記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
食中毒の原因として非常に有名なノロウイルス。このノロウイルスは、毎年どれくらいの時期に流行のピークを迎えるのでしょうか?ノロウイルスの検査方法や代表的な症状、予防法などと併せて幅広くご紹介します。
ノロウイルスは、感染性胃腸炎を引き起こすウイルスの一種です。時期を問わず発生が見られますが、ノロウイルスの発症者の約7割は冬期に発症しています。一般的には11月頃から発症者が増え始め、12月〜翌年1月に流行時期のピークを迎えます。幼い子供から高齢者まで、幅広い年代に感染します。
ノロウイルスの主な感染源は、牡蠣などの二枚貝類の生食であり、人の手や指を介して感染が広がることもあります。人が集まる場所では特に感染が広がりやすいので注意が必要です。
2017〜2018年シーズン(2017年9月4日〜2018年9月2日)でのノロウイルスの流行状況ですが、例年通り2017年11月初旬頃から患者数が増え始め、12月中旬頃に流行のピークを迎えました(2018年3月時点)。ピーク時点での発症者数はおよそ12.5人/週ですが、これは去年と比べてかなり低い数字と言えることから(2016年12月初旬の発症者数はおよそ28.5人/週)、今シーズンはそこまでノロウイルスは流行していないと言えます。
感染性胃腸炎の原因となるウイルスにはさまざまな種類がありますが、冬場に流行しやすい主なウイルスが、ノロウイルスとロタウイルスです。ノロウイルスは冬の前半(11月~1月頃)に、ロタウイルスは冬の後半から春(3~5月頃)にかけて流行します。
なお、ロタウイルスは乳幼児がかかりやすい急性胃腸炎で、水様性の下痢や吐き気、腹痛、発熱などが現れます。5歳までにほとんどすべての子供が感染すると言われており、大人は感染してもほぼ無症状のことが多いです。
通常、症状や感染状況からノロウイルスと推定した上で治療を行っていくことが多いですが、ノロウイルスかどうか正確に検査するには、以下の方法があります。
糞便中のノロウイルスを検査キットで検出します。すぐに結果が出ますが、簡易的な検査のため、ノロウイルスに感染していても陽性とならない場合があります。
電子顕微鏡法やRT-PCR法、リアルタイムPCR法などの遺伝子を検出する方法で、患者の糞便や吐瀉物からウイルスの検出を行います。糞便には大量のウイルスが含まれることから、比較的容易にウイルスを検出することができますが、こういった検査は、基本的には医療機関で行うことはできません。行政機関や研究機関が、食中毒の集団感染の原因を突き止める際などに使われます。
ノロウイルス感染症の症状の特徴としては、下記の3点が挙げられます。
・アルコール消毒や熱に対して強い。乾燥や熱にも強いため、自然の環境でも長い間生存し続ける
・感染力が強い。10~100個という少量のウイルスでも感染し、胃腸炎を発症する
・何度も感染する。ノロウイルスに対しては免疫が成立しないため、1度かかったことがあっても何度でも感染する可能性がある
ノロウイルス感染症の主症状は、腹痛、下痢、吐き気や嘔吐です。強烈な胃痛や吐き気が特徴であり、発熱については軽度(37~38℃)なことが多く、通常は発症後1~2日程度で症状は治まるといわれています。
ノロウイルスの感染を予防するためには、大きく2点のポイントがあります。
1点目は、食品をしっかりと加熱処理をすることです。ノロウイルスは85℃以上で1分以上の加熱で力を失うといわれています。しかし、ノロウイルスがどんな条件で力を失うのかは、まだ正確には解明されていません。心配な場合はより厳しい条件で、加熱処理をするようにしましょう。
2点目は、手洗いや調理器具洗浄の徹底です。手洗いは手に付着しているウイルスを洗い流すことが目的です。調理前、食事前、トイレ後等は、必ず手を洗うようにしましょう。指輪等を外して、指の先や指の間、爪の中、手首などくまなく石鹸の泡でしっかりと洗浄してください。ブラシを使うのもおすすめです。すすぎは温水で行い、清潔なタオルで必ず拭きとってください。
調理器具については、洗剤でしっかりと洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)に浸すことで、ウイルスの力を奪うことができます。また、まな板や包丁、食器、ふきん等を、85℃以上の熱湯で1分以上加熱することも有効です。
牡蠣などを調理する場合は、また板や包丁はそれ専用で使うようにして、他の食材との併用は避けましょう。もし専用のものを準備できない場合には、調理する度に洗浄し、熱湯で消毒するようにしてください。
ノロウイルスは感染力が非常に強いです。牡蠣などの二枚貝類を調理する時だけでなく、冬場の流行期に人混みに出かける際は、感染に特に注意してください。高齢者や乳幼児など抵抗力の弱い人は症状が重篤化する恐れがあるので、流行期には手洗いや食品の加熱処理などを徹底しましょう。