薬物療法、体操・・・便失禁の一般的な治療法を詳しく解説します。

2018/2/22

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

無意識のうちに、もしくは自分の意思に反して便がもれてしまう症状を便失禁と言います。この症状は、加齢や肛門括約筋の低下などが原因で発症します。この記事では、どうすれば便失禁を解消できるかを解説します。

便失禁はどんな病気?

便失禁とは、「無意識または自分の意思に反して肛門から便がもれる症状」で、普通便の排便コントロールができない状態を言います。
便失禁には2種類の症状があります。1つは便意を感じるものの、我慢できずに漏らしてしまう場合、もう1つは便意がなく、下着が汚れているのを見て初めて便を漏らしたことに気づく場合です。

排便のしくみと便失禁の原因について

排便はどのような仕組みで起こるのでしょうか。口から摂取された食べ物は、食道から胃に運ばれた後、十二指腸、空腸、回腸からなる小腸に運ばれます。小腸は5~6mほどあり、小腸を移動している間に栄養素を吸収して大腸にたどり着きます。大腸は上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸からなるもので、半日かけて上行結腸、横行結腸、下行結腸を移動し、便はS状結腸にたまります。S状結腸は、1日3回ほど起こる大蠕動(だいぜんどう)という強い蠕動運動で、腸を直腸に運びます。直腸に便がたどり着くと直腸の圧が高くなり、その圧が神経機構に伝わって便意が生じ、肛門の筋肉が弛緩して便が排出されます。
便失禁にはさまざまな原因がありますが、内肛門括約筋および外肛門括約筋の機能低下が多いとされています。そのほか、加齢や産後トラブル、大腸や痔の手術の合併症、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患といった腸の病気、脊髄損傷や脳梗塞など神経に関わる病気、糖尿病といった内科的な病気、加齢や認知症によるものなども原因として考えられています。

治療法① 薬物療法

便失禁における薬物療法では、主に下痢止めで便の固さを調整して症状の改善を図ります。
主に使われるのが塩酸ロペラミド、ポリカルボフィルカルシウムです。ポリカルボフィルカルシウムは、軟便を伴う便失禁に対して特に有用とされています。ポリカルボフィルカルシウムはもともと過敏性腸症候群の治療に使われる薬で、食物繊維と同様の作用を持ち、副作用が少ないことが特徴です。
塩酸ロペラミドは強力な下痢止めで、便の水分吸収の促進、腸蠕動の抑制効果があります。下痢症や、便が緩いことによって便失禁を起こす人には効果がみられる反面、過剰に内服すると便秘になる副作用があるため、注意が必要なお薬です。

治療法②:骨盤底筋を鍛える、生活習慣を見直す

保存的治療として多く取り入れられているのが、骨盤底筋を鍛えることです。骨盤底筋の鍛え方はさまざまな方法がありますが、最も簡単な方法は尿道・肛門・腟を閉める方法です。ぎゅっと締めたり、ゆるめたりする動作を繰り返すことです。閉めるときはぎゅっと力を入れて3秒ほど静止し、その後ゆっくりとゆるめるという動作を2~3回行いましょう。まずは1日5分程度から始め、10~20分できるようにトレーニングしましょう。慣れてきたらいろいろな姿勢で行うと効果的です。早い人では2週間ほどで効果を実感できます。この動作によって、骨盤底筋の収縮力が高まると言われています。
さらに、生活習慣を改善することも大切です。まずは、便を出す習慣をつけることで、もっとも基本的な便失禁の治療と言えます。時間を決めて、トイレに行くようにしましょう。特に、朝食後がお薦めです。
また、食物繊維を多く含んだ食品や、食物繊維加工食品を1日20~25g摂取することを心がけましょう。一方で、カフェインや柑橘類の果物、香辛料の多い食品、アルコールは便を軟化させてしまうため、控えることが望ましいです。
運動は排便機能に良い影響を与えるとしているため、積極的に行いましょう。

おわりに:生活習慣を改善するだけでも便失禁を改善できる

外科的な治療以外にも、薬の使用や日常生活を見直すだけでも排便機能が整って便失禁を改善することができます。専門医の指導の下、便失禁改善のために生活を見直してみることから始めてみてください。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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