糖尿病だとなぜ脳梗塞になりやすくなるの?正しい予防対策は?!

2018/2/27 記事改定日: 2018/4/18
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病の合併症としては、糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症などが知られていますが、同じく重篤な合併症の一つとして「脳梗塞」が指摘されています。糖尿病患者はなぜ脳梗塞を発症しやすいのか、対策と併せて解説していきます。

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糖尿病の合併症として脳梗塞が発症するメカニズムとは!?

脳梗塞とは、血の塊が脳の血管に詰まったり流れにくくなったりすることで、正常な状態の半分以下にまで血流が低下し、酸素や栄養が不足したまま脳組織が壊死し機能を失ってしまう状態です。
脳梗塞による死者は年間約7万人にのぼるとされ、命をとりとめても言語や運動機能に後遺症が残るケースが少なくありません。

主な発症原因としては高血圧による動脈硬化が指摘されていますが、近年では糖尿病の合併症として脳梗塞の発症率が高まることにも注目が集まっています。
糖尿病の場合も動脈硬化が進むことで脳の血管に異常が起こるリスクが上昇しますが、糖尿病で起こる動脈硬化はコレステロール値がそこまで高くなくても血管にプラークという塊ができやすくなるため、硬化の進行が促されやすいとされています。
そしてある程度大きくなったプラークが突然破裂し、一気に血栓になるため、脳や心筋に梗塞が起こり、命にかかわる重大な症状となってあらわれやすくなると考えられているのです。

どの種類の脳梗塞も糖尿病によって発症リスクが高まるのはなぜ?

脳梗塞は今や糖尿病の第4の合併症と恐れられ、命にかかわるため細心の注意が必要です。

そもそも脳梗塞には大きく分けて3つのタイプがあり、脳の奥にある細い血管が詰まって生じるラクナ脳梗塞、太い血管が狭くなったり血栓が詰まるなどして生じるアテローム性脳梗塞、心臓で生じた血栓が脳に移動して詰まり発症する塞栓性脳梗塞があります。

このうち日本人に多く高血圧で起こりやすいとされるのがラクナ脳梗塞です。アテローム性脳梗塞は欧米人に多いとされ、高血圧のほか脂質異常症や糖尿病による動脈硬化が原因といわれます。塞栓性は心房細動で心臓にできる血栓が原因で、アテローム性とともに突然の大きな発作が起こりやすいタイプです。
いずれの種類も糖尿病患者は発症リスクが高いため、脳梗塞の原因となる動脈硬化が起こらないよう注意する必要があります。

脳梗塞を合併すると、寿命にどう影響する?

糖尿病が原因で脳梗塞を生じると、多くの合併症が引き起こされます。
まず、脳梗塞の中でも日本人に多いラクナ梗塞は、麻痺や言語障害などを起こすことは稀ですが、何度も梗塞を起こす内に脳の機能が低下し、認知症を引き起こすことがあります。このような認知症を脳血管性認知症と呼びます。認知症は健康寿命を損なうだけでなく、寝たきりの危険因子でもあります。また、大きな発作が起こるアテローム性脳梗塞は、大きな欠陥が詰まるため麻痺や言語障害などの神経障害が起きやすく、寝たきりの原因になります。
寝たきりの状態でも医学が進歩した現在では長く生きることが可能です。しかし、誤嚥性肺炎などの危険性が高くなり、寿命を短縮させる可能性があります。

脳梗塞の徴候 ― こんな症状があるときは注意!

脳梗塞は大きな発作が起こるものでは、即座に神経症状が生じますが、小さな梗塞ではほとんど症状がないことや症状があっても数分以内に改善することがあります。
主な症状は手足のしびれ、突然の話にくさ、脱力などです。特に話しにくさは、言葉がうまく出てこなかったり、ろれつが回らないなどの色々な症状が起こります。また、麻痺やしびれなどは通常体の片方に起こり、両側に起こることは少ないのも特徴の一つです。
このような症状が現れたときには、たとえ数分で症状が改善しても必ず病院を受診するようにしましょう。

治療

脳梗塞の治療は発症後可能な限り早く行う必要があります。
緊急的な治療が必要となるのは、アテローム性脳梗塞や心原性脳梗塞で、内科的な治療としては、tPAという血栓を溶解する薬を点滴するものがありますが、これは発症してから4.5時間以内にしか行うことができず、まさに時間との勝負となります。また、足の付け根の血管からカテーテルを入れて脳の詰まった血管まで到達させ、直接血栓を溶解する方法もあります。
また、首の太い動脈などが狭くなっている場合には脳梗塞の症状が落ち着いてから頸動脈内膜剥離術やステント留置術、バイパス術などの手術が行われることもあります。
その他、ラクナ梗塞などの微小な脳梗塞に対しては、脳の細胞を保護したり、脳のむくみを取る薬の点滴が行われ、脳のダメージ軽減を図ります。

脳梗塞を予防するには食事療法と運動療法が大切!

糖尿病による脳梗塞を起こさないためには、日ごろの食事療法や運動を継続することが大切ですが、脳梗塞が起こりやすい時間帯や徴候を把握して予防を心掛けておく必要があります。

まず脳梗塞が起こりやすい時間帯は、血圧が低下する深夜や、血圧上昇によって血栓が移動しやすくなる早朝です。夜中にトイレに行くのを避けるため水分を摂らないでいると、血流の低下から血栓を生じやすくするため、就寝前に軽く水分補給をし、深夜に目覚めた時など枕元に置いたペットボトル等から少しずつ水分を摂るのも良いとされます。またトイレに行く際は防寒対策をすることも大事で、起床後は血圧を上昇させるような急激な運動を避け、トイレでいきんだりしないことが大切です。

また、脳梗塞のちょっとした徴候を見逃さないことも重要です。上記でも述べましたが、言葉がうまく出なかったり、片方の手足にしびれや脱力感をおぼえたり、足がもつれたりなど異変を感じた際は、すぐに病院へ行って検査を受けましょう。発作の予防に繋げられます。

おわりに:糖尿病患者は脳梗塞を発症しやすいので要注意!徴候と予防法を覚えておこう!

糖尿病患者や糖尿病予備軍の方は、脳梗塞の原因である動脈硬化が進行しやすい状態といえます。生活習慣を改めつつ、就寝前の水分補給をしたり、気になる異変があればすぐ病院を受診したりと、できる範囲での予防策を実践することが大切です。

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