記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
大豆に含まれる「大豆イソフラボン」には、さまざまな健康・美容効果があると言われています。では、この大豆イソフラボンを摂りすぎた場合、どんな健康リスクが想定されるのでしょうか?大豆イソフラボンの効能などと併せてご紹介していきます。
健康に良いイメージのある大豆イソフラボンですが、摂取量が多すぎると健康被害を受ける可能性はあるのでしょうか?
ここではまず、日本人の大豆イソフラボンの摂取量の傾向と、摂りすぎてしまった場合に考えられる健康被害などについて、ご説明していきます。
平成14年の調査によると、15歳以上の日本人の平均的な大豆イソフラボン摂取量は1日あたり18mgで、これは食の欧米化が叫ばれる近年でも、ほとんど変わっていません。
日本人を含むアジア系の人は、大豆を原料とした調味料や加工食品が生活の中に根付いているため、欧米の人に比べて大豆イソフラボンの摂取量が多いと言われています。
大豆イソフラボンは、身体にとって必須の栄養成分というわけではないため、過剰摂取すると健康を害する可能性も指摘されています。どんなに良い効果・効能のあるものも、摂りすぎは良くありません。適量の摂取が最も効果的ですので、特定の栄養成分ばかり摂りすぎないよう注意してください。
大豆イソフラボンの構造は、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」に似ています。このため、大豆イソフラボンを摂りすぎると、女性ホルモン過多のような状態になり、乳癌発症のリスクが高くなる可能性が報告されています。
大豆には、イソフラボンの他にも植物性タンパク質やカルシウムなど、健康に良い栄養成分が豊富に含まれています。また、まったく大豆食品を摂らないよりも、適量の大豆食品を継続的に摂取する方が健康に良いというデータも報告されています。
1つの食品・食材だけを偏って摂取するのではなく、味噌や醤油、豆腐、納豆などを、毎日バランスよく適量食べるように心がけると良いでしょう。
そもそも大豆イソフラボンは、主に大豆の胚芽(芽になる部分)に多く含まれる栄養成分の名前で、大豆の味として「えぐみ」を感じさせる原因でもあります。植物に含まれるポリフェノールの一種「フラボノイド」に属し、大豆やクローバーなどマメ科の植物の他、葛(くず)の根にも含まれています。
また、大豆イソフラボンには糖と結合した「配糖体」と、糖と結合していない「非配糖体」があり、それぞれ以下の6種類に分けられています。
・大豆イソフラボンのうち「配糖体」の3種類・・・ゲニスチン、ダイジン、グリシチン
・大豆イソフラボンのうち「非配糖体」の3種類・・・ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテイン
ここからは、大豆イソフラボンを積極的に摂取することで得られる効果について、もう少し詳しく見ていきましょう。
前述したように、大豆イソフラボンの構造はエストロゲンという女性ホルモンに酷似しているため、摂取すると身体に対して女性ホルモンと似た作用を起こします。
このため、大豆イソフラボンを摂取すると、ホルモンバランスや女性ホルモンの不足による女性特有の身体の不調、症状の緩和に効果的と考えられています。具体的には、ホルモンバランスの乱れが原因のイライラ、ほてり、むくみ、頭痛、肌荒れ、月経前症候群(PMS)などの症状改善効果が期待できます。
大豆イソフラボンには骨からカルシウムが溶け出すのを抑える作用があるため、丈夫な骨の形成・維持に貢献してくれる栄養成分でもあります。このため、加齢や栄養不足による骨密度の低下や、骨粗しょう症の発症リスクの低減に効果的です。
大豆イソフラボンには、血管内の細胞に働きかけることで血流を整える効果が、イソフラボンに含まれる非配糖体ゲニステインには、血管の機能を良くする働きがあるとされます。このため、近年では、大豆イソフラボンの摂取が高血圧や動脈硬化などの血管疾患や、心疾患などに代表される生活習慣病の改善にも役立つのではないか、とも期待されているのです。
大豆イソフラボンは、大豆を加工して作られる大豆食品に豊富に含まれています。大豆イソフラボンを豊富に含む代表的な加工食品としては、豆乳、豆腐、納豆、きな粉、おからなどの他、味噌や醤油などの調味料も挙げられます。
これらのうち、豆乳、豆腐、納豆のイソフラボン含有量の目安は、以下の通りです。
・ 豆乳…100gあたり、約24.8mg
・ 豆腐…150g(半丁)あたり、約30mg
・ 納豆…1パック(50g)あたり、約36mg
適量を摂取することでさまざまな健康への効果・効能を得られる大豆イソフラボンですが、具体的にはどのくらいの量を摂取するのが良いのでしょうか。
ここからは、大豆イソフラボンの適切な摂取量と摂取するうえでのポイントについて、食品から摂取する場合、サプリメントから摂取する場合に分けてご紹介します。
大豆食品から摂取する場合、食品ごとに含まれるイソフラボンの量にかなりのばらつきがあるため、一概に何をどのくらい食べるべき、という目安を示すことはできません。
ただし、食品安全委員会の「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」によると、「大豆イソフラボンの1日の摂取目安量の上限値は70〜75mg」とする考え方を示しています。
1日のイソフラボン摂取量がこの上限目安を上回ったからといって、直ちに健康被害を発症することはありませんが、この値と各食品に含まれるイソフラボン含有量を目安に、1日の摂取量を調整すると良いでしょう。
食品安全委員会は、食事とは別に大豆イソフラボンを強化、または濃縮したサプリメント等で継続的に大豆イソフラボンを補いたい場合には、1日あたりの上限目安量は30mgの範囲に収めるのが適切との考えを示しています。なお、この上限目安は「この量を毎日欠かさず長時間摂取する場合の平均値としての上限」ですので、一時的に摂取量が30㎎を超えたからと言って、直ちに健康被害はありません。
ただ、大豆イソフラボンを濃縮・強化したサプリメントは、少量でも1日当たりの目安摂取量30mgを超えやすいので、摂取量をコントロールしたい人は、サプリメントからではなく食品からの摂取をおすすめします。
これまで述べてきたように、大豆イソフラボンばかりを偏って摂取しても、劇的な健康への効果・効能が得られるわけではありません。
大豆食品やイソフラボンなど、1つの食品・栄養成分に偏ることのないよう、バランスの良い食生活を心がけ、食事として他の栄養成分とともに摂取するのが良いでしょう。
なお、食事バランスガイドによると、タンパク質豊富な大豆食品は「主菜」に分類されるため、肉・魚・卵料理とあわせて1日3皿までが適切な摂取量とされています。
日本人にとって身近な大豆・大豆食品から摂取できる「大豆イソフラボン」は、適量を摂取すればさまざまな効果を得られる、健康に良い成分です。ただし、摂りすぎると健康を害する可能性があるのも事実です。大豆イソフラボンの適切な摂取量を知り、バランスの良い食生活のなかで毎日少しずつ摂取してくださいね。