湿潤療法ってどんな治療法なの?家庭でもできるって本当?

2018/2/23 記事改定日: 2019/7/16
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

転んでひじやひざを擦りむいたとき、これまではかさぶたを作って治すのが一般的でした。ただ、現在は「湿潤療法」で治したほうが傷の治りが早いといわれています。
この記事では、湿潤療法とはどのようなものか、どうやって治療していくのかを解説します。

湿潤療法って何?かさぶたを作ると治りが遅くなるって本当?

ケガをしたとき、以前は消毒して傷口を乾かし、かさぶたを作って治していくのが一般的でした。しかし、この方法は傷口を治す働きがある浸出液を乾かしてしまい、「傷の治りを遅くしてしまう」というデメリットがあることがわかってきました。
また、かさぶたは気になってはがしたり、かゆみをガマンできずにかいてしまいがちです。かさぶたをはがしてしまうと、傷口の治りが遅くなってしまいます。

湿潤療法は傷口を乾かさずに治していく治療法で、うるおい療法とも呼ばれている治療法です。
傷口を乾かさずに治すため、かさぶたができませんし、痛みも少なく、従来の治療方法よりも傷口を早くきれいに治すことができます。

かさぶたを作る治療法のデメリット

従来のかさぶたを作って治していく治療法では、消毒液を使うために体に害がある雑菌だけでなく正常な細胞にもダメージを与えてしまいます。
また、傷口にガーゼを当てると、回復に必要な浸出液が吸収されて蒸発してしまいますし、ガーゼが傷口とくっついた状態でかさぶたができてしまうので、カーゼをとりかえるたびにかさぶたが剥がれてしまい、傷口の治りが遅くなってしまいます。

病院ではどうやって湿潤療法を進めていくの?

湿潤療法は多くの病院で取り入れられるようになってきています。
湿潤療法では、傷口の消毒を行わない代わりに、傷口に入り込んだ汚れやゴミなどを取り除くために丁寧な洗浄を行う必要があります。水道水でも問題ないとされていますが、病院では傷口のしみによる痛みが軽減する生理食塩水が用いられることが多いです。

傷口を丁寧に洗浄した後は「創傷被覆材」と呼ばれるラップのようなフィルムで傷口を多い、傷口から産生される浸出液でフィルム内が濡れてきたら交換するという工程を繰り返します。

ただ、治療を行っても膿が出てきたり、熱を持って痛みが強くなるような場合には湿潤療法を続けることができない場合もあります。傷口の処置は早いほうがいいので、できるだけ早く病院に相談して適切な処置を受けるようにしましょう。

 

すぐに病院へ行ったほうがいいのは、どんな状態のとき?

湿潤療法はすぐれた治療法ですが、すべてのケガに対処できるわけではありません。

  • 刃物などによる深い刺し傷
  • 木片や金属、ガラスなど、異物が傷口の中に入っている
  • 血が止まらない
  • 傷口が化膿している
  • 広範囲にわたるやけど
  • 低温やけど

がある場合は、すぐに病院へ行きましょう。

もし、

  • 傷みが強く動けない、動かせない
  • 出血量が多く、血が止まる気配がない
  • 意識がない、呼びかけても反応しない

状態のときは、救急車を呼んでください。

おわりに:湿潤療法は傷の治りを早くできるが全てに対応できるわけではない

湿潤療法は痛みも少なく、傷の治りも早い治療です。軽いケガであれば、家庭でも対処できます。ただ、傷口が深かったり、化膿していたりする場合には湿潤療法は使えません。
ケガの状態がひどいときは、必ず病院で治療してもらいましょう。

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