記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/3/19 記事改定日: 2019/3/11
記事改定回数:1回
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
頰の内側や歯茎などにできる「口内炎」。食事の度に苦痛を感じる厄介な症状ですが、この口内炎が長期にわたって治らない場合、特定の病気のサインの可能性があります。詳しくは以降で解説します。
口内炎とは、頰の内側などの口の中や、その周辺の粘膜で起こる炎症です。口内炎は原因ごとに、以下の種類に分けられます。
免疫力の低下や疲労の蓄積、睡眠不足、栄養不足などが原因で、最も多くみられるタイプの口内炎です。赤く縁どられた白くて丸い潰瘍が、唇の内側や頰、歯茎などに発生します。
ウイルス感染が原因の口内炎です。具体的には、単純ヘルペスウイルスによる「ヘルペス性口内炎」や、水痘・帯状疱疹ウイルスによる「帯状疱疹」、コクサッキーウイルスによる「ヘルパンギーナ」「手足口病」などがあります。ウイルス性口内炎は、口の粘膜に小さな水疱が多数発生し、破れてびらんになるのが特徴です。痛みや発熱を伴うことも少なくありません。
頰の内側を噛む、熱湯の刺激、歯の矯正器具の接触といった物理的刺激が原因の口内炎です。アフタ性口内炎とは異なり、潰瘍の縁どりは不明確な場合が多いです。口の粘膜が赤く腫れ、水疱が発生したりします。
特定の食べ物や金属による「アレルギー性口内炎」、喫煙習慣などによる「ニコチン性口内炎」などがあります。
口内炎の多くは、疲労や細菌感染などが原因の場合が多いので、無治療でも自然治癒することがほとんどです。しかし、2週間以上経過しても治らない場合、以下の病気のサインの可能性があります。
口腔がんとは、口の中の粘膜や歯茎、舌などに発生するがんのことです。
主な発症原因は、虫歯やサイズの合わない入れ歯、歯並びの悪さなどによって口腔内に慢性的な刺激が加わることや、不衛生な口腔環境、喫煙習慣、過度な飲酒などが挙げられます。
早期の段階ではしこりや粘膜の色調など変化が見られるのみですが、進行すると病変の粘膜に潰瘍を形成して痛みや出血を引き起こすことがあります。
潰瘍はしばしば口内炎と間違われることがありますが、でこぼことした盛り上げりがあり、市販薬などを使用してもなおりにくいのが特徴です。
白血病やエイズなどの免疫機能が低下する病気になると、普段は悪さをしない菌やウイルスの影響で口内炎が起こることがあります。
消化管粘膜の広範囲で炎症が起こるクローン病や潰瘍性大腸炎などの病気になると、病気の症状として口内炎ができることがあります。
ベーチェット病になると、口内炎だけでなく、性器などにも潰瘍ができるようになります。ベーチェット病は自己免疫疾患の一種で、全身に炎症を起こすことがあり、口内炎が初発症状として現れることが多いです。
口内炎は数日で自然に治ることがほとんどです。しかし、以下のような口内炎の場合は、思わぬ病気が原因のことがありますので病院で診てもらうようにしましょう。
病気ではないのに口内炎を繰り返す場合、生活習慣に発症原因が隠されている可能性があります。具体的には、「慢性的なストレス」や「睡眠不足」などです。本来、粘膜には再生能力があるので、炎症を起こしても自己回復能力が発揮されます。ところが睡眠不足やストレスは、新陳代謝を鈍らせ、粘膜細胞の修復に遅滞をきたす原因になるのです。
また生活習慣では、食生活との関連も指摘されています。特に問題視されているのは、16種類の必須ミネラルの一つ「亜鉛」の不足です。亜鉛はあらゆる細胞の合成に関与するとされており、炎症の回復にも必要不可欠です。海産物に豊富に含まれますが、食生活の欧米化の影響で、現代の日本人は亜鉛が不足気味とされています。
なお、ビタミンB群も粘膜の新陳代謝を高めるとされているので、これを含む魚介類やレバー、サプリメントを上手に活用することがおすすめの対策です。
基本的に口内炎は、疲労やストレス、食習慣の乱れなどの生活習慣が原因で発症する場合が多く、ほとんどが自然治癒します。もしも2週間以上口内炎が続いたり、口内炎の大きさや形が異常な場合は、口腔がんなどの重篤な病気の可能性があるので、早めに病院で検査を受けることをおすすめします。