記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
甲状腺機能低下症とは、その名の通り、甲状腺の機能が低下することで全身の代謝に関わる症状が現れる疾患です。こちらでは、甲状腺機能低下症の初期症状や注意点などについて解説します。
喉ぼとけの下あたりにある蝶のような形の臓器を甲状腺といい、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンには全身の新陳代謝を促す働きがあります。「甲状腺機能低下症」とは、この甲状腺ホルモンの分泌が低下することによって全身の機能低下が起こり、むくみや疲労感といった症状を生じるものです。
甲状腺機能低下症は、「原発性甲状腺機能低下症」と「中枢性甲状腺機能低下症」の2つに分類されます。
慢性甲状腺炎(橋本病)などにより、甲状腺そのものの機能低下をきたすことで甲状腺ホルモンが分泌されなくなるものを指します。ヨウ素の過剰摂取や甲状腺の手術、治療後などに起こることもあります。
脳の疾患などによって下垂体や視床下部に障害が生じ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)やTSHを刺激するホルモン(TRH)が減少することで起こるものです。
甲状腺ホルモンは全身の代謝に大きく関わっているために、甲状腺機能低下症で現れる症状は多岐に渡ります。特に初期から見られるのは以下のような症状です。
・夏など、暑くても汗をかかない
・むくみ
・体重が増える
・全身のだるさを感じる
・疲れやすくなる
・眠気
・物忘れが多くなる
・何事にも無気力になる(うつっぽくなる)
・忘れっぽくなる(記憶障害)
・皮膚が乾燥してかさかさする
・毛が抜ける
・便秘
・声がかすれる
・寒がりになる
甲状腺機能低下症は比較的女性に多く認められ、生理不順や、不妊や流産になりやすくなるといった症状が見られることもあります。これらの症状はゆっくりと時間をかけて進行することから、甲状腺機能低下症であるとなかなか気づかないケースも少なくありません。
血液検査が行われ、甲状腺ホルモン値の低下と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値の増加が認められれば甲状腺機能低下症だと診断されます。また、コレステロール値やクレアチンキナーゼ(CK:筋肉などの円滑な活動に関わる酵素)値が高いことで甲状腺機能低下症が発見されることもあります。
また、ヨウ素を過剰摂取すると甲状腺機能低下症を引き起こすことがあるため注意が必要です。ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料ではあるものの、甲状腺の機能低下による症状が出ているのであれば、こんぶ、わかめ、のり、ひじきといったヨウ素が豊富な食材を摂り過ぎたり、ヨウ素を含むサプリメントを飲んだりすることは避けましょう。
タバコにも甲状腺の働きを妨げる化学物質が含まれているといわれていることから、甲状腺機能低下症の予防には禁煙も大切です。
甲状腺機能低下症には様々な症状がありますが、全身に現れるために病気と気付かないことがあります。汗をかかない、むくむ、声がかすれるなどの症状があれば早めに受診しましょう。また、甲状腺機能低下症が疑われる場合には、ヨウ素が含まれる食材やサプリメントの過剰摂取は避けてください。