記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
副腎白質(ふくじんはくしつ)ジストロフィー症は、男性だけが発症する遺伝性の病気です。この病気を発症すると、知能の低下や歩行障害といった症状がみられます。この記事では、副腎白質ジストロフィー症の原因と治療法について解説します。
副腎白質(ふくじんはくしつ)ジストロフィー症とは、身体を動かす中枢神経とその周辺組織の障害・変性と、ホルモンの分泌を司る副腎の機能不全を起こす病気です。極長鎖脂肪酸を分解する酵素が、染色体異常によって体内で生成できないため、分解されるべき極長鎖脂肪酸が細胞内に蓄積していくことで発症します。
発症の原因となる染色体異常は先天的なもので、遺伝性があります。また、女性の発症例はほとんど報告されておらず、男性のみが発症し、重症化してしまう特徴のある病気です。
小児で発症した場合と、成人してから発症した場合で、患者に現れる症状が異なります。
主な症状として、知能・学力の低下、落ち着きのなさ、異常行動、斜視、視力・聴力の低下、歩行障害や足のこわばりなどがあります。症状は進行性で、何も治療しなければ1~2年でほぼ寝たきり状態になってしまうと言われています。
成人になってから副腎白質ジストロフィー症を発症した場合、症状に2通りの傾向がみられます。ひとつは、知能低下は伴わないものの、歩行障害を主な症状として知覚障害、尿失禁、勃起障害といった症状が出る「AMN型」です。もうひとつは、小児で発症した場合と同じく知能低下を主な症状とし、運動障害などが急速に進行して寝たきり状態になる「成人大脳型」です。
そのほか、小児と成人の中間期である思春期に発症した場合は、小脳失調によるふらつきをきっかけに症状が出る「小脳・脳幹型」として発症するケースもあります。
副腎白質ジストロフィー症の代表的な治療法の1つに、血液を造る能力のある造血細胞を移植する「造血細胞移植」があります。これは、ドナーから提供された骨髄や臍帯血(さいたいけつ)を移植して、血中の極長鎖脂肪酸の値を正常化させることで、病気の治療を目指す方法です。特に、小児大脳型や思春期大脳型の発症早期において高い効果を発揮し、成功すれば移植から1~2年後から症状の進行が緩やかになり、その後停止すると言われています。
造血細胞移植は、近年、成人の場合にも成功例が報告されていますが、他の治療と比べて強い副作用や合併症を引き起こすリスクが高い治療法です。このため、造血細胞移植を行うかどうかは、患者とその家族を交えてリスクについてよく相談・理解をしたうえで、決定する必要があります。
副腎白質ジストロフィー症は男性だけにみられる、染色体異常によって発症する特徴的な病気です。何もしなければ症状は進行していくので、できるだけ早く医療機関で診療を受け、適切な治療を受けることが大切です。年齢を問わず、疑わしい症状を見つけたら、すぐに病院で検査を受けてください。