神経細胞に変性が起こる「多系統萎縮症」はどんな病気?

2018/3/19

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

神経細胞が変性してしまう「多系統萎縮症」は、国の難病にも指定されている病気です。詳しい症状や発症メカニズム、治療法について解説していきます。

多系統萎縮症とは?

多系統萎縮症とは、小脳や脊髄神経等の中枢神経に変性が見られる疾患で、運動障害が主な特徴です。以前は症状の違いにより、「オリーブ橋小脳萎縮症」「線条体黒質変性症」「シャイ・ドレーガー症候群」の3つの別疾患と考えられていましたが、今日では同一の疾患として統合されています。

多系統萎縮症は、基底核や小脳・自律神経系を制御する領域(例えば視床下部)などの中枢神経の変性が生じている状態ですが、なぜこれらの部位に変性が起きたかの原因については明確には分かっていません。ただ、変性したαシヌクレインの蓄積が関与しているのではないかと考えられています。αシヌクレインは神経細胞同士の情報伝達を補助している蛋白質で、この物質の蓄積はパーキンソン病等の運動失調を伴う病気でも観察されます。この事実から、多系統萎縮症にはαシヌクレインの蓄積が関係すると想定されています。

多系統萎縮症の代表的な症状

多系統萎縮症に罹患すると、すばやい動作を反復して処理を行う動作が困難になるなどの行動の変化が観察されます。特に腕と脚の動きの制御が困難になって、スムーズに歩けず歩幅が異常に広くなったりもします。具体的には、動きが遅く震えが見られるようになり、瞬時の運動開始が困難になるなどのパーキソニズムの症状が現れます。身体の震えの発現には特徴があり、安静時に震えるといったことはありません。

さらに自律神経に変性が及ぶと、血圧調整や発汗機能、尿意制御などに支障をきたし、血圧の急激な変化によるふらつきや立ちくらみ、尿意切迫による失禁などにも見舞われます。汗や唾液の分泌にも異常が生じて、ドライアイやドライマウスに悩まされることもあります。

これらは最初にどの部位が障害を受けたかにより出現時期に違いがありますが、数年経過する過程で全ての症状が出現し、概ね5年以内に車椅子生活を余儀なくされるか、深刻な運動障害に陥ります。

多系統萎縮症の治療法について

多系統萎縮症の明確な原因や発症のメカニズムは解明されていないため、根治させる方法も見つかっていないのが現状です。そのため、現時点では症状緩和を目的にした対症療法が中心になります。

まず、パーキソニズムについては、出来るだけ日常生活を自分で行うことを心がけることです。これにより、筋力維持と筋肉の柔軟性の確保につながります。定期的なストレッチも有効です。

また、血圧の急激な変化に対応できるよう、血圧の安定化を目指す治療も実施されます。具体的にはゆっくり立ち上がることを心がけたり、特殊な弾性ストッキングの着用をします。弾性ストッキングのようなサポーターには脚から心臓への血流を促す働きがあり、脳への血行不足を防止する効果があるとされているのです。

尿失禁や尿閉などの排尿障害では、カテーテルを膀胱に留置して排尿を促したり、逆に活発に活動しすぎる膀胱の筋肉を弛緩するための薬物療法が行われます。

歩行や日常動作が困難になった場合には、理学療法士や作業療法士などのサポートが必要になることもあります。

おわりに:多系統萎縮症に該当する症状が見られたら、すぐに病院へ

歩行困難や身体の震え、動作が鈍くなるなどの症状が出たら、「多系統萎縮症」のサインかもしれません。進行する前に、専門の医療機関を受診するようにしましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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