メタボリックシンドロームの診断基準 ― 予防や治療の方法とは!?

2018/2/9 記事改定日: 2018/7/3
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

メタボリックシンドロームとは、お腹まわりに内臓脂肪がついているのとともに、高血糖や高血圧などがみられる状態です。この記事では、メタボリックシンドロームかどうかをどのように判定するのか、その診断基準について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドロームとは、腹囲が正常値よりも大きく内臓脂肪がついている状態です。加えて高血糖や高血圧、脂質代謝異常を併せもっており、動脈硬化が悪化することで発症する病気になりやすい状態になっています。

動脈硬化が原因で起こる病気として、心筋梗塞や脳梗塞があります。現代社会ではカロリーの多い食事をとる人や、運動不足になっている人が増えているため、メタボリックシンドロームになる人が増えているということが問題になっています。特に、肥満の中でも内臓の周りに脂肪がつく内臓脂肪型肥満の場合、糖尿病や高血圧、高脂血症が起こりやすくなり、それが動脈硬化を悪化させるということがわかっています。

メタボリックシンドロームの診断基準

メタボリックシンドロームかどうかを診断するための第一歩として、まず腹囲を測ります。男性の場合は85cm以上、女性なら90cm以上だった場合は他の検査を行います。メタボリックシンドロームかどうかを診断するにあたり、まず腹囲がこの値以上であることが必須条件となります。

腹囲に加えて、血圧が130/85mmhg以上、空腹時血糖110mg/dl以上、中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl以下のうち、2項目以上が当てはまるとメタボリックシンドロームと診断されます。

診断基準の中で腹囲が一定以上であることが必須ですが、腹囲だけで判断するわけではないので、見た目が太っているだけでは該当するかどうかはわかりません。一見痩せているように見える人でも、メタボリックシンドロームに該当する人もいます。

メタボリックシンドロームによるリスク

メタボリックシンドロームになるとさまざまな健康被害が起こりやすくなります。2型糖尿病になるリスクは3~6倍、心臓の血管に異変が起こる病気がきっかけで死亡するリスクは1.5~2倍になります。そのほか、非アルコール性脂肪肝や高尿酸血漿、腎臓病などにもかかりやすくなるといわれています。

糖尿病はいったん発症すると完全に治すことが難しく、一生糖尿病の治療をしながら生きていかなくてはいけない可能性があります。また、糖尿病には神経障害や網膜に異変が起きて失明してしまう合併症もありますし、腎臓の機能が悪くなって透析をしなくてはいけなくなることもあります。そして、心臓血管系の病気としては心筋梗塞があります。これは発作を起こすと命に危険が及ぶ病気です。

メタボリックシンドロームの治療方法は?

メタボリックシンドロームは、「生活習慣病」であるため、食事や運動などの生活習慣を改善することが治療の第一歩です。具体的にどのような改善を行えばいいのかは次の通りです。

① 食事療法

食事療法で重要なことは、総カロリーを減らして肥満を予防すること、野菜を中心として塩分控えめなバランスのよい食事を心がけることです。
一日の摂取カロリーは概ね、25kcal×標準体重(kg)と推奨されています。厳密にカロリー計算をする必要はありませんが、大まかな目安として覚えておきましょう。また、野菜は一日350g以上摂ることが推奨されていますので、調理方法を工夫しながら3食の中でバランスよく摂るようにしましょう。

② 運動療法

すでに蓄積された脂肪を減らすのは、過度なダイエットによる減量ではなく、運動習慣を身に付けることで脂肪を燃焼させることが大切です。
脂肪を効率よく燃焼させるには、ダンベル上げやダッシュなどの無酸素運動ではなく、ウォーキングや水泳、サイクリングなどの有酸素運動がおすすめです。程よく汗をかく程度の無理のない運動を1日30分以上行うのが理想的です。

③ 行動療法

行動療法とは、患者自身に食事療法や運動療法、薬物療法などの重要性をよく認識させ、治療を継続するように支援する治療法です。高度な肥満の人には生活習慣や食行動の問題点などに対してカウンセリングが行われることもあります。
また、自身の体重や血圧、食事内容などを毎日記録することで自身の反省点を見出していくセルフモニタリングも高い効果が期待できる行動療法の一つです。

メタボリックシンドローム予備軍

上記の条件を満たす場合にメタボリックシンドロームと診断されますが、条件を満たしていないからといって油断できません。なぜなら、現時点では該当しなくても、近い将来該当してしまう可能性がある人はたくさんいるからです。

このような人たちのことを「メタボリックシンドローム予備軍」といい、40〜74歳の人の中では男性だと2人に1人、女性だと5人に1人がメタボリックシンドローム予備軍、もしくは該当者だと言われています。人数で言うと、該当者は960万人、予備軍は980万人いると言われているため、多くの人がメタボリックシンドロームとは無関係ではありません。該当している人はもちろん、予備軍に入っている人も、メタボリックシンドロームを解消できるように注意する必要があります。

メタボリックシンドロームを予防するには!?

メタボリックシンドロームの予防では、減量・食生活改善・運動が非常に大切です。喫煙も動脈硬化を引き起こしますので、今現在喫煙している人は禁煙外来などを利用して禁煙することをおすすめします。
また、メタボリックシンドロームの主要症状である高血圧や糖尿病、高脂血症などは自覚症状がほとんどなく、何らかの症状が現れた時点で病院を受診するとすでに重度なメタボリックシンドロームに陥っており、重篤な合併症を引き起こすことも少なくありません。

このため、メタボリックシンドロームの発症や進行を予防するためには、毎年健診を受け、自身の健康状態をきちんと把握することが大切です。

おわりに:メタボリックシンドロームかどうかの判断の目安は腹囲の数値にある

メタボリックシンドロームかどうかを判断する第一歩は、腹囲が基準を超えているかどうかです。基準値を超えていた場合は、血圧や空腹時血糖などの数値を調べ、メタボリックシンドロームかどうかを確定させます。ただ、今は数値を超えていなくても、近い将来超える可能性があります。普段から食生活や運動に気をつけることが大切です。

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