記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/2/8
記事監修医師
前田 裕斗 先生
女性の病気で最も多いといわれている子宮筋腫には、様々な治療法があります。こちらの記事では、子宮筋腫の従来の治療法だけでなく、開腹せずに済む手術の方法、治療法の選び方などを解説します。
子宮筋腫とは、子宮壁に生じる良性の腫瘍です。現在のところ原因ははっきりとしていないものの、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが関係しているのではないかと考えられています。自覚症状がないこともありますが、経血量の増加や月経(生理)の長期化、月経血が多いことによる貧血、月経痛、不正出血といった症状が見られることもあり、不妊や流産の原因になることもあります。
これまで、特に大きな子宮筋腫の治療においては、以下のような開腹手術が行われてきました。
・子宮筋腫核出術
子宮筋腫のみを切除する方法です。妊娠を希望している人に適している一方で、出血が多かったり、触ってもわからないような小さい筋腫が大きくなったりすることがあるといったデメリットがあります。
・子宮全摘出術
子宮そのものをすべて摘出する方法です。妊娠は望めなくなります。
子宮筋腫の治療法は、症状はもちろんのこと、患者の年齢や、患者自身がその後に妊娠を希望するかどうかなどを考慮して選択されます。
子宮筋腫は女性ホルモンの影響を強く受けているため、閉経すると女性ホルモンの減少とともに小さくなり、症状もなくなります。よって、症状が軽ければ経過観察とされ、特に治療は必要ありません。ただし、腫瘍が大きい場合や悪性の可能性がある場合には手術が検討されます。
過多月経や月経困難症、貧血などの症状が重いと、その症状に合わせた薬物療法が行われます。薬物療法で改善が見られないケースでは、手術が選択されることもあるでしょう。
妊娠を望む場合、無症状であれば治療は必要ありません。ただし、筋腫が大きかったり痛みが強かったりするときは、流産や早産の可能性を考慮し、「子宮筋腫核出術」などが行われることがあります。
子宮筋腫の切除といえば開腹手術が主でしたが、現在ではお腹を大きく切らない手術も行われています。
体内に内視鏡を入れ、患部をモニターに映しながら行う手術です。子宮口から子宮鏡を入れながら行う「子宮鏡下手術」と、お腹に小さい穴をあけて腹腔鏡を入れながら行う「腹腔鏡手術」があります。
子宮鏡下手術の適応となるのは子宮粘膜下筋腫という、子宮内腔に飛び出してくるようなタイプのもののみです。また、あまりに大きい場合も子宮鏡下手術の適応とはなりません。これは子宮口から筋腫の搬出が困難となるためです。また、腹腔鏡手術は今では一般的であり、開腹術と遜色なく行えますが、あまりに個数が多い場合や腹腔鏡下では子宮の縫合がしにくい位置に複数ある場合などでは開腹手術の方が手術の質や安全性の点でも優れている場合があります。
カテーテルを動脈に挿入し、血流を遮断することで筋腫を縮小させる方法です。経血量の減少などは望めますが、術後無月経や卵巣機能不全になる可能性があるほか、UAE後の妊娠についてのデータがまだ乏しいことから妊娠を希望している人には向いていません。
超音波を用い、体外から子宮筋腫を焼くという方法です。直径10cm以上の筋腫や3個以上の筋腫、妊娠希望の人は対象になりません。
これまで子宮筋腫の手術では主に開腹して行う方法がとられてきましたが、近年ではお腹を切らずに済むケースも増えています。年齢や妊娠を希望するかなどを考慮し、医師とじっくり相談しながら治療方法を選ぶことが大切といえるでしょう。