記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/2/27 記事改定日: 2020/3/11
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
くる病は、ビタミンDの不足によって骨の成長に異常が起こり、腕や脚、背骨が曲がるなどの成長障害が起こる病気です。現在は食事の栄養状態が改善しているのに、くる病になる赤ちゃんが増えているといわれています。
今回は赤ちゃんのくる病が増えている原因と、赤ちゃんがくる病かどうかをチェックするためのリストを紹介していくので、妊娠中や出産後の健康対策に役立ててください。
くる病は、骨の石灰化が正常に行われないため、骨が変形したり、痛みを生じる病気です。万が一くる病を発症した場合は、早期に治療を開始しないと過度な骨変形によって歩行障害や成長障害などを引き起こすこともあります。
次の項目に多くあてはまる場合は、くる病の可能性がありますので、なるべく早めにかかりつけの小児科を受診して相談するようにしましょう。
くる病は、何らかの原因で体内のビタミンDが欠乏することで、骨を強くするための石灰化が起こらなくなってしまう病気です。脊椎や手足などの骨の変形や、筋力低下、骨痛などが起こり、重症化するほどに日常生活での支障が大きくなり、とくに子供の場合は深刻な成長障害に繋がる可能性があります。
ビタミンDが欠乏する原因はいくつかありますが、ひとつは遺伝的な要因が関与しているタことがあります。ビタミンD依存性くる病は先天的なくる病のひとつで、ビタミンD依存症とも呼ばれます。
一方、生活習慣によってビタミンDが欠乏し、くる病を発症してしまうこともあります。
ビタミンDの補給には、食事を通して口から摂る方法と紫外線を浴びて皮膚で合成をする方法の2つの方法がありますが、生活の中でこれらの機会が減ってビタミンDの摂取量や合成量が少なくなることで、くる病が発症してしまう可能性があるのです。
近年、減少していたはずのくる病の赤ちゃんが増えていると言われています。栄養状態がよくなったはずの時代になぜでしょうか。
母乳は栄養的に非常に優れていますが、ビタミンDについてはミルクよりも少ないです。もし、お母さんが極端な偏食で栄養の偏りがあったり、日光に当たる時間が少なかったりすると、母乳内のビタミンDが極端に少なくなってしまう可能性があります。
ただし、ビタミンDは少量であっても赤ちゃんの体内での吸収率は良く、日光浴で赤ちゃん自身が合成したビタミンDがあれば、離乳食開始までを乗り切ることができると考えられているので、本来はビタミンDが不足するようなことはほぼ起こらないでしょう。
現在は乳幼児に日焼け止めクリームを使う家庭が増えているといわれていますが、日焼け止めなどの赤ちゃんへの紫外線対策によって必要なビタミンDが合成されず、くる病を引き起こしている可能性があるかもしれません。
遺伝的な原因でのくる病は治療が必要ですが、ビタミンDの摂取不足や合成不足については生活の中で以下のようなポイントに気をつけて予防を図りましょう。
まず、母乳育児中はお母さんがビタミンDが多い食事を心がけてみましょう。ビタミンDは、魚や卵の黄身、きのこ、バターなどに豊富に含まれています。また、赤ちゃん用のミルクにはビタミンDが含まれています。アレルギーへの配慮が必要ですが、栄養補助のためにミルクを使うという選択肢もあるでしょう。
ビタミンDの合成のためにも、適度に日光浴を行いましょう。血中のビタミンDは皮膚で合成される量の割合が、食事から摂取する量よりも高くなっています。室内の窓越しに15~20分程度でも、手や足など部分的に光を浴びると良いでしょう。
赤ちゃんの骨の成長にはある程度の日光浴をすることも大切です。
しかし、赤ちゃんの肌はデリケートなため紫外線の刺激によって炎症を受けてしまうことも少なくありません。日光浴をするときは赤ちゃん用の日焼け止めを使用したり、帽子やラッシュガードなどを着用して紫外線対策をするようにしましょう。
また、紫外線は午前中の早い時間や夕方に弱くなりますので、その時間帯に外出するのも紫外線対策の一つの方法です。
くる病は遺伝性のものだけではなく、生活の中でビタミンDが欠乏することで発症することがあります。紫外線は、美肌のためには嫌われ者ですがビタミンD合成のためには必要です。近所へのちょっとした買い物は日光浴をすると決めるなど、時間や場面を区切るのも良いかもしれません。