便秘の治療薬は一種類じゃない!? 正しい使用法とは?

2018/2/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

特に女性に多いとされる「便秘」ですが、便秘に効果的な薬にはさまざまな種類があります。今回の記事では、便秘の治療薬の種類や効能、注意点などについてご紹介していきます。

便秘はどうやって治療するの

便秘は、種類によってさまざまな治療方法が選択されます。

例えば、疾患が原因となる器質的障害による便秘や薬剤性の便秘、代謝・内分泌性の便秘の場合は、まずその原因となっている疾患の治療をしなければなりません。

また、機能性便秘の中でも、腸管の緊張や蠕動運動の低下により大腸での糞便通過時間が長くなる弛緩性便秘の場合には、膨張性の下剤や大腸の運動を促進させる薬剤で治療していきます。

一方、機能性便秘の一種であり大腸内容の推進が十分に起こらないために生じる痙攣性便秘では、塩類下剤で便を柔らかくする治療が行われ、場合によっては抗不安薬などの投薬も行われます。

便秘薬は一種類じゃないの?!

便秘薬は「整腸剤」と「緩下薬」の2種類に分類されます。

整腸剤とは腸内の悪玉菌を減らし、善玉菌を増やすことで腸内細菌の働きを整えて腸内バランスを正常に戻すお薬です。治療の補助として使われることが多いです。

一方、緩下薬はいわゆる下剤のことです。この緩下剤も大きく分けて2つに分類することができます。

まず1つ目は腸を刺激して排便を促すもので、刺激性下剤と浣腸剤があります。刺激性下剤とは腸管の筋層間神経叢(しんけいそう)を強力に刺激して排便を促すもので、その作用は極めて強力で、排便時に強い腹痛を伴うとされています。病院で処方されるセンノサイド®などのアントラキノン系下剤がこれにあたります。ただし、薬剤耐性や精神的な依存が問題とされており、だんだんお薬が効かなくなる可能性があることが特徴です。

一方の浣腸剤とは腸内に直接お薬を注入するもので、最も高い効果が得られるお薬です。しかし、使用禁忌の場合があったり、使用においては体勢など注意すべきこともあるため、慎重に使用することが必要となります。

2つ目は便そのものを柔らかくして排便を促すお薬で、塩類下剤と膨張性下剤があります。
塩類下剤とは腸内の水分を集めることで便を柔らかくして排便を促し、腸蠕動を活発にする効果があり、便秘に対して1番最初に使われるお薬です。病院で処方される酸化マグネシウム、マグラックス®、マグミット®がこれにあたります。作用は緩やかであるものの量が増えると強力な下剤となります。併用禁忌薬あるいは使用禁忌の疾患があるため、内服時に注意が必要です。

一方の膨張性下剤とは、水分を吸収して便の体積を増やすことによって腸を刺激し、蠕動運動を促すタイプのお薬でバルコーゼ、コロネル、ポリフルなどがこれにあたります。腸そのものに作用するわけではないため、癖になりにくいことがメリットです。

便秘薬はあくまで排便を補助するもの。根本的な解消のためには体質改善が必要!

便秘薬を使用すれば便がするすると出るようになるため、便秘薬を常時使いたいという方もいるかもしれません。しかし、便秘薬の乱用は便秘を悪化させる原因にもなりかねません。便秘薬はあくまで排便を補助するものと考え、根本的な便秘解消のためには生活を改善して体質を改善していくことが必要となります。

体質を変えていく具体的なポイントは食事と運動です。食事面ではバランスの良い食事摂取を心掛け、その中でも特に繊維質を含む食事を意識して摂るように心がけましょう。繊維質を含む食べ物とは具体的に野菜、海藻、きのこ、果物(特にバナナ、プルーンなど) 、コンニャクなどがあります。
また、ヨーグルトやオリゴ糖は腸内環境を整える作用があるため積極的に摂ると良いでしょう。
水分も一日1200 ml〜1600 mlを摂ることがお勧めです。

運動は軽い運動でも腸には刺激になります。特に腹筋を使った運動は腹部の血行を促進し、胃腸の動きを活発にするだけでなく、排便時の便を押し出すためにも必要です。軽い腹筋運動を継続して行っていきましょう。腹筋運動が難しい場合は、お腹を平仮名の「の」の字を書くように2~3周マッサージするだけでも効果がありますので、日常生活に取り入れていきましょう。

おわりに:適した治療薬+生活習慣の改善で便秘解消!

便秘の治療薬はその効能によってさまざまな種類があります。手軽に便秘を改善できる魅力がある一方で、根本的に便秘を改善するためには体質改善が必要不可欠となります。体質改善はどれも日常生活において取り入れやすいものばかりですので、便秘にお困りの方は是非一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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