記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
就寝してしばらくすると突如歩き回ったり、睡眠中激しい叫び声をあげたり、といった異常行動が見られる場合、「睡眠時随伴症」の可能性が考えられます。
特徴や原因、治療法について、以降で解説していきます。
睡眠時随伴症とは、睡眠中に「寝ぼけ行動」などが起きる病気のことです。
睡眠時随伴症は大きく分けると、ノンレム睡眠中に起きるものとレム睡眠中に起きるものに分類されます。
睡眠時随伴症になると、ノンレム睡眠中の場合は、睡眠1~2時間後に突如覚醒して歩き回ったり、大声をあげて激しい恐怖を示したりといった行動をとることがあります。
歩きながら夢を見ているわけではないため、歩き回ったことを覚えていない場合が多く、障害物に当たるなどしてけがをする場合もあります。
一方、レム睡眠中に起こる場合は、夢の内容と一致して寝言や異常行動が起こり、激しい寝言や叫び声、暴力行為や逃げ出すなどの異常行動がみられます。また、入眠時や睡眠からの覚醒時に睡眠麻痺(いわゆる金縛り)が見られ、自発的に動けなくなることもあります。
睡眠時随伴症を含む睡眠障害には、生活習慣やホルモンバランスが関係しています。人間の睡眠にはメラトニンというホルモンが関係しており、メラトニンの分泌量が低下することで覚醒し、約15時間後にメラトニンが分泌されることで眠くなります。
しかし、不規則な生活や日中に光を浴びない生活をしていると、メラトニンの分泌が乱れて睡眠障害を引き起こします。
また、人間関係や仕事、パソコンやスマートフォンの使用などによるストレスで交感神経が優位になると、体や脳が興奮して睡眠障害が引き起こされることがあります。さらに、睡眠中に異常行動を来す疾患として、てんかんや意識障害などが原因となっている可能性もあります。
睡眠時随伴症は、睡眠時間の十分な確保や生活習慣の改善を指導するだけで、症状が改善することがあります。とくにノンレム睡眠に伴う睡眠時随伴症では、これだけでも改善がみられることが多いです。
根治的な治療法のないレム睡眠に伴う睡眠時随伴症や、上記の方法を用いても改善が見られないノンレム睡眠に伴う睡眠時随伴症では、鎮静薬の一種であるベンゾジアゼピン系の内服薬(主にクロナゼパム)で症状の改善がみられることがあります。
とくに成人以降では、この薬での治療が効果的に働く傾向があります。
睡眠時随伴症では様々な異常行動が見られますが、中には歩き回って転倒する・頭を壁に打ち付けるなど思わぬ怪我を招く行動が引き起こされることがあります。
睡眠時随伴症を発症している場合は、なるべく家族など身近な人が近くで寝るようにして危険な行動がある場合は怪我が生じぬようにサポートすることが大切です。また、寝室内は怪我につながるような電気スタンドなど危険なものを置かないようにしましょう。
さらに、睡眠時随伴症は睡眠不足などが原因で症状が悪化することもありますので、規則正しい生活を心がけ、ストレスや疲れが溜まらないように家族がサポートすることも大切な対策法です。
一般的に小児期に見られて自然と改善することの多い睡眠時随伴症ですが、大人になっても残ってしまう場合もあります。睡眠時随伴症は根治的な改善方法はないものの、生活習慣を見直し補助的に薬剤を使用することで改善が見られます。
ご家族などから睡眠時の異常行動を指摘された経験のある方は、一度専門医へ相談されることをおすすめします。