記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/20 記事改定日: 2018/7/9
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「適量のアルコールであれば、健康に良い」という話を聞いたことはありませんか?お酒を飲みすぎるとさまざまな健康リスクが上がることは知られていますが、少量の飲酒によるリスクはどうなのでしょうか。近年の研究結果と併せて解説していきます。
「酒は百薬の長」という言葉があり、飲酒は適量であればストレスを軽減し、全身の血行を促進するので、むしろ身体の調子を良くするものと昔から信じられてきました。また、「アルコールをまったく飲まない人より、適量を飲む人のほうが死亡率が低い」との研究報告もなされています。
では、お酒を飲まないよりも、適度に飲んでいるほうが健康的なのでしょうか。
まず、飲酒と死亡率の関連性の話は欧米の研究機関によるものなので、日本人にも「適量のアルコールで死亡率が減る」といえるかどうか、そもそもの前提条件が異なります。なぜなら、日本人のような黄色人種(モンゴロイド)は、アルコールを体内で分解する酵素の働きが弱かったり、まったく働かなかったりする「本来的に酒に弱い体質」の人が約半数を占めるからです。一方、欧米に多い白人(コーカソイド)や黒人(ネグロイド)では、もともと酒に弱い体質の人は存在しないといわれています。
日本人においても、適度なアルコール摂取は、虚血性心疾患(心筋梗塞など)や2型糖尿病、認知症のリスクを下げることがわかっています。ただし、がんや脳卒中、脂質異常症などについては、アルコールを摂取しないほうが罹患率が下がる(飲酒は有害)ことも判明しています。よって、「百薬の長」とまではいえないのです。
たとえば、アルコール消費量を横軸、疾病リスクを縦軸に置いて線グラフを作ったとき、虚血性心疾患、2型糖尿病、認知症の場合はアルコールを摂取しなくても一定のリスクがあり、摂取量が増えるほどリスクはいったん下がります。ただ、一定量を超えるとリスクが上がっていきますので、アルファベットの「J」に近い形のグラフを描きます。これが、適度のアルコールは病気のリスクを下げるという根拠とされる「Jカーブ」です。
とはいえ、最近の研究では少量の飲酒でも脳へのダメージが蓄積されることが判明しており、少なくとも認知症について「Jカーブ」は当てはまらないと考えられています。
飲酒は適量であれば、健康に害はないとされています。「適量の飲酒」とは、アルコール量に換算すると一日20g程度であり、飲酒による健康被害を防ぐためにもこの適量はしっかり守る必要があります。
アルコール20gとは、お酒の種類によっても異なりますが、具体的には以下の量です。
しかし、これらの適量はあくまでも目安です。アルコールが弱い体質の人は、自分の体調に合わせて飲酒を楽しむようにしましょう。
厚生労働省は、「週に2日の休肝日をとる」ことを推奨しています。アルコールを分解する肝臓をいたわるため、酒を飲む間隔を空けようというのです。
ただ、休肝日さえとれば、他の日はガブガブ飲んでもいいわけではありません。特に中高年が酒を飲むときに大切なのは、毎日連続して飲まないことと、飲む時間を短くすることです。なぜなら加齢によって、アルコールを分解するための時間が余計にかかるようになるからです。
お酒が好きな方々は、「酒は百薬の長」という言葉も信じて、大量にお酒を飲んでいるかもしれません。しかし実際には、適度の飲酒でリスクが下がる疾病がいくつか挙げられるのみで、大量の飲酒は病気の原因を増やす方向に作用しやすいと考えられます。健康のために、連日の飲酒や長時間にわたる飲酒は避けましょう。