記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ポリオウイルスは、感染しても症状が現れない場合が多いものですが、腸の中で増殖したウイルスが脊髄に入ってしまうと、手足に麻痺を残してしまうことがあります。これを予防するためにワクチンが用意されていますが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。また、副作用の心配はないのでしょうか。この記事で解説いたします。
ポリオは、ポリオウイルスが口から体内に入って増殖することで発症する病気です。ポリオウイルスが体に入っても症状が出ず、免疫を獲得する人がほとんどですが、中にはウイルスが脊髄に入ってしまい、手足の麻痺が一生残ってしまう人もいます。麻痺が残るポリオは麻痺性ポリオと呼ばれており、発症すると生涯にわたって後遺症を抱え続けることになります。
ポリオはかつて、脊髄性小児麻痺や急性灰白髄炎といった名称で呼ばれていました。いったんポリオの免疫を獲得すれば発症しないので、大人より乳幼児がかかりやすい病気と言えます。
ポリオのワクチンには2種類(経口生ポリオワクチンと不活化ポリオワクチン)があります。経口生ポリオワクチンは口からワクチンを飲む方法で、不活化ポリオワクチンは決められた間隔で合計4回、注射で接種するものです。
経口生ポリオワクチンには、ポリオウイルスの病原性を弱くしたウイルスが入っています。このワクチンを使うと、ポリオに感染した時と同じような状況になり、免疫を獲得できる仕組みになっています。一方、不活化ポリオワクチンは、ポリオウイルスを殺して、免疫獲得に必要な成分のみを取り出して病原性をなくしたものです。
経口生ポリオワクチンを使うと、まれにポリオを発症してしまうリスクがあるため、現在では不活化ワクチンが使用されています。
ポリオは人から人へ感染が広がる病気です。かつて日本でも大流行してたくさんの人が発症し、その時の後遺症で手足の麻痺を抱えながら生活している人が多くいます。しかし、ポリオワクチンができたおかげで流行がおさまり、現在日本で新たな患者は出ていません。しかし世界中を見渡すと、パキスタンやアフガニスタンなどの南西アジアや、ナイジェリアなどのアフリカ諸国ではポリオを発症する人がいます。したがって、このような国を訪れた際に気付かないうちに感染し、ウイルスを持ったまま日本に帰国すると、日本国内でもポリオの感染者が見つかる可能性はまだ残っています。このような事態に備えて、現在もポリオの免疫を獲得できるワクチンを接種しておくことは大切です。
ポリオワクチンを接種したら、ポリオを発症してしまうのではないかと心配するかもしれませんが、不活化ワクチンを使用すればポリオを発症することはありません。
ただ、不活化ポリオワクチンには、他の不活化ワクチンと同様の副作用が出ることがあります。具体的には、発熱や接種部位の腫れ、しこりなどで、接種後に37.5度以上の発熱をする人が15%程度、接種部位の腫れとしこりは40%程度の人にみられると言われています。ただ、こうした副作用は接種後に一時的にあらわれるもので、他の不活化ワクチンの接種後にもあらわれるものです。時間が経てばこれらの副作用は消えるので、副作用があるといっても必要以上に心配しなくてよいでしょう。
ワクチンの普及により、日本国内でポリオに感染する人はいなくなりました。しかし、海外ではまだポリオが流行している地域があるので、旅行中に感染してしまう可能性はまだ残っています。このため、現在においてもポリオワクチンを接種し、予防に努めることは大切です。