記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/21
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
ある日突然、顔の筋肉が動かなくなり、口がゆがんだり、麻痺したりする病気「ベル麻痺」は、ウイルスが原因とされています。ウイルスが活発になる冬に多くみられます。
ベル麻痺は「特発性顔面神経麻痺」と呼ばれ、顔の片方の筋肉を一時的に衰弱させたり、麻痺させる顔面麻痺の症状です。
顔面麻痺の原因として、以下の要因が考えられます。
・先天性顔面麻痺 (顔面筋衰弱で生まれた子どもにみられる)
・事故による顔面神経の損傷 (頬の裂傷や頭蓋骨の骨折などによる)
・外科手術による傷害 (耳下腺や頸部の手術による)
症状は人によって異なりますが、部分的な麻痺では筋肉の衰弱は軽度です。まれに、完全に麻痺して顔筋の運動がまったくできないことがあります。
目蓋(まぶた)や口にも影響を及ぼし、開閉が困難になります。通常はどちらか一方ですが、まれに顔の両側に影響が出ることもあります。
ベル麻痺は、顔の筋肉をコントロールする神経が圧迫されたときに起こると考えられています。正確な原因は不明ですが、ウイルス感染によって顔面の神経が炎症を起こすことで発症すると考えられています。原因ウイルスは、ヘルペスウイルスが最も一般的ですが、ほかのウイルスにも起因しています。
ベル麻痺は、顔筋の衰弱と麻痺だけでなく、脳卒中のような重篤な病気の徴候としてもあらわれます。顔面麻痺が突然みられたときは、医師を受診してください。ほかに原因がないと判断されたときはベル麻痺と診断されます。
ベル麻痺は、1年で5,000人に1人の割合のごくまれな症状です。発症年齢は15〜60歳と幅広く、あらゆる年代、性別の関係なしに発症します。妊娠している女性や糖尿病、ヒト免疫不全症候群(HIV)患者によくみられます。
ベル麻痺の10人のうち7人は、治療の有無の関係なしに完全に回復します。ほとんどの人は、約2〜3週間で症状は改善されますが、完全な回復には9カ月ほどかかります。回復期間は、神経損傷の状態によって異なります。
顔面神経の腫れを軽減するために、コルチコステロイドの一種であるプレドニゾロンが使われます。目を閉じることができないときは点眼薬が必要になることがあります。睡眠時にはテープで目を閉じることもあります。
治療後も10人に3人は麻痺が残ります。そのうちの2人は長期的で深刻な症状が残ることがあります。合併症には以下のものがあります。
・持続する顔面の麻痺
・目の問題
・話しにくい、嚥下(えんげ)しにくい
・味覚の低下
・顔のけいれん
14%の人では再発します。なかでもベル麻痺の既往が家族内にあるときは、再発の危険性が高くなります。
口から飲みものがこぼれたり、目がうまく閉じれない、口がひきつり、顔もゆがんでいる・・・
鏡をみて片側がこんな状態だったらびっくりしますよね。 ベル麻痺などの顔面神経麻痺は、適切なリハビリテーションを受けることで改善するので、早めに受診して医師の診断を受けるようにしましょう!