記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/5 記事改定日: 2018/6/8
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
うつ病は、気分が落ち込んだり、どんなことにも意欲が出なかったりする心の病気です。精神的な症状と肉体的な症状が起こり、それぞれが大きく関係しあっています。この記事では、うつ病の原因や症状、治療法についてわかりやすくまとめています。
うつ病とは、気分障害の一つで、気分がひどく落ち込み憂うつになったり、やる気が出ないなどの精神的な症状が起きます。また、精神的な症状だけではなく、不眠になったり、疲労が抜けなかったり、倦怠感がともなったりと身体的な症状が起きることもあります。
日常生活の中で、ストレスによって憂うつになったり、気分が落ち込んだりということは誰にでも起きます。
通常であれば、そのような感情の変化は一時的なものであり、ストレスの原因となるものが解消されたり、時間が経過したりすれば自然ともとに戻るでしょう。
でも、うつ病の場合は、ストレスの原因がなくなったり、一定の時間が経過したとしても、気分がもとに戻りません。結果、職場や学校に行けなくなったりしてしまい、日常生活に支障が出てきます。
うつ病が発症すると、精神的な症状と身体的な症状が現れます。
精神的な症状としては、気分が憂うつになったり、不安や焦りを感じたり、自分が無価値な存在であると感じてしまったりします。また、意欲や集中力がなくなり、物事に対する興味が薄れてしまったりします。
身体的な症状としては、睡眠障害が起こり、適切に眠ることができなくなってしまったり、倦怠感や疲労感を感じるようになり、食欲も低下します。
精神症状と身体症状は互いにリンクしていて、例えば睡眠不足が続くことでさらに気分が落ち込んでしまったりすることもあります。
うつ病はその人の考え方や、環境の変化などの生活の中で感じるストレスが複雑に絡み合って発症します。人生における大きな転機となるようなこと、例えば、配偶者との死別や離婚などが大きなストレスになりうつ病が発症してしまうことがあります。
また、死別や離婚などの悲しい出来事だけでなく、昇進や結婚、進学などのポジティブなできごとであっても、うつ病の原因となり得るのです。
うつ病が発症する具体的なメカニズムはまだ解明されていませんが、脳の働きと関係していると考えられています。脳は神経細胞同士が情報を伝達することによって体や心をコントロールしていますが、うつ病は、この神経伝達物質が欠乏することで発病するではないかと考えられています。脳の研究は現在も進められており、うつ病のメカニズムの解明が期待されています。
うつ病は、休養と薬物治療、精神療法で治療が進められます。
ただし、一番重要とされているのは、休養です。うつ病の治療は、体と心をしっかり休ませることから始められます。休養時には、ストレスの原因となっていることをなるべく軽減できるように、環境面の調整が必要です。
薬物治療で一般的に用いられるのが抗うつ薬です。抗うつ薬は脳の神経伝達物質の減少を防ぎます。ただし、うつ病の薬は飲んですぐに効果が出るものではなく、長期間の服用が必要になることもあります。服薬期間中に自己判断で薬を飲むのを中止したり、効果が出ないからと量を増やすと、症状が急激に悪化したり副作用が出る可能性があるので絶対にしないでください。
うつ病は脳内の神経伝達物質が減少することが発症原因の一つであると考えられています。このため、薬で神経伝達物質の減少を防ぐことも重要とされています。
しかし、うつ病は他者からの理解を得られずに「怠け者」、「仮病」などというレッテルを貼られてしまうこともあり、患者は様々なストレスを感じたり、自分を責めて症状を更に悪化させるという悪循環に陥ることがあります。
このため、治療は薬物療法だけでなく、精神療法を同時に取り入れた方が回復が早いと考えられています。
精神療法では、うつ病の原因や症状の悪化を引き起こすストレスの対処法を学ぶことで症状軽減を図りますが、代表的なものに認知行動療法があります。
うつ病は薬物療法や精神療法など医療が介入した治療が必要ですが、食事や運動、睡眠などの生活習慣を整えることで、抑うつ気分や不眠などのうつ病に特有の症状を軽減できる可能性があります。
理想的な生活習慣を目指すこと自体がストレスになって、うつ病の症状を悪化させかねませんので完璧を目指す必要はありませんが、自分でできる範囲の生活習慣改善を心がけてみましょう。食事、運動、睡眠で気を付けるべきポイントは次の通りです。
うつ病では一般的に食欲が低下し、食事量の減少がみられます。このため、「食事」自体がストレスになることも少なくなりません。
栄養バランスはもちろん大切ですが、まずは好きなものやそのとき食べたいものを優先させ、少しずつでも三食きちんと摂るようにしてください。
食事が十分な量摂れるようになったら、ビタミンや鉄分などのミネラルを多く含むメニューを選ぶようにしましょう。
うつ病では、活動性の低下がみられますが、適度な運動を行わないと不眠につながることもあります。また、運動は気分転換にもなり、抑うつ気分を和らげてくれる効果も期待できます。しかし、必要以上に体力を使う運動は症状を悪化させることもあるので注意しましょう。
おすすめの運動は、ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動です。これらの有酸素運動は過度に体力を消耗することもなく、景色を楽しみながら行えるので気分転換にも最適です。
うつ病の代表的な症状に不眠が挙げられますが、睡眠の障害はうつ病の症状を悪化させる可能性もあり、しっかりと改善する必要があります。
病院を受診すると大半のケースで睡眠薬が処方されますが、生活習慣の面からも睡眠リズムをしっかり整えられるように対策をとり、不眠を改善しましょう。
ポイントは、眠気がなくても決められた時間に就寝し、決められた時間に起床することです。眠る前にスマートフォンやパソコンを使うと神経が昂る原因になるので控えましょう。また、起床時にはカーテンを開けて日光を浴び、乱れた体内時計のリズムをリセットしましょう。
うつ病は、脳の神経伝達がうまく機能しなくなることによって起きる「心の病気」です。うつ病を心の弱さや甘えだという人がいますが、それは間違いです。医師の指導のもと適切な治療を受けることで十分改善が期待できます。まずは早めの受診を心がけてください。