治るor治らない? 飲み薬で治る?・・・歯周病治療の疑問を解決!

2018/2/14

記事監修医師

日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科

川俣 綾 先生

歯茎や歯を支える骨などが壊され、やがて歯を失うことにもつながる「歯周病」。この歯周病については、「治療は不可能」「飲み薬で治せる」などさまざまな噂が…。果たしてこれらは本当なのでしょうか?

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疑問①:歯周病は治るのか・治らないのか?

「歯周病は治らない病気」と言われることもありますが、適切な治療を行えば治療可能な病気とも言えます。歯周病が進行すると、歯周組織と呼ばれる歯茎や顎の骨が壊されてしまいますが、こうした歯周組織は治療によって再生することもできるのです。

例えば、溶けてしまった顎の骨は「骨移植」「エムドゲイン(タンパク質の一種を歯根に塗布し、歯周組織を再生させる治療法)」「GTR(歯周ポケット内のプラーク等を除去し、溶けて無くなってしまった骨の部分に人工膜を挿入することで、歯周組織を再生させる治療法)」という治療法で再生することが期待できます。また、歯周病によって歯茎が後退し、歯が長く見えるようになってしまった場合には、他の部位から歯茎を採取して移植する治療法もあります。

歯周病の治療をする際は、自分の症状に適した治療法を選択することが重要です。また、治ったとしても再発リスクが高いので、日々の歯磨きと歯科での定期的なメンテナンスを行い、再発を予防しましょう。

疑問②:歯周病が飲み薬で治せるって本当?

近年、薬によって歯周病を治療しようという取り組みが行われています。歯周病の原因となる菌を抗菌薬で死滅させて歯周病を治すというアプローチです。

しかし、薬だけで歯周病を治すことは難しいです。その理由が、歯周病の原因となるプラークのバイオフィルムという膜にあります。プラークには細菌が生息していますが、この細菌が強い膜状のバリア(バイオフィルム)によって守られているために、抗菌薬が届かないのです。「1回当たり500錠の抗菌薬を1日3回服用すれば、バイオフィルムを破壊できる」というデータもありますが、これだけの薬を投与するのは現実的ではありません。

もしも薬を飲むだけで歯周病が治療できるとしたら、外科的な治療をしなくてもよくなるので、患者さんからしてもメリットが大きいですが、上記の点から薬による治療は現時点では難しいと言えるでしょう。

歯周病を治療するために必要なこと

歯周病治療の基本は、プラークおよび歯石の除去です。プラークの除去をプラークコントロールと呼びますが、基本的には、歯磨きと歯科での治療によって行います。歯科ではスケーラーと呼ばれる専用の機器を使って、歯石の除去を行います(これをスケーリングと呼びます)。

しかし、歯根にプラークが付着すると、細菌の毒素に汚染されて汚染セメント質へ変化します。この汚染セメント質があると、歯石を除去しても歯に歯茎がくっつかなくなり、歯周病が起こりやすい環境を改善できなくなります。そこでスケーリングに併せて行われるのが、ルートプレーニングです。歯根表面を滑らかな状態にすることで、プラークが溜まりくい状態にします。

また、歯周病が進行すると歯がぐらついてくることがありますが、ぐらつく歯で噛むと歯への負担がさらに増します。そこで、歯を削るなどしてかみ合わせを調整することが必要になっていきます。かみ合わせを調整しても、ぐらつきがおさまらない場合には、歯科用接着剤で隣の歯と接着することでぐらつきを抑えます。

歯周病が進行してしまい、歯磨きやスケーリングで改善できない場合には、歯茎を切開してプラークを除去するなどの外科的なアプローチを行います。また、顎の骨が溶けてしまったり、歯周組織が壊れてしまった場合には、専用の材料を用いて再生を促す治療法もあります。

おわりに:歯周病を治すためには、継続的なプラークコントロールが必要

歯周病治療の基本は、プラークコントロールです。日々の歯磨きや、歯科治療を通じてプラークコントロールすることで歯周病を予防・治療できます。症状が重度な場合でも、外科的なアプローチや再生治療によって改善が期待できる場合もあるので、詳しくは歯科にてご相談ください。

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