萎縮性腟炎の新しい治療法とインティマレーザーとは?

2018/6/1 記事改定日: 2020/3/9
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前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

「インティマレーザー」という治療法をご存知ですか?老人性(萎縮性)腟炎や尿漏れに対して行われる治療法の一つで、痛みの少なさなどから人気を集めています。
この記事では、萎縮性腟炎の一般的な治療法とインティマレーザーの違いについて説明しています。

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萎縮性腟炎(萎縮性腟炎)の治療にはどんな種類がある?

萎縮性腟炎は閉経に伴って女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が低下することによって引き起こされます。

このため、根本的な治療は不足したエストロゲンを補充するホルモン療法となります。第一には、エストロゲンの一種であるエストリオールが含まれる腟錠を腟内に挿入する治療が行われますが、重症で腟錠の挿入が困難な場合などにはエストロゲン製剤の内服治療が行われます。

また、エストロゲンとプロゲステロンを同時に補うことができず配合剤が使用されることもあり、これら女性ホルモンが含まれた薬による治療をホルモン補充療法(HRT療法)と呼びます。

HRT療法

HRT療法は、上でも述べた通り、分泌が減少した女性ホルモンを薬で補う治療方法です。
エストロゲンは腟分泌液の産生を促す作用があるため、人為的にエストロゲンを補充することで高い症状改善効果が期待できます。

一方で、エストロゲンを過剰に投与すると子宮体がんの発症リスクが上昇することがわかっています。そのため、近年ではエストロゲンの発がん作用を抑えるとされるプロゲステロンを同時に投与できる配合剤が広く使用されています。

また、HRT療法を開始した直後は不正出血や吐き気、胸の張りなどの症状が現れることがありますので、治療を続けていくにつれて徐々に改善していくとされています。

新しい萎縮性腟炎の治療、インティマレーザーとは?

レーザー治療は日々進化していますが、最新の治療法にインティマレーザーがあります。このレーザー治療では専用のハンドピースを装着して使用することで、腟の最も奥深い部位までレーザーを照射することが可能となりました。レーザーの熱エネルギーを照射すると、内部が熱の収縮作用により縮みます。照射する箇所によっては腟内だけでなく、骨盤底筋や尿道付近の筋肉を引き締めることも可能です。

インティマレーザーは、尿漏れ・小陰部の引き締め・腟の引き締めなどに効果があるとされ、それ以外にもレーザーを照射することでコラーゲンの生成が活発になるという効果があります。加齢によって腟内の弾力がなくなって性行為の際に痛みを伴っていた場合でも、レーザーで組織が生まれ変わらせることで再び弾力を取り戻して性交痛が起こりにくくなるのです。

インティマレーザーは患者の満足度も高い治療法で、老人性(萎縮性)腟炎などの症状の改善にも貢献しています。老人性腟炎とは、閉経後に女性ホルモンの減少と共に腟壁が薄くなり乾燥しやすくなることで、腟の自浄作用を担う常在菌が少なくなって炎症が起きるものです。

老人性腟炎は、膀胱の位置が下がることから尿漏れの原因となりますが、インティマレーザーはそんな老人性腟炎の治療に適しています。

インティマレーザーのメリット

インティマレーザーが広く支持されている理由としては、治療における痛みがほとんどないということがあげられます。このレーザーは腟粘膜に含まれる水分にのみ反応する特徴があり、そのために粘膜の表面を傷つけることなく治療にあたることが出来るのです。またわずかな痛みも、麻酔クリームによって対処することが可能です。

例えば、小陰唇の形を治したい女性に対しては、これまではメスによる切開手術を行っていましたが、切開手術には痛みやダウンタイム(施術から回復するまでの期間)が長くなるといった問題がありました。しかし、インティマレーザーによる治療ではダウンタイムはほとんどなく、シャワーは当日・入浴も翌日からOKで、性行為も3日後から行うことが出来ます。

インティマレーザーの治療の手順

インティマレーザーによる腟縮小治療の際には、専用のハンドピースを腟の奥まで挿入し、少しずつ抜きながら3方向にレーザーを照射していきます。
1回の施術で同じことを3回繰り返します。最後に小陰唇や腟の入り口周辺を2~3周ほど照射して終了です。1~2か月ごとに施術をすることで徐々に引き締まっていくこととなります。

尿漏れ治療では、腟縮小治療に追加するかたちで治療を進めていきます。尿漏れ専用ハンドピースを奥まで挿入し、少しずつ抜きながら尿道に向けて5方向に1回ずつ照射します。内部の照射がすべて終了したら、尿道周辺にも4発ずつ照射します。
こちらも1~2カ月おきに施術を繰り返すことで徐々に尿道が引き締まり、下がっていた膀胱が元の位置に戻っていきます。

インティマレーザーのデメリット

インティマレーザーは膣粘膜に直接レーザーを照射するため、治療後にはの腟の腫れや痛み、出血などが生じることがあります。しかし、これらの症状は治療後2~3日ほど経過したら自然に改善していくことがほとんどであり、その後に治療が必要となるような合併症の報告は現段階ではありません。

また、インティマレーザーは通常の投薬治療よりも費用が高額になり、効果が得られるまでに複数回の治療を行わなければならないケースもあります。かかる費用は医療機関によって異なりますので、事前に確認しておくようにしましょう。

おわりに:インティマレーザーは痛みが少なく効果が高いとされる治療法

老人性腟炎による尿漏れが原因で外出を控えていた方でも、インティマレーザーによって尿道が引き締まれば、以前にように気軽に外出できるきっかけとなります。痛みも少なくメリットがある治療法ではありますが、デメリットがないわけではありません。興味のある人は取り扱いのある専門クリニックに相談し、メリットとデメリットを十分理解したうえで治療を受けましょう。

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