記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
抗インフルエンザ薬の一種である「イナビル®」は、たった一度の服薬で済むため、処方されることも多いです。ただ、イナビル®の服薬後に熱がぶり返したという話も…。今回はそんなイナビルの服薬上の注意点を中心にお伝えしていきます。
「イナビル®」(ラニナミビル)は、現在主流となっている抗インフルエンザ薬です。1回使うだけで服用が完了する手軽さと、長時間作用することによって薬の効かない耐性ウィルスが出にくいという特徴から、一時期話題になったタミフル®の薬に次いで多く使用されています。
しかし、服用後、まれに熱が再発する例が報告されています。また、抗インフルエンザ薬を服用すると、インフルエンザにかかっても1~2日で熱が下がってしまうことも多いです。すると、本人も「もう治った」と判断して、外出したりしてしまうことも出てきてしまいます。しかし、実際にはウィルスを保持した状態なので、周囲の人にインフルエンザを感染させてしまう可能性があるだけでなく、体力が落ちて再び症状がぶり返すこともあり得ます。
さらに、イナビル®は粉末状の薬で、それを吸い込むことによって服用する吸入薬です。そのため、普通の飲み薬よりも服用方法が難しく、「ちゃんと吸えているかわからない」と不安になる方もいます。薬局で、薬剤師にしっかり使い方を確認してから使うとよいでしょう。
イナビル®を服用しても熱が下がらない場合、一般的にはカロナール®が処方されます。解熱剤としてよく知られているのはロキソニン®ですが、こちらをもし所持していたとしても自己判断で服用するのは非常に危険です。なぜなら、解熱剤の使用が「インフルエンザ脳症」と呼ばれる症状に結びつく危険性があるからです。
インフルエンザ脳症は、急に発症し、発熱後数時間から1日以内に様々な神経症状がおこります。けいれん、意識障害から多臓器不全、最悪の場合は死に至ることもある合併症です。自己判断でロキソニン®を服用するのは、絶対にやめましょう。
イナビル®と、タミフル®などの他の高インフルエンザ薬との違いとしては、まず形状の違いがあげられます。イナビル®は粉末状の吸入薬のため、ウイルスが増殖している気道に直接薬を作用させることができます。そのため、全身への副作用が少ないのが特長です。一方、タミフル®は、カプセルやドライシロップなどの形状がある飲み薬です。吸入薬が使えない小さな子供でも服用することができます。
さらに、イナビル®は、1回の服用で治療が完結するのに対し、タミフル®やリレンザ®などは、1日2回、続けて5日間服用する必要があります。
なお、入院が必要とされる患者で、命の危険があるか肺炎を合併している患者に対してはタミフル®かラピアクタ®(点滴静注剤の抗インフルエンザ薬)の服用が推奨されています。一方、これらの条件にあてはまらない患者には、状況・症状に応じた抗インフルエンザ薬が処方されます。イナビル®は服用が1回で済んで手軽ですが、吸入の仕方が単純ではないため、5歳以上の患者が処方の対象になるでしょう。
優れた作用をもつイナビル®ですが、治療・予防どちらに使う場合でも、さまざまな副作用があります。予防目的で使用した場合には下痢や頭痛、治療目的で使用した場合には、下痢やめまい、胃腸炎、蕁麻疹、悪心、ALT(GPT)の上昇などが報告されています。
さらに重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー様症状がでることもあるので、呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、冷汗などの異常が認められた場合は、すぐに病院を受診してください。命に関わる危険性もあります。
イナビル®を含む、抗インフルエンザウィルス薬では、投与後に異常行動などの精神神経症状が出るおそれがあります。これについて、因果関係は現在解明されていませんが、様々な調査の中で、抗インフルエンザ薬を使用していなくても異常行動がでたケースも報告されています。特に小児・未成年者の場合は、転落などの事故につながることもあるので、診断後少なくとも2日間は、就寝中を含めてその経過と行動を見守る必要があります。
イナビル®は気道に直接薬を作用させることができるため優れた作用をもちますが、治療・予防どちらに使う場合でも、下痢や頭痛、胃腸炎、ショック症状などの副作用もあります。また、抗インフルエンザ薬そのものというより、インフルエンザにかかること自体によって異常行動がでるケースもあります。特に小児・未成年者が患者の場合、診断後少なくとも二日間は、就寝中を含めて目を離さないようにしましょう。