急性肝炎の食事療法と薬物療法を詳しく解説します

2018/2/22

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

ウイルス感染などにより、肝臓が急性の炎症を起こす「急性肝炎」。今回はこの急性肝炎で実施される、食事療法と薬物療法について解説していきます。

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急性肝炎はどんな病気?

急性肝炎とは、主にウイルス感染を原因として生じる急性の肝機能障害を呈する病気です。良好な経過を辿ることが多いですが、なかには劇症化が見られることがあり、一度劇症化すると致死率が非常に高くなり、肝移植が必要になることもあり得ます。

前駆症状には、発熱や頭痛などの感冒類似の兆候が見られるので、風邪と診断されることも珍しくありません。しかしやがて肝機能障害の進行に伴い黄疸が出てくるようになります。皮膚や眼球結膜が黄色くなる等の他にも、全身の皮膚に掻痒感が生じることもあります。黄疸が出る頃と同時期に、全身倦怠感や食欲不振などを自覚するようにもなります。

原因となるウイルスには、ABCDEの5つのタイプがあります。感染経路は、A型やE型では経口感染が主で、流行地域へ旅行した際の飲食が感染原因のことがあります。B・C・D型はウイルスに汚染された血液や体液を介した感染経路をとります。

急性肝炎の食事療法のポイント

急性肝炎からの回復には、食事療法が重要な地位を占めます。これは肝臓細胞には旺盛な回復力があり、その回復力をサポートするには食事内容がカギを握るからです。エネルギー不足になると、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンやタンパク質が分解されてしまい、肝細胞回復の障害になります。また、肝臓の重要な機能の一つにアミノ酸合成を行っていることが挙げられますが、肝細胞自身も回復の為にアミノ酸を必要としています。

そこで肝臓の再生修復を促進し、肝機能の速やかな回復をはかる為には、消化吸収の良い良質なタンパク質を摂取することが大切です。特に体内では合成できない必須アミノ酸をバランスよく含み、体たんぱくを合成しやすいものが推奨されます。具体的には動物性と植物性タンパク質を併せて食事に取り入れるのがポイントです。

また肝臓の代謝機能を円滑に進めるには、各種のビタミン類も重要です。牛乳や乳製品、緑黄色野菜などを意識的に摂るようにしてください。

薬物療法について

急性肝炎は一過性の経過で治癒することが殆どですが、稀に重症化や劇症型肝炎に移行することもあります。そのため、症状の極期(病態の重い時期)の見極めが大切です。仮に重症化の兆候が見られた場合は、専門病院での加療が必要になります。

通常の急性肝炎の治療の大原則は、安静にすることです。安静にすることで肝臓への血流を増加させて肝機能の回復を促します。なお、肝機能の回復のためには、必須アミノ酸を含むタンパク質の摂取が必要ですが、急性肝炎の極期の場合にはむしろタンパク質の摂取は制限されます。極期には糖分主体で熱量を確保し、1日1800kcal前後とします。

また、急性肝炎では薬物療法はあまり実施されることはありません。副腎皮質ホルモンは優れた抗炎症作用を持ちますが、同時に免疫抑制作用を持つので却って肝炎ウイルスの活性を助長する可能性があります。しかし劇症肝炎などの重症化が懸念される場合には、副腎皮質ホルモンを投与し進行を食い止めることもあります。

おわりに:急性肝炎の治療法は重症度に応じて多少異なる

急性肝炎で薬物療法が実施されることはあまりありませんが、症状の進行度によっては薬の投与が必要になる場合もあり、適した治療法は重症度に応じてさまざまです。黄疸など疑わしい症状が見られたら、早めに重症化する前に病院を受診するようにしましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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