記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/7 記事改定日: 2020/7/21
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
口腔がんの一種に、「頬粘膜がん(きょうねんまくがん)」という種類のがんがあります。今回はこの頬粘膜がんについて、特徴的な症状や発症原因、治療法など全般的な情報をお伝えします。
「頬粘膜がん(きょうねんまくがん)」は、口の中やその周辺組織にできる口腔がん(こうくうがん)の一種です。口腔がん全体の10%を占め、50歳以上の高齢者に多く男性に多い傾向があります。
頬粘膜は、上下唇や頬の裏側の粘膜面、歯の奥の粘膜部分(臼後部:きゅうごぶ)、口の中の前方部(上下頬歯肉溝、口腔前庭)からなり、ここに発生するがんが頬粘膜がんです。
臼歯が合わさるあたりの頬粘膜面にできることが多く、上皮組織にできる扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんが圧倒的に多いものの、小唾液腺から発生する腺系がんもみられます。
自覚症状としては、腫れやずきずきとしたうずくような痛みがあり、がんの発生した部位の表面には潰瘍や、ポリープのような乳頭状のものができます。
がんが進むと開口障害を起こし、さらに進むと皮膚やあごの骨も侵されてしまいます。また、首にあるリンパ節へ転移するケースが20~50%ほどで、その場合はあごの下や首の腫れとしてあらわれます。遠くにある臓器への転移は多くありません。
頬粘膜がんの発症原因は、はっきりとわかっていません。ただ、この部位には白板症(はくばんしょう)や扁平苔癬(へんぺいたいせん)といった角化性の白色病変が比較的多く発症することから、これらとの関係が指摘されています。
ちなみに、白板症はがん化する可能性が高い病変、扁平苔癬は炎症をともなう難治性の病変です。
また、口腔がんに共通していえることですが、喫煙や飲酒による刺激、義歯などによる慢性の機械的刺激や歯科用金属から発生する微弱な電流、ビタミンAやBの不足、さらに体質なども発症に関係するといわれています。
治療法には、「外科療法」と「放射線療法・化学療法」があります。ごく早期の段階であれば、手術せずに放射線療法や化学療法、レーザー療法などで治療できる場合もありますが、多くは手術が必要となります。
放射線治療では、組織内照射(病変内に放射線源を埋め込み、限られたところだけ照射する方法)が有効です。
手術では、病変部を周囲の組織を含めて切除することになります。進行がんの場合は手術は避けられず、がんが顎の骨や皮膚にまで広がっている場合には、顎骨や皮膚を含めた広い範囲が切除されることになります。
ただ、口は食べる・話すなど人間の生活で重要な機能を担う部位なので、できるだけこうした機能を温存する治療法が選ばれます。
切除後の欠損部分については、患者自身の腕や太もも、肩甲骨などから血流のある皮膚・皮下組織や深部組織、場合によって骨や金属を移植して再建します。また首のリンパ節への転移には、リンパ節を清掃する手術を行います。5年生存率は約50~80%と比較的良好です。
頬粘膜がんは様々な原因によって引き起こされるため完全に予防することは難しいですが、以下のような対策である程度予防ができると考えられています。
また、万が一発症した場合も早期発見できるよう、定期的に歯科医院や口腔外科などを受診して口腔内の状態をチェックしてもらうようにしましょう。
頬粘膜がんの早期段階では次のような症状が現れます。当てはまる項目がある方は放置せずに病院で検査を受けるようにしましょう。
頬粘膜がんは、早期であれば口や周辺の機能を温存する治療が可能ですが、病状が進めば周辺の皮膚や骨まで切除しなければならなくなってしまいます。
口の粘膜の異常やうずくような痛みに気付いたら、ただちに口腔外科などの専門医を受診しましょう。