膀胱腫瘍の治療法と起こり得る副作用について

2018/2/22

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

膀胱腫瘍とは、尿を一時的にためる働きを担う膀胱に腫瘍ができる病気です。この記事では、膀胱腫瘍が見つかった場合の治療法について解説します。

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膀胱腫瘍とは?

膀胱は、腎臓から尿管を経由した尿を一時的にためておく臓器です。この膀胱の内部にできる腫瘍のことを「膀胱腫瘍」と言います。膀胱を含め腎盂・尿管・尿道の一部は、尿路上皮と呼ばれる粘膜で覆われています。膀胱腫瘍の多くは、この尿路上皮が悪性化した尿路上皮癌で占められています。
尿路上皮癌は、比較的早期から症状がみられる傾向がありますが、赤色や茶色を帯びた尿(肉眼的血尿)の排出が最も一般的な症状です。頻繁に尿意を感じたり、排尿する際に痛みを感じたりするなど、膀胱炎に似た症状があらわれることも珍しくありません。下腹部痛も膀胱刺激症状として典型的なもので、慢性膀胱炎でもよく観察される症状です。そのため、膀胱炎の診断を受けて治療を続けている間に、膀胱腫瘍が発覚することもあります。
さらに腫瘍が成長して尿管口を塞いでしまうと、尿の排出が妨げられて水腎症になることもあり得ます。水腎症を併発すると、背部に鈍い痛みを感じるようになります。

膀胱腫瘍にはどんな治療法があるの?

膀胱腫瘍の治療は、腫瘍のサイズや進行具合に応じて選択されます。早期の筋層非浸潤癌の場合、経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)が標準的な治療です。この手術は尿道の入口から専用の内視鏡を挿入し、膀胱内部にある癌を取り除く方法です。腫瘍の組織的悪性度が低く、多発発生していない場合は、この方法だけで治療します。早期でも腫瘍の悪性度が高かったり、多発傾向が認められる場合は、再度TUR-Btを行ったり、再発予防に抗癌剤やBCGを膀胱内に注入する治療も同時に行うことがあります。
癌がさらに進行して筋層にまで浸潤がみられる場合、開腹して膀胱を全部摘出する手術(膀胱全摘出手術)が行われます。このとき同時に尿路を形成する手術も行うため、大掛かりな手術になります。癌がさらに進行していて筋層を突き破っていたり、周辺のリンパ節に転移している場合は、膀胱全摘出手術に加えて放射線治療や抗癌剤による化学療法も行います。

治療によって起こる可能性がある副作用

膀胱は、尿を排出させるための重要な臓器です。そのため、膀胱腫瘍の治療では副作用に十分注意する必要があります。経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)は開腹を伴わないため、肉体への負担は比較的少ないものの、手術から数日間程度はカテーテルを留置し排尿を促すため、感染症のリスクがあります。また再発予防目的で術後にBCGや抗がん剤を注入する膀胱内注入療法を実施した場合は、激しい炎症を引き起こして膀胱炎に類似した症状に悩まされることもあります。
膀胱全摘出術の場合、膀胱だけでなく、前立腺もしくは膣の一部、周囲のリンパ節も切除し、小腸(回腸)の一部を使って尿の排出経路を作る手術も伴うため、手術後に合併症のリスクが高くなります。注意が必要な合併症として、腸閉塞や感染症による発熱、腎盂腎炎の併発などがあります。切開した部位の縫合不全もみられますが、多くの場合抗生物質の投与と処置で対応できます。長期的には、リンパ節の切除により下肢にむくみが出ることもあります。

おわりに:膀胱腫瘍は経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)か膀胱全摘出手術が行われる

膀胱腫瘍が見つかった場合、状況によって経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)か膀胱全摘出手術が行われます。どちらの場合も感染症や発熱といった合併症が出てくる可能性があります。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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