れて座ることができなくなったりすることもあります。ただし、炎症が生じている箇所が深い位置にある場合、発熱と肛門奥の違和感だけが症状としてあらわれます。

肛門周囲膿瘍はどうやって治療するの?

肛門周囲膿瘍における一般的な治療は、膿を出すためにその部分を切開することです。切開して膿を出すだけでも症状が和らぎますが、治療はこれで終わりではありません。肛門側から膿を排出することができても、直腸内まで通じているトンネル状の穴が残ってしまうことがあるためです。この穴は痔ろうを引き起こす可能性があるため、肛門周囲膿瘍の段階で痔を予防するための治療が行われます。
切開した後は、十分に排膿を行って膿を出し切り、抗生剤や鎮痛薬を服用します。切開した個所が治療途中で塞がらないよう、しばらく経過観察をします。一度切開して膿を出せば治ることもありますが、多くの場合細菌の侵入口はそのままとなっており、再発する可能性があります。自己判断で治ったと思わず、医師の指示通り根気強く治療することが大切です。

おわりに:肛門周囲膿瘍は膿を出せば症状が和らぐが、完治するまで根気よく治療することが大切

肛門周囲膿瘍は、患部にたまった膿を出せば痛みや熱が落ち着きます。しかし、細菌の侵入口がそのままになっていると再発する可能性があるため、症状が落ち着いた後も根気よく治療することが大切です。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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