記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/2/9
記事監修医師
前田 裕斗 先生
分娩後脱毛症とは、出産後に薄毛になってしまうことです。分娩後脱毛症はなぜ起こり、いつまで続くのでしょうか。この記事では、分娩後脱毛症の原因と改善方法について解説しています。
女性ホルモンには、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)の2種類があり、妊娠中は高い状態が続きますが、出産後は正常値に戻り急激に低下します。しかし身体がこの変化についていけず、ホルモンバランスが崩れ、抜け毛という症状で現れることがあります。
また、これまでと一変する生活リズムも分娩後脱毛症の原因の1つといわれています。授乳やおむつ替え、寝かしつけなどで生活が不規則になると、ヘアサイクルにも悪影響を及ぼします。さらに、慣れない子育てによるストレスがヘアサイクルに影響を及ぼす場合もあります。
その他、赤ちゃんの世話を最優先するあまり、自分の食事が後回しになり十分な栄養を摂取できないことが栄養不足を招き、毛髪の成長を促すエストロゲン分泌量が低下することで抜毛が起こる場合もあります。
エストロゲンとプロゲステロンの2つの女性ホルモンは、髪の毛の成長を促す働きと、髪の毛の成長期間を持続させる働きがあります。さらに髪の毛のつやを出すコラーゲンの合成にも関わっています。
上述したように、出産後はこれらの女性ホルモンが急激に低下し、バランスが崩れることで抜け毛が増えてしまうと考えられています。これに加え、子育てのストレス、睡眠不足、栄養不足といった原因が積み重なり、抜け毛がひどくなる場合もあります。
髪の毛は成長期、退行期、休止期というサイクルをたどり、通常の成長期は4年~6年です。しかし、産後は女性ホルモンの乱れで成長期が数か月~1年しかない場合があります。髪の毛のサイクルが短くなると、どんどん抜け毛が増え、髪の毛が薄くなったように感じてしまいます。
産後、急激に低下した女性ホルモンは少しずつ回復しますが、授乳中は女性ホルモン(エストロゲン)が低い状態が続いてしまいます。これは、母乳を出すプロラクチンというホルモンが、エストロゲンを抑制するからです。
これらの影響から開放され、産後に抜け毛が回復するのは、授乳回数が減る産後1年くらいを目安に考えるとよいでしょう。
健康でつやのある髪を回復させるためには、バランスのよい食事を摂ることが一番大切です。髪の毛の主成分であるタンパク質や亜鉛に加え、髪のスムーズな生成を助けるカルシウム、ビタミンやミネラルも積極的に摂るようにしましょう。
またストレスは抜け毛の大敵です。髪のことを気にしすぎることはストレスにつながりかねません。育児中の抜け毛は一時的と割り切り、日頃のストレス対策も少しずつできるようにしていきましょう。
そして授乳期は、どうしても睡眠時間が短くなりリズムが乱れがちです。昼寝や休憩を十分挟み、体と心の疲れを回復させてください。
産後の抜け毛は一時的で、生理的なものです。産後1年の時間をかけて、女性ホルモンが戻れば、抜け毛は回復します。それまでゆっくり過ごし、あまり深刻に考えすぎないようにすることが大切です。またその間を通して、生活リズムや食生活の改善し、髪の毛にとって良い生活習慣を取り戻していきましょう。