記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
咳や痰などの呼吸器症状が慢性的に続く「慢性気管支炎」。一般的には抗菌薬での治療が主流ですが、近年、漢方薬によるアプローチが注目されています。詳しくは以降でご紹介していきます。
気管支炎は、気管支に炎症が生じることで咳や痰などの呼吸器症状が出る病気ですが、ウイルスやマイコプラズマ等の急性の感染症で起こる急性気管支炎と、数カ月以上にわたって咳や痰が続く慢性気管支炎とに分類されます。
このうち、慢性気管支炎になる原因はさまざまですが、特に喫煙は慢性気管支炎の発症リスクを高めるばかりでなく悪化させる最大の要因とされ、喫煙者の約2割が慢性気管支炎を発症すると言われています。
さらに、長期にわたって慢性気管支炎に罹っていることで咳や痰が続く状態に慣れてしまい、肺癌など命にかかわる重大な病気のサインを見逃す恐れもあるとされ、慢性気管支炎の治療と共に必要な検査を受けておく必要があります。喫煙が原因の場合は速やかな禁煙が治療の第一歩で、薬物療法など症状に応じた治療方法が選択されます。
慢性気管支炎の原因は長年の喫煙によるものが多いですが、中には副鼻腔気管支症候群やびまん性汎細気管支炎などのほか、さまざまな感染症が原因で生じるケースもありますのでこれらの除外が必要です。百日咳や抗酸菌、緑膿菌のほか、結核菌や非結核菌性抗酸菌症も慢性気管支炎の引き金になると考えられています。
細菌による症状への治療には喀痰検査を行った上で、それに合った抗菌薬が投与されます。結核菌や肺非結核菌性抗酸菌症から生じている場合には、それぞれに適した抗菌薬を数種類が組み合わされて治療が行われるのが一般的です。症状が改善するまでは抗菌薬の服用をきちんと継続することが重要とされ、痰をスムーズに排出する必要があるため、日ごろから十分な水分を摂取する習慣を付けておく必要もあります。
長年の喫煙が原因で慢性気管支炎を発症している場合は、対症療法が中心に行われます。そのため体質改善の方向から症状緩和にアプローチする漢方薬による治療も選択されることもあります。
漢方では気・血・水と呼ばれる3つの要素がバランスを崩すことで、身体にさまざまな症状があらわれると考えられています。風邪などの後で長引いてしまう咳の場合、体内の水分コントロールが乱れている水毒と呼ばれる状態とされ、漢方薬によって身体の内側から水分のバランスを整え気道を潤して咳が出にくい状態に導きます。
慢性気管支炎や気管支喘息などの長期間にわたって続く咳には麦門冬湯(ばくもんどうとう)・柴朴湯(さいぼくとう)・小青竜湯(しょうせいりゅうとう)・麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)・五虎湯(ごことう)・神秘湯(しんぴとう)・苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)が良いとされ、慢性気管支炎に良い漢方薬としては特に清肺湯(せいはいとう)・滋陰降火湯(じいんこうかとう)・滋陰至宝湯(じいんしほうとう)が挙げられています。咳で体力が落ちてしまっている時は元気を回復させる補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が処方されます。
なお、漢方薬は体質ごとに適した薬が異なるため、症状のほか脈診や舌診によって体質が診断され最適な薬が選ばれます。
慢性気管支炎になった原因によって、抗菌薬が有効か、漢方薬が有効かが決まっていきます。体質によっても効果が異なるので、漢方薬での治療をご希望の方は、専門の医療機関で一度相談してみてください。