飲食物や摂食障害の嘔吐が原因で起こる「酸蝕症」とは?

2018/2/1

記事監修医師

日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科

川俣 綾 先生

酸蝕症とは、口の中が酸性になることで歯が溶けてしまう病気です。強い酸性の性質を持った食品や、摂食障害などで頻繁に嘔吐することが原因で起こります。この記事では、酸蝕症の原因と予防法を解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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酸蝕症(さんしょくしょう)について

歯を失う原因となる病気として虫歯や歯周病が挙げられますが、近年問題になっている病気に酸蝕症(さんしょくしょう)があります。酸蝕症は、ワインや炭酸飲料などの酸性度が高い食べ物が原因で歯が溶けてしまうという病気です。歯は酸に弱いという性質を持っていますが、通常は唾液が酸を中和するために歯が溶けるということありません。
ところが、酸性度の高い食べ物ばかりをとっていると、唾液が中和しきれなくなり、歯が溶けてしまうことがあります。これが酸蝕症です。

酸蝕症の原因となる飲食物

酸蝕症の原因となる食べ物は、酸性度の高い食べ物です。酸性度はpH(ペーハー)という指標で表されます。pH値が7.0が中性であり、pH値が低いほど酸性度が高くなります。

酸性度の高い食べ物の例としては、炭酸飲料や果汁飲料が挙げられるでしょう。
炭酸飲料のpH値は、2.2~2.9と非常に低く、酸性度が高いです。また、果実飲料もpH値が4.0と酸性の性質を持っています。炭酸飲料や果実飲料を習慣的によく飲んでいる人は、酸蝕症のリスクが高い状態にあるといえますので、注意が必要です。

また、グレープフルーツやミカンなどの柑橘系の果物は酸性度が高く、酢を使ったドレッシングも酸性度が高くなります。健康のために果物や野菜を摂ることは重要ですが、酸蝕症にならないように注意しましょう。

摂食障害が酸蝕症の原因になることがあるのは何故?

酸性度の高い食べ物以外にも、摂食障害が酸蝕症の原因になることがあります。
摂食障害とは、過度な体重へのこだわりのために、適切な食事がとれなくなってしまう心的疾患です。摂食障害を持つ人は、体重増加を避けるため食後に嘔吐することがあります。嘔吐すると胃酸が口の中に流れ込みます。

胃酸はpH値が1.0~2.0と酸性度が非常に高いです。摂食障害により、嘔吐を繰り返すことで、胃酸によって酸蝕症が引き起こされることがあります。

酸蝕症の予防法とは?

酸蝕症の予防するためには、酸性度の高い食べ物とうまく付き合う必要があります。酸性度の高い食べ物を長い間口の中に含むことは避けてください。また、寝る前に酸性度の高い食べ物を食べるのはやめましょう。寝ている間は唾液分泌が少ないため、中和作用が働きにくいです。

酸性度の高い食べ物を食べた後には必ずうがいを行い、摂食障害等が原因で嘔吐してしまった場合には、口の中の酸性度を下げるために、水や牛乳でうがいをし、ガムを噛んで唾液の分泌を促しましょう。なお、酸性度の高い食べ物を食べた後は、1時間ほど歯磨きを避けてください。歯のエナメル質が柔らかくなっており、歯を磨くことで歯が削れてしまいます。

おわりに:酸蝕症対策には、酸性食品の回避とまめなケアが大切

近年、酸蝕症は増加傾向にあります。それは、炭酸飲料や果汁飲料等の酸性度の高い食べ物が増えたことや摂食障害になってしまう方が増えたからです。酸蝕症対策には口の中の酸性度を上げないことが大切です。うがいやガムでまめにケアすることで酸蝕症を防ぎましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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