運動のすすめ~生活習慣病を予防する~

2017/3/21

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

運動は、さまざまな生活習慣病を予防し、がんなどの重大疾病の危険因子を減らすことができます。運動は、日常生活活動とスポーツなどの運動を合わせて「身体活動」とも呼ばれています。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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運動の効果とは

運動とは「からだを動かすこと」です。そもそも人間は動物であり、ほかの動物と同じように「動く仕組み」がからだの中に備わっています。しかし文明の発達とともに運動する機会が激減し、現代人は「からだを動かすこと」をあまりしなくなりました。その結果、私たちの健康状態は悪化しています。どんな年代であっても、運動することで、より健康で幸せな人生を送ることができるという科学的な根拠があります。これは、でたらめなんかではありません。
日常的に運動をする人は、心臓病、2型糖尿病、脳卒中、がんなどの危険因子が低いとされています。また、自尊心や気分、睡眠の質、体力を高めるだけでなく、ストレス、うつ病、認知症、アルツハイマー病などの危険因子も減らしてくれることがわかっています。
このような研究結果からわかるように、人間の健康には運動がいかに重要かということは明らかで、健康で充実した人生を送るには「運動」は欠かせない要素です。

定期的に運動をしている人は、以下のような危険因子を低下させることが医学的に証明されています。
・冠状動脈性心疾患
・脳卒中
・2型糖尿病
・結腸がん
・乳がん
・早期死亡
・変形性関節症
・股関節骨折
・高齢者では階段などからの転落
・うつ病
・認知症

どのような運動が効果的なのでしょうか?

健康でいるためには、日ごろからからだを動かすことを意識し、1週間に最低2時間半はさまざまなやり方でからだを動かすのがよいとされています。
日常生活のなかで軽い運動となるのは、車に乗らず、歩いたり自転車を使ったりすることです。このような軽い運動は、やればやるほど効果があがります。それに加えてスポーツなどの運動を取り入れることでより健康になることができます。

健康に効果的な運動

どんな運動でも、心拍数を上げ、呼吸を早くし、からだが温かくなるまで動かなければなりません。このような程度の運動を「中程度の運動」といいます。運動しながら話すことができるのが中程度の運動です。
それ以上の運動は「激しい運動」です。激しい運動は、中程度の運動よりもさらに健康によい効果をもたらすことがわかっています。呼吸が速くなって心拍数が上がり、息が切れ、会話も少ししかできないのが激しい運動です。

現代人と運動

テクノロジーの発展によって私たちの暮らしが楽になったと同時に、からだを動かす機会も減ってしまいました。移動には、車や公共交通機関を使い、洗濯は洗濯機がやってくれます。娯楽はテレビやパソコンです。手作業で仕事をする人は減り、多くの人はほとんどからだを動かさずにできる仕事をしています。仕事、家事、買い物やその他の生活に必要な活動は、昔と比べると楽になり、動き回る機会と同時に体力もなくなりました。

座りっぱなしの生活がもたらすもの

多くの社会人は1日7時間以上、仕事でも休日でも座って過ごしているといいます。一番座っている時間が多い年代は65歳以上の高齢者で、1日10時間以上座って過ごしているといいます。

運動不足は「サイレント・キラー」と呼ばれ、1日のうち座っている時間や横になっている時間が長いと健康に悪影響を及ぼすということもわかっています。
生活の中で座りっぱなしになるものは、テレビを見る、パソコンを使う、車を使う、読書をする、おしゃべりをする、音楽を聴く、などがあります。座っている時間が長いと、心臓病、脳卒中、2型糖尿病などの重大疾病にかかる確率や、体重増加、肥満の可能性をあげてしまう恐れがあるといわれています。運動の程度を上げるだけでなく、座りっぱなしの時間を減らしていく努力が必要です。

日常生活に運動を取り入れよう

昔は、仕事や手仕事を通して日常的にからだを動かす機会がありました。現代では日常生活に運動を取り入れる方法を探さなくてはならなくなりました。
赤ちゃんをベビーカーに座らせる時間を減らしたり、立ち上がって頻繁にからだを動かすようにするなど、すべての世代が座りっぱなしの生活を改善する必要があります。
そのためには、一人ひとりが、それぞれの生活スタイルに合わせた取り入れやすい運動のを増やしていくための努力を続けていかなければいけません。
注意したいのは、十分に運動していたとしても残りの時間を座って過ごしていたら同じことです。日常生活で、からだを動かす機会や運動を取り入れるためには、年齢にかかわらず、自分に合わせた活動を心がけることでしょう。

おわりに:まずは歩くことから

人によって運動量は違います。これから運動を始めようと思うなら、まずは歩くことです。エレベータではなく階段をつかう、少しの距離は車ではなく歩く、買い物はカートではなくかごを持つようにするなどの行動を見直すことで多くからだを動かすことにつながります。無理をしないで自分にできることを考えてみると良いかもしれません。また、ウオーキング、ランニング、テニスなど楽しく続けることができる運動をみつけ、習慣化していきたいですね。

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