腹部大動脈瘤の手術、ステントグラフト手術と人工血管置換術とは!?

2018/2/20 記事改定日: 2018/7/5
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

腹部大動脈瘤は、破裂してしまうと高い確率で死に至る恐ろしい病気です。そのため、早期に発見して破裂を防ぐことが重要です。この記事では、腹部大動脈瘤の手術「人工血管置換術」と「ステントグラフト手術」について解説しています。

腹部大動脈瘤はどんな病気?

腹部大動脈瘤とは、腹部にある大動脈にコブができる病気です。
大動脈は、心臓の左心室から出て上にあがり、大動脈弓を形成して下に向かい、腰のあたりにある総腸骨動脈の分岐部までつながっています。全身に血液を送り出す、とても大切な血管です。

正常な太さよりも1.5倍以上に膨らんだ状態になると、大動脈瘤と診断されます。腹部大動脈の場合、正常な太さは約2センチほどですから、1.5倍の3センチ以上に膨らむと、腹部大動脈瘤と診断されます。

腹部大動脈瘤は、小さいうちはあまり自覚症状がありません。動脈瘤が大きくなり、周りの臓器を圧迫するようになると、腹痛、腰痛、圧迫感などの症状が現れてきます。痩せている方の場合、仰向けに寝たときに、おへその辺りに拍動性のしこりに手で触れて気づくこともあります。

腹部大動脈瘤が破裂した場合は激痛を伴い、出血性のショックで命を落としてしまうおそれもあります。破裂した場合の致死率は90%であり、緊急搬送されて手術されたとしても救命率は50%といわれています。そのため、コブが破裂する前に治療を始めることが大切です。

腹部大動脈瘤の治療

腹部大動脈瘤の治療は、破裂する前と破裂した後では異なります。腹部大動脈瘤が破裂してしまった場合、手術以外に命を救う方法がありません。破裂した場合は緊急手術で破裂した血管を人工血管へ置き換えます。

破裂していない腹部大動脈瘤では、大きさや状態などを総合的に判断して治療方針を決定します。
コブが大きいものや、形が一部分飛び出した嚢状になっているもの、半年で5ミリ以上大きくなったものなどは破裂しやすいため、手術が推奨されることが多いといわれています。

腹部大動脈瘤の手術は人工血管置換術とステントグラフト内挿術の2種類があります。

人工血管置換術

人工血管置換術は腹部を切開し、腹部大動脈瘤のある血管を人工血管に置き換える手術です。ステントグラフト内挿術は、鼠径部からカテーテルを挿入し、ステントグラフトと呼ばれるバネ状の金属を取り付けた人工血管を挿入します。

大きさが小さく、破裂の危険性が低いとみなされた場合は、血圧を下げる降圧療法を行い、定期的にCT検査を行って経過をみていきます。

合併症

人工血管置換術は、人工血管に置き換える範囲によって起こりうる合併症や危険性が異なります。
腹部大動脈からは肝臓や腸管、腎臓、脊髄などの部位に血管が分岐しています。術中は置換する部位の血流を一時的に止めるため、これらの重要な臓器に十分な血流が保たれない状態が長く続くと、腎不全や神経障害が生じることがあります。

また、術後には人工血管内に血栓ができやすい状態となるため、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。
その他にも、広範囲に腹部を開く手術となるため、術後に感染症や腸閉塞などを発症することも少なくありません。

ステントグラフト手術

ステントグラフト手術とは、血管内治療の一種です。足の付け根部分に局所麻酔を行い、3センチほど切開して大動脈からカテーテルを挿入します。腹部大動脈瘤のある部分まで、金属バネのついた人工血管であるステントグラフトというものを入れて、腹部大動脈瘤に留置します。

ステントグラフトは、腹部大動脈瘤の内側で広がって固定され、血管壁を内側から補強して、破裂を予防します。全身麻酔や開腹の必要がないため体の負担が少なく、高齢の方など体力がない人でも受けることができます。また、合併症の危険性も低く、切開する部分も小さいため早期の回復が期待できます。

合併症

ステントグラフト手術は傷口も小さく、体への負担が少ない手術です。このため、現在では広く行われる手術ですが、直視下での手術ではないため、様々な合併症が生じる可能性もあります。

まず、ステントグラフトによる血管の損傷や、腹部大動脈から分岐する重要な血管を閉塞してしまうことがあります。また、十分に「瘤」の部位を閉塞できない場合や、血管内壁との間に隙間がある状態でスタントグラフとを固定してしまうと、動脈瘤に過度に負担が生じて破裂する危険が高まることになります。
さらに、ステントグラフトが正常に挿入されず、折れたり曲がったりすると血管が狭くなって血流が悪化することも考えられます。

退院後の過ごし方 ― 食事や生活に制限はあるの?

腹部大動脈瘤の手術後の生活に、特に大きな制限はありませんが、血栓ができやすい状態であるため、抗血小板薬の服用が必須となります。また、高血圧や高脂血症、糖尿病などの動脈硬化を促す生活習慣病は可能な限りコントロールする必要があります。
このため、手術後は適正カロリーを守ったバランスよい食事や適度な運動などの生活習慣の改善を心がけるようにしましょう。また、喫煙も血管の内膜を傷つけるため、禁煙外来などを利用して禁煙することが必要です。

腹部大動脈瘤を予防する方法とは!?

腹部大動脈瘤の大部分は、動脈硬化によって引き起こされます。
このため、動脈硬化の予防が腹部大動脈瘤の予防にもつながるのです。
動脈硬化に陥る原因は加齢ですが、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病、喫煙などの生活習慣が大きく関わっています。
このため、予防には適正体重の維持や栄養バランスの良い食事、適度な運動習慣などが必要になります。また、定期的な健康診断を受けることで、自身の体調を正確に把握し、生活習慣病がないか、なり始めではないかを知ることも重要です。

おわりに:早めの検査と毎日の生活習慣の見直しが大切

腹部大動脈瘤は、破裂してしまうと致死率が高いとても恐ろしい病気です。自覚症状があまりないため、定期的に検診を受けて早期発見に努めることが大切です。また、腹部大動脈瘤ができる大きな要因は、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病のため、食生活や禁煙など生活習慣の改善にも心がけましょう。

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