HIV脳症とは? 発症頻度が減っているって本当?

2018/3/9

山本 康博 先生

記事監修医師

東大医学部卒、独立行政法人国立病院機構東京医療センター

山本 康博 先生

現代は医学の進歩によって、さまざまな病気の発症頻度が低下しつつありますが、その病気のひとつとして「エイズ脳症」が挙げられます。今回の記事では、エイズ脳症の発症率が下がった理由を中心にお伝えしていきます。

HIV脳症(エイズ脳症)とは

HIV脳症(エイズ脳症とも言います)とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染末期に発症する脳症のことで、中枢神経領域における重要な合併症とされています。通常、脳には異物が到達してこないように血脳関門という部分があるのですが、それがHIVウイルスによって突破されてしまうことで引き起こされる病気がHIV脳症です。

HIV脳症には2つの種類があります。1つめは、大脳白質、深部灰白質に病変があって血管の周囲を中心に炎症細胞の浸潤がみられる「HIV脳炎」、もう1つは髄鞘(ずいしょう:神経細胞の軸索を取り囲んでいる膜構造)や軸索(じくさく:神経細胞の突起)に脱落がある「HIV白質脳症」です。

HIV脳症の代表的な症状について

HIV脳症は認知症のような症状が特徴的で、具体的には進行性の認知、運動、行動の障害が起こります。

初期では集中力の低下や物忘れ、作業能率の低下、無気力状態が見られ、進行すると不安定な歩行や下肢の脱力、振戦などの運動症状が現れることが特徴です。これらの症状は徐々に進行し、末期になると高度な認知機能障害となり、寝たきりとなる場合が多くなります。

また、幻覚、妄想や躁うつ状態といった精神障害も併発することが特徴です。

HIV脳症の発症頻度が減っている理由

現在HIV脳症の発症頻度は減少しており、その割合はHIV発症者の15~18%程度とされています。その理由としては、医学と治療薬の進歩が挙げられます。

現在、HIVの治療には多剤併用療法が用いられており、この多剤併用療法のことを「HAART療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy)」といいます。1997年に開始されたこの治療法の普及によって、HIV脳症の発症頻度だけでなくエイズによる死亡者数も激減したとされています。

HAART療法では、抗HIV薬を3~4剤まとめて内服します。抗HIV薬には核酸系逆転写酵素阻害剤、非核酸系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、侵入阻害薬があり、これらのお薬を組み合わせて治療を行っていきます。

ただし、HIVウイルスは体内から完全に排除することはできないウイルスとされているため、HAART療法を開始したら抗HIV薬を生涯飲み続けなければなりません。10回内服するうち1~2回内服を忘れるだけで効果が得られなくなるといわれており、薬を飲み続けることが非常に重要な治療となるのです。

おわりに:継続的な服薬が、HIV脳症を防ぐカギ!

HAART療法の導入以来、発症頻度が減少しているHIV脳症。しかし、HAART療法はHIV脳症のリスクを低下させる一方、薬の飲み忘れによって効果が得られなくなるという側面もあります。HIV脳症に移行しないためには、服薬を忘れずに継続していくことが非常に重要です。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

検査

この記事に含まれるキーワード

認知症(36) HIV(24) 物忘れ(8) 躁うつ(4) 振戦(2) 幻覚(5) 抗HIV薬(2) エイズ脳症(1) HAART療法(1)