記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
大型連休の際、海外旅行に行く方は少なくありません。ただ、その際には特に注意が必要なのが、「旅行者下痢症」です。症状や治療法などについて、解説していきます。
旅行者下痢症とは、海外の旅行先で下痢などのお腹の異常を発症する病気です。海外への旅行者のうち、およそ20~50%もの人が下痢を発症すると言われています。旅行先によって発症率が異なり、ヨーロッパやアメリカなどの先進国への旅行の場合は、発症率は数%程度と言われています。一方で、東南アジア、アフリカ、中東、南アメリカなどの発展途上国への旅行の場合は、約70~80%もの人が発症すると言われており、注意が必要です。
旅行者下痢症の原因としては、細菌やウイルスによる感染症と感染症以外の2つに分けられます。
感染症については、コレラや赤痢、毒素原性大腸菌などによるものがあげられます。これらの菌に感染すると、数日の間、下痢を発症します。旅行に持参した薬を飲むと、かえって症状が悪化したりする場合があるので注意が必要です。コレラや赤痢は発展途上国ではよく発生する感染症です。地域によって発生しやすい感染症が異なるので、事前に把握するようにしましょう。
旅行者下痢症の感染症以外の原因としては、水や食事によるものや、環境変化のストレスなどがあげられます。感染症に比べて、症状が軽い場合も多く、安静にすることで自然に治癒することもあります。
旅行者下痢症の具体的な症状としては、下痢、吐き気、嘔吐、腹部のけいれん、頭痛、筋肉痛などがあげられます。これらの症状は、いろいろな組み合わせで起こり、その重症度もまちまちです。旅行者下痢症は、旅行先に到着してから3日目くらいに発症することが多いと言われています。ただし日本人は、1週間程度の短い海外旅行も多いため、帰国後に発症することもあります。
また、赤痢菌のように感染力の強い菌の場合は、帰国後に家族や友人にうつしてしまうこともあります。持病を持っている方や高齢者の方は免疫力が落ちていて感染症にかかりやすいです。海外旅行へ行く前に医師に相談するとよいでしょう。
旅行者下痢症になってしまったら、しっかりと水分補給することが重要です。下痢がひどいと脱水症状になる恐れがあります。ミネラルウォーターやスポーツドリンクなどで、水分を補給し、脱水症状を防ぎましょう。症状が軽度の場合は、安静にすることで2、3日で治ることが多いです。
激しい下痢、血便を伴う下痢、発熱や腹痛、関節痛を伴うなど、症状が重度の場合には、細菌・ウイルス・原虫による重度の感染症の可能性があります。下手にロペラミドなどの止痢薬(下痢止め)を飲んでしまうと症状が悪化する可能性もあります。早急に医療機関を受診するようにしましょう。
旅行者下痢症になってしまうと、楽しみにしていた旅行が台無しになってしまいます。もし、旅行先で腹痛や下痢を発症した場合は、なるべく安静にして水分補給をしっかりと行いましょう。症状が改善しない場合には、早急に現地の医療機関を受診するようにしてください。