膀胱炎の治し方 ― 抗生物質以外に完治させる方法はあるの?

2018/5/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

膀胱炎は、女性の多くが経験する非常に身近な病気です。治療は抗生物質の服用が中心になりますが、その他に治す方法はあるのでしょうか。
この記事では、膀胱炎の治し方と病院での治療の重要性について解説しています。

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病院での膀胱炎の治療方法

膀胱炎は、おしっこを貯める臓器の膀胱で炎症が起こる病気で、女性に多くみられます。膀胱炎の原因でよく見られるのは細菌感染です。その中でも大腸菌は細菌感染全体の約80%を占めており、最も多い原因菌といわれています。
病院で膀胱炎と診断されたときには、まず初めに抗生物質の内服治療が行われます。抗生物質の内服期間は3日から1週間程度です。多くの場合、3日で症状が取れてきて、1週間もすれば完治します。

再発性の膀胱炎の治療は再検査が必要な場合も

膀胱炎は再発が多い病気としても知られています。特に、急性膀胱炎の約半数は1年以内に再発するといわれており、その大部分は再感染です。女性は男性に比べて尿道が短く、腟と尿道口までの距離も近いため、膀胱炎になりやすいといわれています。

再発した場合も抗生物質を正しく内服することで完治することができます。
ただし、何回も繰り返す場合には結石や膀胱機能の異常の可能性もあるため、尿検査だけでなくエコーなどの精密検査が行われることもあるでしょう。
また、ESBL産生大腸菌と呼ばれる抗生物質が効きにくい大腸菌が原因で膀胱炎になることもあるので、膀胱炎が再発した時には病院を再受診してください。

抗生物質を使わない膀胱炎もあるの?

膀胱炎には、抗生物質が効果的な急性膀胱炎のほかに次の4種類があります。

・出血性膀胱炎
・間質性膀胱炎
・放射線性膀胱炎
・好酸球性膀胱炎

これらの膀胱炎の原因は細菌感染ではないので、細菌を殺す役割を持つ抗生物質を使っても意味がありません。それどころか、副作用が起こる可能性も考えられます。膀胱炎がどんな原因で起こっているかは検査によってわかるので、病院を受診して原因を突き止めてもらいましょう。

また、尿中に細菌がいるのに症状が出ていない人もいます。この状態を「無症候性細菌尿」と言います。無症候性細菌尿ではほとんどの場合、抗生物質を内服する必要はありません。ただし、妊娠しているときや、膀胱や腎臓、尿管など泌尿器系の手術の予定がある場合は抗生物質での治療を行います。また、尿路に問題があって膀胱炎を繰り返している人も抗生物質を使用することがあるでしょう。

膀胱炎は治療をしなくても自然に治ることがありますが、膀胱炎の症状がなくなったからといって原因になる細菌がいなくなったとは言い切れません。完治したかどうかは、尿検査をもとに医師の判断が必要です。
細菌が残ったまま無症候性細菌尿となり膀胱内に細菌が残った状態が続くと、膀胱炎が再発する可能性もあります。安易な自己判断は、病状を悪化させてしまうこともあるので注意しましょう。

市販薬で治る?

急性膀胱炎は、頻尿や排尿時の痛みなど症状がとても分かりやすい病気です。そのため、そのような症状が出たときには「多分膀胱炎だろう」と安易に判断してしまうこともあるでしょう。仕事や家事などで忙しく病院を受診する時間が取れない場合には、市販薬を飲んで済ませてしまうこともあると思います。

しかし、膀胱炎の市販薬は抗生物質ではないので、原因菌を退治することはできません。つまり、市販薬で根本治癒はできないということです。膀胱炎の市販薬の役目は「膀胱炎を治す」ことではなく、「利尿作用で細菌を排出することで炎症を抑える」ことといえるでしょう。市販薬を使う時にはあくまで応急処置として短期間の使用にとどめ、必ず病院を受診するようにしてください。

漢方薬での治し方と予防法

漢方薬も膀胱炎に一定の効果が期待できます。膀胱炎の症状が見られているときには、「竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)」や「猪苓湯(ちょれいとう)」が効果的といわれています。竜胆瀉肝湯には、炎症を抑える作用が強く、排尿を促すことで菌を排出する働きがあるといわれています。猪苓湯には、竜胆瀉肝湯と同じく利尿効果があり菌を排出する働きのほか、膀胱粘膜を保護する働きがあります。

また、漢方薬は膀胱炎の予防にも使われます。膀胱炎予防に効果があるといわれているのは「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」と「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。
冷え性で貧血気味の場合には、余分な水分を出して体が冷えるのを予防する働きがある当帰芍薬散をおすすめします。普段から疲れやすいと感じている人には補中益気湯がおすすめです。補中益気湯には胃腸の働きを助け、体に抵抗力をつける働きがあります。

膀胱炎になりにくい体質・環境作りが重要!

膀胱炎を予防するためには、膀胱炎になりにくい体質や環境を作ることが大切です。

まずは、体の抵抗力を保ちましょう。
体が冷えると免疫力が低下し、細菌に感染しやすくなります。露出しやすい首や手首、足首を温めるなど、体を温める工夫をしましょう。また、体を温める食べ物やバランスのとれた食事も抵抗力を保つ手助けをしてくれます。さらに、過度なストレスは免疫力を下げてしまうので、適度に発散するようにしましょう。

そして、細菌を膀胱内に入れないようにすることが大切です。陰部は清潔に保ち、トイレの後は前から後ろに拭くようにしましょう。ウォシュレットも清潔を保つのに効果がありますが、やり過ぎは禁物です。また、セックスの後は排尿するようにしましょう。仮に細菌に感染しても、排尿することで菌を排出することができます。軽くシャワーで流すのも良いでしょう。
また膀胱炎になったときは、細菌を排出させるためにトイレを我慢せず尿意を感じたらすぐに排尿するようにしましょう。トイレを我慢しすぎると、血流が悪くなり菌が増えやすい環境になってしまいます。水分を多めに取り、普段よりまめにトイレに行くようにすると、細菌を早く排出することができます。

おわりに:膀胱炎に自己判断は禁物。症状がでたときにはすぐ受診を

排尿痛や頻尿など、膀胱炎の症状はわかりやすく、特に女性はなりやすい傾向があります。そのため、そのような症状が出たときは「膀胱炎だ」と容易に判断してしまいがちです。しかし、そのような症状が出たから必ず膀胱炎とはいいきれません。自己判断で市販薬を使うと、症状が悪化したり膀胱炎であっても再発を繰り返すことになることあるのです。

急性膀胱炎なら、抗生物質の内服で短期間に完治させることができます。膀胱炎の症状がみられたときには、できるだけ早く受診をし早期治療を目指しましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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