記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/21
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
日本人の死亡原因のトップの座に君臨する「がん」ですが、予防することができる病気です。
現在の研究では、がんの高リスク集団がわかっており、具体的な予防法が開発され、予防対策が効果的に実施されれば、がんの発生率とそれに続く死亡率は確実に下がるでしょう。
がんを予防するための確実な方法はありませんが、そのリスクを軽減することはできます。
がんに負けないからだをつくるには、日ごろから以下のようなことに気をつけるようにすることです。
・健康でバランスの取れた食事を食べる
・健康的な体重を維持する
・からだをよく動かす
・飲酒量を減らす
・禁煙する
・日焼けから肌を守る
・自分のからだを知る
がんの予防に関する食生活に関する話題は、頻繁にニュースで取り上げられますが、食生活とがんとの関連性はまだはっきりと分かっていません。
がんの発症を防ぐことができる食べ物やサプリメントはありません。特定の食品、ビタミンまたは栄養素ががんのリスクを低下させることは、一部の研究によってわかっています。しかし、健康でバランスの取れた食事は、がんだけでなくさまざまな疾病からからだを守ってくれます。
以下を参考に食事について考えてみましょう。
・1日あたり5皿分の果物や野菜
・米、パン、ジャガイモ、パスタ、そのほかのでんぷん質の食べ物を多くとる(食物繊維が多く含まれる全粒粉の食品を選ぶ)
・肉、魚、卵、豆、そのほかの乳製品以外のタンパク質
・牛乳や乳製品
・ケーキやポテトチップ、ビスケットなど脂肪分や糖分が多い食べ物や飲み物は控えめにする
十分な食物繊維は、大腸がんにかかるリスクを低下させることがわかっています。食物繊維が多い食事は、腸の健康を保ち、便秘の予防に役立ちます。食物繊維が豊富な食品として、全粒粉のパスタ、パン、朝食用シリアル、米があります。豆、果物、野菜も、繊維質を摂りやすい食べ物です。
肉(赤肉および加工肉)は、タンパク質、ビタミン、鉄、亜鉛などのミネラルを豊富に含む食品です。最近では、肉(特に加工肉)をたくさん食べる人は、あまり食べない人よりも大腸がんにかかる危険性が高くなるということがわかっています。
牛肉、豚肉、ラム肉はすべて赤身です。加工肉にはベーコン、ソーセージ、サラミ、ハムなどがあります。1日あたり90g以上の赤身または加工肉(ローストビーフ、ラム肉、または豚肉の薄切りを3枚分相当)食べているとしたら、 70gまで減らすことをお勧めします。
抗酸化物質のサプリメントによくみられるβ-カロチンは、喫煙者やアスベストにさらされている人の肺がんの危険性を高めることがわかっています。大量のβ-カロチンサプリメント摂取は、ほかの人のがんのリスクも高めることになります。
肥満は、以下のようながんの危険性があります。
・腸のがん
・膵臓(すいぞう)がん
・食道がん
・乳がん(閉経後の女性の場合)
・子宮がん
・腎臓がん
肥満を防ぐには、まず自分の適正体重を知ることです。
適正体重は、以下の計算式でわかります。
身長(cm)×身長(cm)×22=適正体重
肥満度は、ボディマス指数(BMI)によってわかります。
体重(kg)÷{身長(cm)×身長(cm)}=BMI値
肥満度1 BMI値25~30未満
肥満度2 BMI値30~35未満
肥満度3 BMI値35~40未満
肥満度4 BMI値40以上
がんの要因となるさまざまな疾患は、肥満に結びついています。いつか、がんが治癒(ちゆ)できる日がくるまで、私たちにできるがんの予防法は健康的な食事と適正体重を維持していくことではないでしょうか? がんを、死亡原因の第1位の座から降ろすには、私たちの日常の生活を見直すことが大切なのです。