記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/1 記事改定日: 2018/7/10
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
近年、「大腸がん」を発症する患者さんが増えつつあるといわれています。大腸がんの自覚症状としてよく知られるのが血便ですが、男性の場合は別の症状でも大腸がんに気づける可能性があります。再発時の兆候も含めて、以降で詳しく解説していきます。
日ごろの健康チェックに役立ててください。
大腸は小腸の出口にあたる盲腸に始まり、上行結腸を経て直腸・肛門まで続く器官で、主に水分吸収を担っています。大腸がんはこの盲腸・結腸・直腸、そして肛門のいずれかの部位に悪性腫瘍が発生する病気です。近年男女ともに患者数が増加していますが、その背景には生活習慣の欧米化の定着や喫煙習慣や肥満などとの関係が指摘されています。
古来の伝統的な日本人の食生活では、野菜や海藻類を豊富に摂取することで、食物繊維を日常的に摂取していました。そのおかげで、大腸の活動が活発になり腸内環境も良好に維持されていました。ところが牛や豚などの家畜類の肉食傾向が顕著になり、食物繊維の摂取量が顕著に減少した結果、便秘気味の方も増え、長期間発がん性物質に大腸粘膜がさらされることになり、大腸がん患者の増加につながっていると考えられています。さらにタバコは数多くの発がん性物質を含んでいるので、大腸がんの発症にも関与していると見られます。
大腸は最終的には直腸肛門を経て、便を体外に排出する役割を持っているので、便の状態の変化などが初発症状に多くみられます。初期には無症状のことが多いですが、一般的に自覚症状として多いのは、血便症状です。文字通り便に血が混じるわけですが、大腸がんの発症部位によって血便の様子にも違いが見られます。とりわけ直腸やS状結腸など、患部が肛門に近いほど鮮やかな鮮血が混じる傾向があります。
ただし血便は痔ろうでも良く経験される症状の為、痔持ちの方では、長らく放置されていることも珍しくなく、早期発見の機会を逃す可能性があるので特に注意しましょう。
そのほかの症状としては便通の異常、特に便秘と下痢を長期間にわたって繰り返すことも警戒すべき兆候です。さらに大腸がんが進行すると腫瘍細胞が大腸内腔をふさぐ形になり、便が細くなったり、お腹の張り、腹痛や体重減少など、進行に伴いさまざまな症状を呈します。
大腸がんのサインとして注意すべきなのは、貧血です。貧血は女性に多いイメージがありますが、これは主に鉄欠乏性貧血によるものです。貧血が女性に多いのは、月経や子宮筋腫などの婦人系疾患では不正出血を伴うことが多く、男性に比較して出血する機会が多いためとされています。
対して男性が貧血を起こすことは、さほど多くありません。しかし、逆に言えば男性で貧血がある場合、体内で出血箇所が存在していることを示唆しています。特に大腸がんでは患部に便が通過する際に、刺激が加えられることで出血を繰り返したり、腫瘍自体が崩壊して出血をきたすこともあります。そのため男性に貧血が見られる場合には、大腸がんをはじめとした消化器官の重篤な疾患のサインと考える必要があります。貧血に便の状態の変化も伴うときには、早めに内科を受診しましょう。
大腸がんは手術によって切除した後も再発する可能性があります。再発には主に次の3つのものがあります。
局所再発とは、がんがあった部位の近くに新たながんが再発するものです。大腸がんの手術では、がんがある部位の大腸を切り取って、その断端同士をつなぎ合わせたり、人工肛門を作るのが一般的です。このため、大部分のがんは切除することができますが、目に見えないような微小ながんが残っている可能性もあり、このような場合に残った微小ながんが徐々に増大して再発を起こすことがあるのです。
遠隔転移とは、血液やリンパ液の流れに乗って大腸以外の臓器に転移した微小ながんが増大して再発を起こすものです。通常、大腸がんの手術を行う前には、他の臓器やリンパ節に転移がないかをCT検査やPET検査などによって詳しく調べます。しかし、このような画像検査にも映らないような微小な転移が生じている場合には、術後に増大して再発する可能性もあるのです。
大腸がんが転移しやすい臓器としては、肝臓、肺、脳などが挙げられます。
大腸は腹膜と呼ばれる膜に覆われており、腹膜に転移が生じた場合、その転移した部位だけでなく、腹膜は腹部全体を覆っているためがん細胞が散らばるように腹腔内全体に広がることとなります。
腹膜播種が生じると、腹水が多く溜まったり、がん性腹膜炎を引き起こすこともあり、腹膜播種が生じたような大腸がんは予後が非常に悪いとされており、腹膜播種での再発には注意が必要です。
大腸がんの初発時には、血便や残便感などの症状が現れますが、再発の場合には初発時と症状が異なります。
大腸がんの再発の兆候は、どの部位に再発したかによって異なり、局所再発の場合には初発時と同様に血便が現れます。一方、肝転移による再発では、倦怠感や発熱、黄疸、食欲不振などの症状が現れ、肺転移の場合には難治性の咳や血痰、息苦しさなどが現れます。また、脳転移の場合には頭痛や吐き気、けいれん、麻痺などの神経症状が見られます。
大腸がんの手術をした人で、このような症状が現れた場合には、なるべく早めに病院を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。
また、手術後には再発の有無を調べるための定期検査が行われます。万が一再発した場合でも、早期に発見できれば手術によって取り除くことも可能ですので、決められた定期検査は忘れずに受けるようにしましょう。
女性とは違い、月経が起こらない男性に貧血症状が見られた場合、体内のどこかで出血が起きているサインの可能性があります。大腸がんは早期発見が非常に重要です。貧血だけでなく便の変化も見られるなら、すぐに病院を受診することをおすすめします。