カラダの健康の原点・歯の基礎知識 ~乳歯・永久歯~

2017/3/21

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

成績が上がらず苦しんでいたプロ野球選手が、徹底したメディカルチェックを受けたところ、歯の噛み合わせが悪いことにより、打球をインパクトする際、上半身・下半身に力がうまく伝わっていないことが判明しました。

そして、マウスピースで噛み合わせを矯正したところ、成績は劇的に向上しました。
甲子園の高校球児がこぞってマウスピースをつけるようになったのは、これがきっかけです。

わたしたちも重いものを持つような時、無意識に歯を噛み締めます。すぐに実感できると思いますが、歯を噛み締めるか、噛み締めないかで力の入りが全然違います。

つまり、歯の状態が健康 = 姿勢が安定し、力が出せる
歯の状態が不健康 = 姿勢が悪くなり、力が出せない
になるのです。

歯は、「食べる」ために存在しているだけではありません。健康維持に不可欠の核となる部分で、体にとって大切な役割を担っています。
“歯を食いしばる”歯が健康でなければ、頑張ることはできません。

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歯の実態と形状

歯は食べ物を細かく砕いて飲み込みやすくする役割はもちろん、言葉を発したり、姿勢を保ったり、バランス感覚を向上させたり、集中力を発揮させたりと、生きるうえで欠かすことのできない役割を担っています。
そんな歯は、どんな種類があり、どんな物質からできているのでしょうか。

乳歯

乳歯は生まれる前に発達し始めますが、ほとんどの場合、6〜12ヶ月前までは生えません。ほとんどの子どもたちは、3歳の時までに20本すべての乳歯が生えます。5、6歳に達すると、永久歯が生えてくるために乳歯は抜けます。

赤ちゃんの乳歯は通常、下の前歯から順番に生え揃っていきます。生後3~9ヶ月ぐらいに、生えはじめますが、生える時期には個人差があり、赤ちゃんによってかなり差があります。

全部で20本になり、2歳半くらいが、すべての乳歯が生えそろう時期になります。

永久歯

乳歯が抜け落ち、代わりに生え変わる歯が永久歯です。乳児から幼児、思春期へと成長し、顔の骨格や顎が大きくなるのにつれて徐々に生え変わっていきます。

乳歯が全部で20本なのに対して、永久歯は28本で、親知らずを含めると32本になります。乳歯に比べ、歯の表面を覆うエナメル質や内側の象牙質が頑丈にできています。

だいたい12~14歳までに、ほとんどの子どもの歯は永久歯になります。 生え変わりの時期は、乳歯と永久歯が混在し、汚れや歯石がたまりやすくなるため、しっかりとしたケアが大切になります。

親知らずの除去

親知らずは、永久歯の中で最後に生えてきます。永久歯は通常15歳前後で生え揃いますが、親知らずが生えてくる時期はその後になります。

一般的には、上あごの左右2本と下あごの左右2本の計4本になります。親知らずが生えない人や、4本が揃っていない人など個人差があり、生えるスペースがないため、埋没していたり、傾いて曲がって生えてくる場合があります。

歯は何からできていますか?

歯茎の上に出ている歯の部分はクラウンと呼ばれ、表面は光沢のあるエナメル質で覆われています。エナメル質は人体の中で最も硬い物質で、歯の神経が通っている敏感な象牙質を保護します。

象牙質は、歯の大部分を占め、虫歯菌に晒されると防御しようとして、象牙質を硬くしたり、新たな象牙質をつくり、神経を守ります。また、歯に血液を供給し、神経末端があるパルプと呼ばれる歯の内側部分を保護しています。

血液は、歯を健康に保ち、末端神経は、熱いものを食べているのか、冷たいものを食べているのか、虫歯や欠けている歯があるかといった信号を脳に送ります。

パルプは歯茎の下にある歯の根元まで通っており、歯肉は歯の根元を覆い、歯周繊維は歯から顎骨までつながっています。

歯の種類

4種類の歯があります。
・切歯
上顎と下顎の4本の前歯です。食べ物を噛み切るのに使います。
・犬歯
尖った鋭い歯です。上顎と下顎の前歯の両側にそれぞれ1本ずつ、計4本あります。食べ物を噛みちぎるのに役立ちます。
・小臼歯
犬歯の隣にあり、小臼歯は上顎に4本、下顎に4本あります。前歯や犬歯よりも大きく、幅が広く、食べ物を砕いて潰すのに役立ちます。
・臼歯。大臼歯は、上部に4本と下部に4本で計8本あります。歯の中でいちばん丈夫で強く、安全に飲み込めるようになるまで食べ物をすりつぶします。大臼歯と舌の働きで食べ物は飲み込みやすくなります。

おわりに ~カラダの健康の原点・歯~

歯を噛み締めることで、強い瞬発力が生まれ、集中力が高まることが研究で明らかになり、現在、スポーツ界では、歯の噛み締める力を増強させるために、マウスピースの重要性が注目されています。

もちろん、歯の健康は、アスリートだけでなく、普通の人にとっても重要です。
 
しかし、歯の健康は、虫歯や歯周病で害されます。普段から丁寧なケアを心がけ、歯を健康に保ちましょう。

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