記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/23 記事改定日: 2019/10/9
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
親指の付け根が痛んだり、腫れていたりする場合、「母指CM関節症」を発症している可能性があります。また、そのまま放置すると「白鳥の手変形」という、特徴的な症状に進行することがあります。
母指CM関節症の特徴と発症原因、治療法について以降で解説します。
母指CM関節症とは、物を握ったりつまんだりといったときに母指(親指)に力を入れて行う動作の際、手首にある親指の付け根辺りに痛みが起こる炎症です。
CM関節とは、手のひらの中の手根骨と呼ばれる手首を構成する骨の列と、指を構成する中手骨との間にある手根中手関節(しゅこんちゅうしゅかんせつ)のことです。
親指のCM関節は動きやすくなっているため、親指とほかの指とを使って物を握ったりつまんだりする動作ができます。
ただ、その動作はCM関節に大きな負担をかけてしまうため、負担が蓄積していくと関節が炎症・変形し母指CM関節症を発症してしまうのです。
母指CM関節症を発症すると、物を掴んだり、ビンやペットボトルなどの蓋を回すといった「親指の付け根に力がかかる動作」をすると、そこ痛みが走るといった症状が現れます。
発症したばかりの頃は動作時のみに痛みを生じるだけなので、その症状のみで病院を受診する人は少ないでしょう。
しかし、痛みがある関節の内部は炎症状態が続いているため、徐々に親指の付け根が腫れて動かしにくくなり、最終的には親指の先が曲がって反り返る「白鳥の首」のような変形を生じるとされています。
変形がひどくなると治療が難しくなることも少なくありませんので、母指CM関節症は早期発見・早期治療が大切です。次のような動作で親指の付け根に痛みが生じるときは放置せず、病院で診察を受けましょう。
母指CM関節症が進行して生じる「白鳥の首変形」は、親指の付け根の関節が亜脱臼することによって生じます。
親指が開きにくくなり、第一関節が外側に向かって曲がるのが特徴です。
変形した後の見た目が白鳥に似ていることから「白鳥の首変形」と呼ばれています。
母指CM関節症の原因は、加齢と手指の使い過ぎです。
とくに家事仕事の量が多い人やガーデニングや手芸などの趣味を持つ人のように「手指をたくさん使う人の発症が多い傾向があります。
また、親指のCM関節は複雑で多様な動作をするため関節軟骨の摩耗が起こりやすく、日常生活のなかで負担を受け続けて亜脱臼したり、親指の変形といった症状を招きやすいのです。
ただ、手指をたくさん動かすような仕事や趣味がない人でも発症することから、体質や手のクセなど、加齢や使いすぎ原因も影響しているのではという指摘もあります。
通常、軽度の痛みの母指CM関節症では保存療法が選択されます。
保存療法で様子をみても症状が改善しなかったり、受診した際すでに亜脱臼している場合には、手術療法が選択されます。
手術で主に行われるのは関節固定術と関節形成術の2つです。
関節固定術は、CM関節を鋼線で動かないように固定して痛みを解消する手術法です。固められたCM関節の可動域に制限が出ますが、基本的には日常生活にそれほど大きな支障は出ません。
関節形成術は、変形した関節下部の短骨の一部もしくは全部と、大菱形骨(だいりょうけいこつ:遠位手根骨の一番外側(親指側)に位置する骨)を切除して、つまみ動作時の骨の接触を無くして痛みを軽減させる手術です。
関節を安定させるため親指周辺の腱を利用し、関節周囲の靭帯を再建する制動術も行われます。
手術では、CM関節上部の骨に開けた穴に腱を通して巻きつけて関節を安定させます。その後、制動術でも関節も安定させ、握力や物をつまむ力が回復しやすいように処置をします。
母指CM関節症は、手作業の多い高齢者の方の発症率が高いです。症状が進行すると関節が変形し、手術が必要になることもあります。「白鳥の手変形」のような変形症状まで進行させないように、親指の付け根の痛みなど初期症状の段階で病院を受診するようにしてください。