記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/14 記事改定日: 2019/5/17
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
生命の維持活動に欠かせないミネラルの一つ、「銅」。この銅が不足すると、身体にどんな影響が出るのでしょうか?銅の持つ効果と合わせて解説します。
銅は、赤血球の形成をサポートし、体内酵素の働きと骨の形成を助ける、生命活動に不可欠なミネラルの一種です。また、体内でたんぱく質と結びつき、鉄の働きをサポートします。
銅は体内に約80mg存在しており、そのうち半分は骨や筋肉、約1割は肝臓に存在しています。ほとんどが小腸で吸収され、肝臓に運ばれ蓄えられます。なお、カニやエビなどの甲殻類、タコやイカ、レバー、アーモンドなどの種実類、茶葉などにも銅は含まれます。
そして、銅には、次のような効果があると考えられています。
先述の通り、銅は鉄の働きをサポートするので、貧血予防の効果があるとされます。
赤血球にあるヘモグロビンは血液の色素であり、全身の組織に酸素を運ぶ役割があります。鉄は、このヘモグロビンの構成成分です。
しかし、いくら食事で鉄を摂取しても、そのままヘモグロビンの合成に使えるわけではありません。ヘモグロビンがうまく合成されるようになるためには銅が必要であり、そのため銅は貧血の予防に効果があるといわれるのです。
赤血球にある銅の多くは、「SOD酵素」の中に存在します。SOD酵素には、生活習慣病などの原因となる活性酸素を分解し、過酸化脂質の増加を抑える作用があります。過酸化脂質が増加すると動脈硬化が促進されるので、銅はその予防に役立つと考えられています。
銅は、生命に必須の酵素「シトクロムCオキシダーゼ」の構成ミネラルでもあります。免疫細胞も例に漏れずこの酵素が必須であり、この点から、銅の摂取には免疫力の向上効果があると考えられます。
銅は、毛髪の色素であり、肌を紫外線から保護するメラニン色素の生成に必要な酵素「チロシナーゼ」の合成に関わっています。このことから、銅は健康的で美しい髪や肌のために必要と言われています。
銅欠乏症とは、銅の極端な不足によって貧血や疲労、白血球数の減少などが起こり、骨粗鬆症や神経損傷が引き起こされることもあります。
銅欠乏症は、健康な人にはほとんど起こりませんが、未熟児や重度の低栄養、減量手術をした人、亜鉛を摂り過ぎた人などは起きる可能性があります。
特に男子乳児は、銅欠乏症を起こす遺伝子異常を受け継ぐ場合もあり、これは「メンケス症候群」と呼ばれています。メンケス症候群は、知的障害や嘔吐、下痢、皮膚の変色などが主症状です。
銅欠乏症は寝たきりによる長期間の中心静脈栄養や極端なダイエット、偏食などがない限り発症することはまずありません。銅欠乏症は基本的には、上で述べたような病気が原因となります。このため、治療を行うには不足した銅のサプリメントなどを服用しながら、原因となる病気や状態を改善していくことが大切です。
銅の一日の摂取量の目安は、成人男性で0.7mg、成人女性で0.6mgとされています。
通常の食生活を送っていれば銅不足になることはまずありませんが、極端なダイエットや偏食は禁物です。
銅はイカやタコ、エビなどの魚介類、レバー、納豆などに多く含まれています。通常は銅不足を意識する必要はありませんが、これらの食材を適度に摂取するようにしましょう。
貧血や動脈硬化予防、さらには美容効果など、銅には、高齢者・シニアをはじめ、若い人や子どもなど幅広い人に嬉しい健康効果が期待できます。過剰摂取に気をつけつつ、銅を含んだ食材を日々の献立にしっかり取り入れましょう。