記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
難聴や耳鳴り、めまいやふらつきなどの症状を引き起こすことがある「聴神経腫瘍」。もし手術で治療を行った場合、どんな合併症のリスクが考えられるのでしょうか。
聴神経腫瘍とは、聴力を伝える神経の周囲を覆っているシュワン細胞から発生する腫瘍のことです。多くはゆっくり発育し、良性の腫瘍であると考えられていますが、中には成長が早いものもあります。腫瘍が増大すると難聴やめまい、耳鳴りなどさまざまな症状が現れます。腫瘍の大きさだけでなく、年齢や症状を診断し、経過観察を行いながら手術や、ガンマナイフなどによる局所放射線照射、それらを組み合わせるなどの治療方針を決定する必要があります。
聴神経腫瘍の手術をすると、合併症を引き起こすことがあります。根治治療に手術は効果的ですが、聴力障害や顔面神経麻痺が一時的、あるいは永続的に残る可能性もあります。神経がどの程度腫瘍に圧迫されているか、どの程度腫瘍に張り付いているかによって合併症の重度は変わってきます。
ほかにも、脳脊髄液が開頭手術によって鼻や耳から漏れてしまうことを髄液漏といいます。さらに、聴神経を構成している前庭神経に発生することが多い腫瘍であるため、回転性のめまいや嘔吐を伴なうことがあります。術後数日間はベッドの上で安静にすることが必要ですが、早期に回復が可能です。
聴神経腫瘍は良性の腫瘍が多いとされていますが、放置すると増大し症状が進行することが予測されます。腫瘍が大きくなると手術困難となったり、手術後により重い合併症をもたらす可能性があります。
まずは早期発見し、良性か悪性の判断をしたら、できる限り早期に治療を開始することが大切です。良性の腫瘍の場合は全ての腫瘍を摘出することで治癒が期待でき、すべて摘出できない場合にも周辺組織への圧迫を軽減することができます。それによって症状が軽くなることがありますので、早めに治療方針を決めて治療を開始することが大切です。
聴神経腫瘍の手術による、髄液漏や聴力障害などの合併症のリスクはゼロではありません。しかし、聴神経腫瘍は放置していると症状が進行し、深刻な状態になってしまう可能性もあります。手術の詳しい安全性やリスクなどについて、一度専門医と相談の上、治療の方針を決めていきましょう。