記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/16
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
手の痺れの原因としてはいくつかの病気が考えられますが、そのうちの一つが「頚椎症性神経根症」です。詳しい症状や治療法などを解説します。
手の痺れには大別して、2種類の原因があります。
ひとつは全身性の疾患を背景にもつもので、糖尿病が代表的です。ただ糖尿病は末梢神経から先に障害が生じるので、手指の先端から痺れが起こる特徴を持っています。また全身性の病気では必ず両側に痺れを伴うので、片方の手だけに痺れが出るのは稀です。
もう一つ、手の痺れの原因として有力なのは、手首・肘・肩を経由して脊髄神経に至る神経の伝達経路のいずれかに異常がある場合です。代表的な疾患に頚椎症性神経根症があります。頚椎症性神経根症とは、頸髄から手につながる神経の頸部神経根が障害を受け、手の痺れが生じる疾患です。指の働きを司る8本の神経根は互いに離れて位置しているので、一箇所の神経根だけが障害を受けます。そこで特定の手の指の運動に支障をきたすのが特徴です。
なお、手の痺れの原因で最も多いのは、手根管症候群です。手根管には正中神経と指を動かす9本の腱がひしめくように通っています。そこが継続して負荷を受けると、親指から第4指の範囲で痛みや痺れに悩まされます。
手の痺れをもたらす病気の中でも、頚椎症性神経根症は中高年以上で患者数が増加します。症状としては、腕や手指の痺れの他に、痛みを伴うのも特徴です。ただし痛みの程度には個人差が見られ、軽いものから日常生活に支障が出るほど重いものまであります。
頚椎症性神経根症の発症には、加齢が大きく関係しています。頚椎の断面を見ると内部には脊髄が走っており、そのまわりをクッションとして椎間板が存在しています。脊髄神経から椎骨の間を縫うようにして末梢神経へとのびる神経が手指方向に伸びているわけです。ところが加齢によって、椎間板が膨張して神経を圧迫したり、椎骨がこすれて骨棘が形成されると、神経根に接触し、頚椎症性神経根症を発症するようになります。
頚椎症性神経根症は老化などの器質的変化を背景にした疾患であるため、安静にしていれば治癒することもあります。しかし、悪い姿勢が悪化の要因となる場合もあるので、頸部牽引やリハビリテーション、強い痛みには消炎鎮痛剤を投与して保存的治療で経過を見る場合が多いです。
しかし著しい痛みや筋力低下なども併発している場合、より積極的な手術などの治療が必要な場合もあります。特に重度の脊髄障害を伴う場合、回復が困難となるリスクに直面し、早急な外科的治療が必要になることもあります。
頚椎症性神経根症で行われる手術には、3つの方法が代表的です。
1つめは「頚椎椎弓形成術」です。首の後ろを切開し、椎弓(首の骨の後ろの部分)の両側に溝を掘り、片側を削って圧迫された脊柱管を開放する手術です。
2つめは、「頚椎前方固定術」です。頸の横や前方を切開し血管や神経を避けながら椎骨の骨棘を除去し脊髄や神経根の圧迫要因を除去します。
3つめは「頚椎後方固定術」です。頸部の後ろを切開し、金属製スクリューなどを留置して固定します。多くの場合、脊髄の圧迫を解除する後方除圧術を併用して行います。
中高年以降で手に痺れと痛みを感じる場合、頚椎症性神経根症を発症している可能性があります。痛みの程度によっては手術が必要になる場合もあるので、「もしかして?」と思ったら病院で検査を受けてみましょう。