記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/15 記事改定日: 2019/7/5
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
膀胱炎は女性の多くが体験する身近な病気のひとつです。細菌感染から起こるものが大半であり、治療は薬による治療が中心になっています。この記事では、膀胱炎の治療方法について、漢方薬も含めて詳しく解説しています。
膀胱炎は膀胱の粘膜に炎症が起こる病気で、膀胱機能にさまざまな障害が発生します。大腸菌などの細菌が膀胱で繁殖することが炎症の主な原因になり、原因菌の多くは尿道から侵入します。女性は尿道が短く肛門や腟が尿道に近いため、細菌が侵入しやすく膀胱炎にかかりやすいといわれています。
膀胱炎を引き起こす原因菌を完全に退治するためには、抗生物質での治療が必要です。また、腰や背中に痛みがあるときや高熱が出ているときは、炎症が腎臓にまでひろがっている可能性があり、緊急の治療が必要です。
膀胱炎は再発や進行を防ぐためにも、なるべく早くに病院で適切な治療をしてもらうことをおすすめします。
膀胱炎の治療法は薬物療法が中心です。
膀胱炎の原因菌の約7割は大腸菌が約7割を占めるため、治療開始時は大腸菌に有効な抗生物質を投与することが多いです。
一般的な服薬期間は4~5日で、飲み始めて1~2日で症状が緩和していきますが、症状が強いときは服薬期間を7日程度まで延ばすこともあります。また、処方された薬の服用を続けても症状の改善がみられないときは薬が変更されます。耐性菌感染が原因の場合は、有効な薬が見つかるまで検査と薬の変更が繰り返されます。
膀胱炎の改善のために漢方薬を使うことがあります。膀胱炎の主な原因は細菌による炎症と説明しましたが、漢方では、違った視点で膀胱炎をとらえています。
漢方では、膀胱炎などの尿トラブルのことを「冷えや外から入り込んだ”悪いもの(邪)”によって尿が出にくくなったことで、悪いものを洗い流せなくなった状態と考え、尿の量を増やすことで漢方薬で膀胱炎を改善しようとします。
膀胱炎のときに使われる漢方薬には「猪苓湯(ちょれいとう)」や「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」などがあります。
その他にも、五苓散(ごれいさん)や五淋散(ごりんさん)などの漢方薬が使われることがありますが、どの漢方薬を飲んだ方がいいかについての判断は、必ず漢方の専門医の指示を仰ぎましょう。
上記で紹介された漢方薬はいくつかの製薬メーカーから市販されていて、一定の効果が期待できるといわれています。また、腎仙散®(じんせんさん)や三和生薬腎臓仙(さんわしょうやくじんぞうせん)なども膀胱炎や尿道炎の効能がある薬として市販されています。
緊急に病院に行けない事情がある場合は、一時的な処置として試してみてもいいでしょう。
ただし、服用を続けても症状が改善しなかったり、症状が悪化した場合は必ず病院を受診し、医師の指示を仰ぎましょう。
漢方薬は抗生物質などに比べて効き目が穏やかであり、副作用が少ないといわれていますが、副作用のリスクが全くないわけではありません。
たとえば、猪苓湯には胃の不快感や食欲不振、発疹やかゆみなどの副作用が起こる可能性があり、五苓散には肝機能異常の副作用が現れる可能性があります。
漢方薬を飲んで気になる症状が現れた場合は、すぐに服用を止めて病院を受診しましょう。
また、飲み合わせにによっては服用がすすめられない場合もあります。もし何らかの持病があって薬を飲んでいる場合は、必ず医師の許可をもらってから服用するようにしてください。
膀胱炎は、特に女性がかかりやすく、女性の半数は、人生で一度は経験するといわれている身近な病気です。直接的な原因は細菌感染によるものがほとんどですが、ストレス、冷え、トイレの我慢などによって症状が悪化する場合もありますし、細菌感染が原因でない膀胱炎もあります。また、膀胱炎の症状と思っていたら別の病気だったというケースもあります。
膀胱炎の薬として漢方薬が処方されることもあり、市販の漢方薬にも一定の効果があるといわれていますが、膀胱炎の症状があるときは他の病気との鑑別が必要です。必ず病院で検査をしてもらいましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。