記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/2/15
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
虫歯などによって、歯の一部が欠けてしまうことがあります。では、この欠けた歯を放置していると、どんなことが起きるのでしょうか?治療法と併せて解説します。
歯が欠ける原因を4つ紹介します。
まず、虫歯です。外見上は小さな穴程度でも、歯の内部で進行している可能性があります。痛みのないことを理由に放置しておくと、歯が脆くなり、嚙み合わせで欠ける、割れる等の恐れがあります。
次に、外傷です。転倒やスポーツ時の接触、交通事故などで、歯が欠けてしまうことがあります。
3つめは、荷重です。就寝時の歯ぎしりやスポーツ時の歯の食いしばりで、過剰に負担がかかり、歯が欠けることがあります。
最後が、酸蝕歯(さんしょくし)です。これは、飲食物に含まれている酸が歯を溶かす状態のことを言います。酸性の強いお酢やフルーツを頻繁に摂取していると、口内の酸が増え、歯を溶かす恐れがあります。
歯が欠けた状態で時間が経過すると、審美面や機能面に悪影響を及ぼします。
審美面では、見た目の印象が大きく変わることが挙げられます。特に前歯は、少しの欠けであっても目立ってしまいます。
機能面では、粘膜や唇、舌を傷める、歯の破損、虫歯、嚙み合わせの不調を引き起こす恐れがあります。さらに神経が損傷すれば、黒色に歯が変色することもあります。
審美面や機能面どちらをとっても、欠けた歯を放置して、いいことはありません。歯の欠けた後は、歯科で早めに適切な治療を受けましょう。
欠けた歯の治療は、神経へのダメージの有無によって治療方法が変わってきます。
まず、神経のダメージが無い場合には、コンポジットレジン充填、ダイレクトボンディング、ラミネートベニアなどの治療が選択されます。
コンポジットレジン充填は樹脂素材のコンポジットレジンを患部に充填し、硬化させることで治療します。保険が適応でき、見た目的に大きな違和感もありません。
ダイレクトボンディングとは、セラミックに近い審美性を持つ樹脂「ハイブリッドセラミックス」を直接歯に盛り付けていき、本来の歯の美しさを再現する方法です。保険材料のレジン(樹脂素材)と比べるとより透明感や光沢が優れており、変色もほとんどありません。しかも直接歯に盛り付けていくため従来のように削った後、型をとる必要がなく治療回数も少なくできる場合があります。
ラミネートベニアは、セラミックやハイブリッドセラミック等の素材でできた薄片を、欠けた部分に貼り付ける治療です。前歯に行う治療で、自分の歯を削って歯の形や色の改善を行えます。しかし、嚙み合わせや口内の状態次第で、治療が困難な場合もあります。
次に、神経にダメージのある場合です。まず、歯の神経を取っても歯の根っこを残せる場合には、セラミック治療を受けられます。セラミック治療では、神経を抜き取り、審美性と耐久性に優れた補綴物で見た目を改善させます。
一方で、抜歯する場合は、入れ歯治療やブリッジ治療、インプラント治療を行います。
インプラント治療は、人工歯根(チタン)を失われた歯の部分に埋め込みます。周囲の歯に負担をかける心配はありません。ブリッジ治療は、3歯分の人工歯を両隣の歯に被せて、真ん中の抜けた歯を補う治療です。両隣の歯に負担をかけてしまうデメリットがあります。入れ歯治療は、着脱の容易な部分入れ歯で、抜けた歯を補う治療です。バネをかける歯に負担のかかる恐れがあります。
欠けた歯を放置すると、副次的に痛みや虫歯、噛み合わせのズレが生じかねません。なお、治療方法によって審美面の差が出てくるため、自分の希望や予算と合う治療法を選択しましょう。